さて、今回の本シェルジュでは“中小企業診断士がビジネス本を紹介する当サイト”のど真ん中のテーマ「ビジネススキル」に焦点を当てた本を紹介したいと思います。

今回紹介する本「ディープ・スキル」とは何でしょうか。本書の「はじめに」では『すばり「実行力」です』と述べています。「なんだ、そうか」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ですが「ディープ」なので、今までにないより深い視点で掘り下げています。そして、著者は『「ディープ・スキル」は底なしに深いテーマです。』と明言しています。

個人スキルもありますが、組織力学について深く焦点が当たっているこの本。一読した上で社内ディスカッションするのもいいかもしれません。2023年は既に始まりましたが、4月から新年度の方も多いのではないでしょうか。一足先にこの本を読み「仕事ができるひと」を目指しませんか?

本日紹介する書籍

Deep Skill ディープ・スキル 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」
ダイヤモンド社 (2022/10/26)) 280ページ
石川明(著)

本書を選んだ理由 ~どんな人が読むべき?~

どんな人が読むべきか? Amazonのレビュー(読者の感想ではなく本の紹介文)がとてもわかりやすいので、合わせてお読みください。
・自分は正論を言っているのに、うまくいかないと感じている方
・なぜ上長が動いてくれないのか?と思い悩んでいる方
・事業(特に新規事業)でフレームワークが機能しないと感じている方
・「仕事ができる人になりたい」と思っていても、具体的に言語化できない方

付箋 ~本書からの内容抽出です~

※本書で太字で記してある箇所は本レビューでも太字にしてあります。

P.4 人や組織は、理屈だけでは割り切れない複雑な存在です。(中略)経営者、上司、部下などは社内の人々を味方につけるためには、そうした「人間心理」への鋭い感性が求められます。

P.6 (経緯略)なぜなら、誰も「信頼できない人間」の言うことを聞き入れてはくれないからです。「何をどのように伝えるかが大事」などと言われることがありますが、実際のところは、相手は常に「誰が言うか」で判断します。

P.36 組織で仕事を進めるうえで、「上司の決裁」は不可欠です。ところが(中略)イレギュラーな起案(中略)に対しては、途端に慎重になるものです。(中略)「意思決定することこそが、上司の本質的な職務ではないのか? その職務を果たさないのならば、上司失格というほかない」 これははっきり言って「正論」です。しかし、これが危ない。(中略)「正論」というものは、非常に危険なものなのです。

P.42 無闇に「波風」を立てない。これは、これまで私がご一緒してきた「本当に仕事ができる人」に共通するポイントです。(中略)ただし、(中略)あえて「波風」を立てるべきときに、しっかりと立てておかないと、後々に禍根を残すことがあるといってもいいかもしれません。(設楽注:ここから先の事例は本書にて!)

P.50 ビジネスにおいて、私たちは時に、頭が真っ白になるようなショックを受けることがあります。(中略)だから、ひどいショックに襲われたときは、まずは健全な精神状態を取り戻すことが大事です。というか、自分の置かれている状況を、冷静な目で見つめ直せばいいのです。

P.57 圧倒的な「量」をこなすことで、自然と「仕事の質」は高まっていくのです。そして、「仕事の質」が高まれば、「結果」は必ずついてきます。

P.64 「専門性」を高める。(中略)ただ、ここに重大なパラドックスが隠されています。「専門性」を高めれば高めるほど、ビジネスの「本質」から遠ざかるリスクも高まってしまう。(中略)どういうことか?(設楽注:この理由は本書にて!)

P.81 小さなプライドを守るために、ひとりで問題を抱え込むのではなく、周囲の人々に「壁打ち」をお願いした方がいい。自らの「悩み」を打ち明けて「助けて下さい」「知恵を貸してください」と頭を下げればいいだけのこと。余計なプライドを捨てることは、重要な「ディープ・スキル」なのです。

P.93 (社内で)協力関係を築くためには、まず「他者貢献」することが大切なのですが、それが往々にして『親切の押し売り』になってしまうことです。(中略)かえって、相手に敬遠される結果を招いてしまうのです。

P.112 「企画」とは、理路整然とした事業アイデアをまとめ上げることではない。自分の「目的」を達成するまでの実行プロセスの「設計図」を画き出す、つまり「企て」を「描く」ことを「企画」というのだ、と。

P.128 会社でイノベーションを起こすために必要なものは何か? こう問われたら、あなたはどう答えるでしょうか。(中略)それだけでは足りません。そこに「権力」がなければ、絶対にイノベーションは起きないのです。

P.138 合理性とは「最も効率的に目的を達成すること」という意味ですが、その「目的」を決めるのは「意思」にほかならないのです。(中略)合理的な議論だけで結論が出ないときには、そもそもの出発点である「意思」に立ち戻る必要があるのです。

P.152 「部署間対立」が生じたときは、お互いが向かい合うのではなく、肩を並べて横に並び、ともに「基準=共通の利害」のほうに顔を向けて、お互いの果たすべき役割について話し合うことが大切。(中略)これこそが、「対立」を乗り越える上で欠かすことのできない「ディープ・スキル」なのです。

P.167 「使命感」が最強の武器である。私は、そう考えています。(中略)これまで数多くのビジネスパーソンに伴走してきましたが、苦しい局面に幾度となく遭遇しても、最後の最後まで戦い抜いたのは、確固とした「使命感」を持つ人たちでした。

今日の気づき

この本の付箋として、いくつかピックアップしました。ただ、「(中略)」ばかりで申し訳なく思っています。紹介者として言い訳になりますが、ぜひ本書にてご確認いただければ幸いです。
そこで、私よりも深く掘り下げ、本書を紹介している、友人の北村和久さんのnoteを紹介させてください。こちらになります。ぜひご一読いただければと思います。

私自身の気付きですが、一言で言うと「人間の思い込みってたくさんあるんだな」と感じた点です。いわゆる「アンコンシャス・バイアス」に相当するものですが、その思い込みは社会人経験が長ければ長いほど大きく深くなり、取り除くことが難しくなると思っています。
ただし、その壁を越えなければ何も生まれないのも事実。人を、組織を、変えたいのであれば相当なチャレンジが必要だと感じた次第です。

本書の目次

はじめに
第1章 「したたか」に働く
信頼資産:01 「ずるさ」ではなく「したたかさ」を磨く
裏切り:02 上司とは「はしご」を外す存在である
意思決定:03 優柔不断な上司に「決断」を迫る
覚悟:04 勝負どころでは、あえて「波風」を立てる
達観:05 会社で「深刻」になるほどのことはない

第2章 「人間関係」を武器とする
抜擢:06 弱者でも「抜擢」される戦略思考
専門性:07 「専門性の罠」に陥ってはならない
思考法:08 他者の「脳」を借りて考える
話し方:09 “敏腕ビジネスマン”のように話さない
協力関係:10 「協力関係」の網の目を張り巡らせる
他者貢献:11 親切なのに「嫌われる人」の特徴
求心力:12 まず、自分の「機嫌」をマネジメントする

第3章 「権力」と「組織」を動かす
企画力:13 組織を動かすプロセスを「企画」する
言語化力:14 上司の「頭の中」を言語化する
権力:15 「権力」を味方につける人の思考法
合理性:16 「合理性の罠」に陥らない方法
効率性:17 「効率化」で墓穴を掘らない思考法
対立:18 「調整」とは“妥協点”を探すことではない

第4章 「人間力」を磨く
嫌悪感:19 人間の「哀しさ」を理解する
失敗:20 「やり切った」うえでの失敗には価値がある
使命感:21 「使命感」が最強の武器である
おわりに

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Deep Skill ディープ・スキル 人と組織を巧みに動かす 深くてさりげない「21の技術」
ダイヤモンド社 (2022/10/26) 280ページ
石川明(著)