こんにちは、本シェルジュの松林です。
8月後半に入っても猛暑が続いていますが、お変わりありませんか?

さて、今週はぐっとクラシックに、「論語」に関わる本を取り上げます。
孔子の教えをもとに、二千数百年前に編纂されたという「論語」。今もビジネス書などでその内容が取り上げられることも多く、特に年輩の方とお話しする場合など、押さえておくと便利かもしれません。
とはいえ、漢字仮名交じり文ですと、高校の授業などで経験したように、けっして易しいものではありません。そこで今週は、「論語」をもとに書かれた、読みやすい小説をご紹介します。

今回はハードカバーをご紹介しますが、他に文庫本もあります。また、作者の没後50年を経過して著作権フリーとなったため、各種電子ブックにも収録されることが多くなっています。さらに、耳から聞けるオーディオブックも出ていますので、どうぞお気軽に触れてみてください。
(参考)オトバンク「論語物語」 http://www.febe.jp/product/42192

<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次

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〓 1)今日のオススメの一冊                   〓
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論語物語
下村 湖人(著)
まどか出版 (2008/11) 269ページ

今回の登場人物紹介
■松林:本シェルジュ。そろそろ本の重みで床が危ない。
■Y子:専業主婦。目下の楽しみは福山雅治のライブに行くこと。
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松林:ねえ、「論語」の言葉で、何か知ってるのある?

Y子:え? 「右の頬を打たれたら左の頬も出しなさい」とか?

松林:それは、聖書。

Y子:「目には目を、歯には歯を」は?

松林:それは、ハンムラビ法典。

Y子:それじゃ、「故きを温ねて新しきを知る」でどうだっ!

松林:当たり!(やれやれ…)

Y子:来月は横浜スタジアムで福山のライブがあるから、「ふるきをたずねる」で昔の曲もちゃんと聞き直してから臨むのだ。

松林:ちょっと違うけど、ま、いいか。あなたはドラッカーは途中で止めたけど、「もしドラ」は一晩で読んだって言ってたよね?

Y子:そうそう。結末が見えてても、泣いちゃったの。

松林:じゃあ、論語も小説から入ろう! はい、これ。
(と、「論語物語」の本を渡す。)

Y子:ありがと。たまってる福山のビデオを見終わったら読むわ。
(こうして、Y子の本棚には未読本が溜まっていくのであった。)

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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です              〓
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■P16 「富める子貢」より

「貧富を超越するということじゃが、それは結局、貧富を天に任せて、ただ一途に道を楽しみ礼を好む、ということなのじゃ。元来、道は功利的、消極的なものではない。したがって、貧富その他の境遇によって、これを二、三すべきものではない。道は未知なるがゆえに楽しみ、礼は礼なるがゆえに好むといったような、至純な積極的求道心があってこそ、どんな境遇にあっても自由無礙(むげ)に善処することができるのじゃ。(中略)そこまで行くと、貧にしてへつらわないとか、富んで驕らないとかいうことは、もう問題ではなくなる」

■P54 「自らを限る者」より

「お前は、自分で自分の欠点を並べ立てて、自分の気休めにするつもりなのか。そんなことをする暇があったら、なぜもっと苦しんでみないのじゃ。ほんとうに力があるかないかは、努力してみた上でなければわかるものではない。(中略)それというのも、お前の求道心が、まだほんとうには燃え上がっていないからじゃ。ほんとうに求道心が燃えておれば、自他におもねる心を焼き尽くして、素朴な心に返ることができる。素朴な心こそは、仁に近づく最善の道なのだ。」

■P165 「匡の変」より

「人間というものは、心の底をたたけば、必ず道を求め、徳を慕うているものじゃ。だから徳にはけっして孤立ということがない。どんなに寂しくても、徳を守り続けていくうちには、だれかはきっとこれに感応して手を握ろうとする。(中略)心配することはない。ただ天を信じ、己を信じて、正しく生きてさえいけば、道は自然に開けてくるものじゃ。」

■P195 「渡し場」より

「山野に放吟し、鳥獣を友とするのも、なるほど一つの生き方であるかもしれない。しかし、わしにはまねのできないことじゃ。(中略)わしはただ、あたりまえの人間の道を、あたりまえに歩いてみたい。つまり、人間同士で苦しむだけ苦しんでみたい、というのがわしの心からの願いじゃ。そこにわしの喜びもあれば、安心もある。(中略)正しい道が行われている世の中なら、今ごろわしも、こうあくせくと旅をつづけていはしまい。」

■P233 「行蔵の弁」より

「君子の強さは腕力や弁舌にはない。いざという時に、なんの不安もなく正義を守りうる力、そこに君子のほんとうの強さがあるのじゃ。(中略)君子は物事を判断したり、自分の進退を決したりする場合に、いつも正義を標準にするが、小人はこれに反して利害を標準にする。利害を標準にしたのでは、真の強さは出てこない。」

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〓 3)今日の気づき                       〓
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「論語」には、かつて徳川幕府が支配体制を強化するためイデオロギー的に用いた等の、堅いイメージがあります。しかし、本書に出てくる孔子のメッセージからは、シンプル、潔い、爽やかといった言葉が浮かんできます。洋の東西は異なりますが、ジェームズ・アレンの『「原因」と「結果」の法則』あたりに通ずる要素があるかもしれません。

本書は作者自身が述べているように、史実への忠実さや解釈の正確さより、孔子や弟子たちの人間味やわかりやすさに重きを置いています。とはいえ、ビジネスにせよ、プライベートにせよ、「変化の著しい変革期に軸を持って生きるためには、こういった道徳哲学が必要なのでは?」と気付かせてくれる一冊でした。

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〓 4)本書の目次                        〓
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・序文

・富める子貢
・瑚れん
・伯牛疾あり
・志をいう
・子路の舌
・自らを限る者
・宰予の昼寝
・觚、觚ならず
・申とうの欲
・大廟に入りて
・豚を贈られた孔子
・孝を問う
・楽長と孔子の目
・犂牛の子
・異聞を探る
・天の木鐸
・磬を撃つ孔子
・竃に媚びよ
・匡の変
・司馬牛の悩み
・孔子と葉公
・渡し場
・陳蔡の野
・病める孔子と子路
・一以って貫く
・行蔵の弁
・永遠に流るるもの
・泰山に立ちて

・解説

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論語物語
下村 湖人(著)
まどか出版 (2008/11) 269ページ