こんにちは。本シェルジュの三上友美恵です。
本の問屋さんに勤務し、本屋さんへ本を届ける仕事にずっと携わってきた私に
とって、近年の出版業界の厳しい状況は胸のつまる思いです。
そんな中、弊社のPI(Publishes Incubation)推進プロジェクトで産声を上げた
方丈社さんから「本を売る」という原点を再認識させてもらえる本が出版され
ました。方丈社さんの「深くて、豊かで、明るい本をつくる」という理念がその
まま形になった本です。
イタリアの山奥にある小さな村がなぜ「本の行商人の村」になったのか。
著者と一緒にイタリアを旅をしながら、本の「作り手」「売り手」の思いを
感じてください。
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1)本日紹介する書籍
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モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語
方丈社 (2018/4/6) 292ページ
内田 洋子
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2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?
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本を愛するすべての人に。
私たちの身近にある「本」はどうやって普及してきたのか?
『本屋大賞』の先駆けといえるイタリアの著名な文学賞『露店商賞』はなぜ
生まれたのか?
ページをめくるたびに、イタリアの風を感じる1冊です。
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3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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P198
神の言葉を運ぶ行商人には、神々しい本の情報が届いたのかもしれない。
本の行商とは、本を売るだけの商売ではなかったようだ。現代の書店が、
本を売るだけの場所ではないように。
P208
それまでの本を読む人たちとは異なる種類の人たちが、各地で行商人たち
の運んでくる本を心待ちにした。書店は高価で難解な専門書ばかり扱って
いて、敷居が高い。気軽に手に取り、好きなだけページを操ってみたい。
露店なら、いくらでも本に触れることができる。冒険や恋愛など、身近な
内容の雑誌もある。気に入れば、自分たちにも買える本がある。店主である
行商人たちは丁寧に相手になってくれるのだった。
(中略)行商人たちは庶民の好奇心の懐事情に精通した。客一人ひとりに
合った本を見繕って届けるようになっていく。客たちにとって、行商人が
持ってくる本は未来の友人だった。
P212
毎朝四時に台に本を並べました。昔は、営業時間など決まっていません
でしたから。早くに台の前を農家の人たちが通ります。泥のついた靴で
立ち止まると、
「『ピノッキオ』を一冊頼みます。一番きれいなのをお願いしますよ」と、
買ってくれたからでした。
『白雪姫』『シンデレラ』『赤ずきんちゃん』『長靴を履いた猫』など、
子供向けの本はよく売れましたね。ことさらクリスマス前は盛況でした。
P215
六歳の子が思い籠を背負って、夜の山道を一人で歩く姿を思い浮かべて
胸がいっぱいになる。
「モンテレッジオ人たちがしないで、誰がする。文化は重たいものなのです」
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4)今日の気づき
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本はもともと高級品で、庶民には手が届かないものでした。
それを活版印刷が庶民にも身近に感じられるものに変えたのです。
日本は「再販制度」があり、雑誌・書籍は日本中で同じ価格ですが、これは
世界ではむしろ「例外」で、ほとんどの国は地域格差のある高級品。しかも
これほどバラエティに富む出版は出来ていません。
駅前の小さな本屋がどんどん廃業する時代。
だからこそ、小さな子どもが自分で「これ欲しい!」と絵本を抱えることが
出来る環境は何とか守りたい。
一業界人として、背筋が伸びる気持ちになった本でした。
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5)本書の目次
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1 それはヴェネツィアの古書店から始まった
2 海の神、山の神
3 ここはいったいどこなのだ
4 石の声
5 貧しさのおかげ
6 行け、我が想いへ
7 中世は輝いていたのか!
8 ゆっくり急げ
9 夏のない年
10 ナポレオンと密売人
11 新世界に旧世界を伝えて
12 ヴェネツィアの行商人たち
13 五人組が時代を開く
14 町と本と露店商賞と
15 ページに挟まれた物語
16 窓の向こうに
あとがき 本が生まれた村
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モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語
方丈社 (2018/4/6) 292ページ
内田 洋子
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