こんにちは、本シェルジュの松林です。
今回は、アウトドア用品やナチュラルライフスタイル製品の製造販売を行う、株式会社スノーピークの代表取締役・山井 太氏の著書をご紹介します。

同社は、バブル経済崩壊後にアウトドア業界がシュリンクする中にあって、2000年以降、ずっと増収増益基調を続け、つい先日は東証マザーズから東証一部へ市場変更される等、株式市場でも注目される存在です。

2014年9月には、テレビ東京『カンブリア宮殿』で同社が取り上げられたので、それをご覧になった方も多いことでしょう。

かつて「お金を掛けずにできるレジャー」であったキャンプを、「自然の中で豊かで贅沢な時間を過ごすライフスタイルの実現」と性質を変え、熱心なファンを増やし続ける同社の取り組みは、他業界のビジネスパーソンの皆様にもきっとご参考になると思います。

<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次

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〓 1)今日のオススメの一冊                   〓
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スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営
山井 太 (著)、日経トップリーダー(編)
日経BP社 (2014/6) 224ページ

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今回の登場人物紹介
■A:Bとは大学の同級生どうし。スキーやキャンプを愛するアウトドア派。
■B:小学生の子ども2人の父親。趣味はスポーツバイク。

A:B君、久しぶり! どう、最近もマウンテンバイク乗ってる?
B:最近忙しくて、全然トレイルに行けてなくて…。あ、でも、虫や蛇がいなくて良い季節だから、雪が積もる前に近場のトレイルに行こうと思ってるよ。
A:そういう時、クルマに自転車積んで行くんだろ? どうせなら、テントやグリルシステムも用意して、家族でキャンプなんてどうだい?
B:面白そうだね! でも、どんなものを揃えればいいんだろう?
A:初めてなら、ちょっと値は張るけど、テントは建てやすくて雨風に強い丈夫なやつがいいよ。例えば、こういう….(タブレットで「スノーピークオンラインストア」を出して、まるで店員のように説明し続ける。)
B:いろいろありがとう。ところで、何でそんなにここの製品がオススメなの?
A:それはね、ここは、自分たちで徹底的にキャンプをしながら、自分たちがほしい製品をきちんと作るメーカーで、期待を裏切らないからだよ。
B:何だか、スティーブ・ジョブズがいた頃のApple社みたいだね。
A:でしょ?
B:そのドヤ顔、昔から変わらないね!(笑)

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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です              〓
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■Introduction 「真北の方角」に進み続ける より(P10)
ミッション・ステートメント、経営理念の重要性はこのところ、様々な場面で語られるようになった。(中略)この点において、スノーピークは愚直といっていいくらい本気で取り組んできた。スノーピークが成長できたのは「真北の方角」を見失わなかったからだ、と私は確信している。
スノーピークの「真北の方角」を一言で表現すると、それは「ユーザーの笑顔」である。

■Chapter1 熱狂的なファンが支える より(P25)
他社の製品をベンチマークして研究したところで新しい製品は生まれない以上、スノーピークがそんなことをする必要はないからだ。マーケットの状況から判断するのではなく、自社のミッション・ステートメントから考えていき、それを具体的な戦略に落とし込む形でビジネスを展開している。「世の中にない製品」を作るタイプの会社であるため、「今ある製品」には全く興味がない。

■Chapter2 クリエーティブとものづくりの魂 より(P65)
ブランドと呼ばれる会社は成長のプロセスで、顧客の期待以上の製品やサービスを作っている。そんな姿勢に感動した顧客が口コミで友人に紹介し、ブランド力がさらに高まる。これができなければブランドを作ることはできない。スノーピークは永久保証を宣言することでユーザーに使ってもらい、そこから「実際に使い勝手がいい」「今まで使っていたキャンプ用品よりも長持ちする」という感動を体感してもらう。そして「スノーピークの製品はすごくいい」と思いを広げてもらう。

■Chapter3 販売は科学 仕組みをつくる より(P112)
スノーピークでは、カードの新規獲得数と売上高に相関関係があることがこれまでのデータから分かっている。それに基づいて店舗ごとに各年の販売目標を達成するためには、ポイントカードの新規会員を年間でどれだけ獲得すべきかを定め、さらに月間目標として落とし込んでいる。この数字を基準に「今月末までに300人が必要にもかかわらず、実際には200人しかとれていない」といった形で現状を把握していく。

■Chapter4 仕事後にキャンプ!のワークスタイル より(P156)
日報はあくまでも業務の一環だ。会社として「日報を書いてほしい」とお願いしている以上、私がいい加減な態度で臨んでいるとしたら、社員は嫌な気持ちになるし、「見ないのに、どうしてわざわざ日報を書かせるのか」という気持ちになるだろう。だから必ず読む。
ここまで力を入れるのはなぜか。日報の効用は毎日読み続けていくと、それぞれの社員の成長がはっきり見えてくる点にある。

■Chapter5 星空の下で五感を研ぎ澄ます より(P177)
数年に1回レベルの重要な決断をするとしたら、私ならばキャンプで2、3日アウトドアに身を置いてから、自分の心が赴くほうを選択する。五感を磨いてから決めることこそが正しい選択ではないかと思っている。(中略)自然の中でビジネスの時間の流れとは違うリズムですごすと気持ちをリフレッシュできるし、人間が本来持つ感覚を取り戻すことができる。

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〓 3)今日の気づき                       〓
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ここ数年、「顧客はモノではなくストーリーを欲しがっている」等と喧伝し、“顧客ニーズに応える製品やサービスを提供し続ける”という当たり前のステップをすっ飛ばして、「こんなに苦労してやってます」という「ストーリーもどき」を作ることを優先した、安直なブランディングを勧める風潮があります。

本書を読むと、同社は経営理念を明文化し、その実現に向けて、ぶれずに本気で取り組み続けていることに気づきます。
顧客ニーズに応え、圧倒的に他社と差別化できる製品・サービスを開発・提供し続ける。この、ある意味では「愚直」な取り組みを、確信を持って徹底し続けることこそが、知的水準や所得水準の高い人を惹きつけ、熱心なファンにしていく原動力になっています。

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〓 4)本書の目次                        〓
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■Introduction 「真北の方角」に進み続ける
・ミッション・ステートメントが「経営のコンパス」になる

■Chapter1 熱狂的なファンが支える
・「スノーピーカー」はどうして生まれたのか
・キャンプの焚火を囲んでユーザーと直接語り合う
・SNSでしっかり交流 「炎上」も乗り越える
・徹底解説 スノーピークウェイ

■Chapter2 クリエーティブとものづくりの魂
・製品はすべて永久保証 メーカーならば当然だ
・燕三条の地場産業と驚きの開発体制を融合
・付加価値を高めるためのキーワードは正当性
・徹底解説 ロングセラー「焚火台」

■Chapter3 販売は科学 仕組みをつくる
・値引きしないで時間をかけても正価で売る
・ロジックを磨きプロセスをマネジメントしていく
・問屋経由から直接取引に転換 ユーザーの声が躍進の原動力
・徹底解説 スノーピークストア

■Chapter4 仕事後にキャンプ!のワークスタイル
・自然指向のライフスタイルをオフィスづくりに落とし込む
・ブランドの成長は社員の成長にかかっている
・日報を毎日チェックし、一人ひとりの成長を見つめる
・徹底解説 ヘッドクォーターズ

■Chapter5 星空の下で五感を研ぎ澄ます
・自然の中に身を置き判断力を高める
・好きな製品だけを作るブランドを構築する
・5年後のスノーピークはどうなっているのだろうか
・徹底解説 燕三条ネットワーク

■Chapter6 白い頂へのヒストリー
・ブームに踊らない「ブレない」会社をつくる

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スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営
山井 太 (著)、日経トップリーダー(編)
日経BP社 (2014/6) 224ページ