こんにちは、「本シェルジュ」の大橋功です。

新年を迎えましたが、今年も気候変動、資源・エネルギー問題、自然災害や地震の脅威等々、地球の今後に関わる様々な問題が話題になりそうですね。
そんな時に役に立つ、「大人のための地球科学の教科書」としてお勧めできるのが本書です。筆者は、京都大学で長年教鞭をとってきた鎌田教授。難しい数式や言い回しを使わず、分かりやすい解説に定評があります。

太陽系の中で、なぜ地球だけ生命体が存在できる環境になったのか、今後地球の環境はどう変化していくのか、エネルギーや金属資源の供給見通しはどうか、地震や火山噴火の可能性はどの程度か、等々気になるテーマについて最先端の研究内容が紹介されていて、知的好奇心もそそられます。

1)本日紹介する書籍

「知っておきたい地球科学 ~ビッグバンから大地変動まで~」
岩波新書(2022/11/18)239ページ
鎌田浩毅(著)

知っておきたい地球科学 (岩波新書)

2)どんな人が読むべき?

  • 自然災害や地震、気候変動等に関する、地球科学の基本的な知識を知っておきたい人
  • これらの問題に対する政治的、感情的な議論の是非を判断するための、考え方の軸を持ちたい人

3)付箋 

『数十年単位のミクロな時間軸で見れば、温室効果ガスによる温暖化は確かに起きている。一方、数万年単位のマクロの視座では、暖かい間氷期が終了してこれから氷河期に向かう途上にある。』(P.66)

『地球の歴史を長期的にみると、自然界には様々な周期の変動があり、現時点の予測が大きく外れることも考慮しなければならない。国際政治や経済に振り回されることなく、地学の目で捉えるからこそ見えてくるものもある』(P.122)

『日本列島は千年ぶりの「大地変動の時代」が始まったため、今後の数十年は地震と噴火は止むことはない、というのが地球科学者の見解である。こうした重大な事実を高校地学で学ぶ機会がなくなったことは、国民的損失以外の何ものでもない。』(P.228)

『あまりうろたえることなく「長尺の目」と科学の力によって、千年・万年の時間単位で起きる地球イベントを上手にかわそうというのが、地球科学に関わってきた私のメッセージである。』(P.238)

4)今日の気づき

この本から教えられるのは、気候変動や自然災害の激甚化などの問題に対処するときに、目先の政治的、経済的な議論や風潮に流されないよう、長期的に地球はどういう方向に向かっているかというマクロの知識(=「長尺の目」)を持つことの重要性です。

そのような、スケールの大きい地球科学のエッセンスを分かりやすく一息で読ませるのがこの本の値打ち。南海トラフ地震は2040年までにほぼ確実に起きるとか、日本は「大地殻変動の時代」に入り、今後数十年は地震と噴火は止むことはない、等々の生々しい記載にはやや気の滅入るところはありますが、やはり事実は事実として受け止め、日ごろから備えを怠らないことの大切さを改めて感じます。

5)本書の目次

第1章 地球・生命

第2章 環境・気象

第3章 資源・エネルギー

第4章 地震・津波・噴火

おわりに~地球科学に含まれる「実学」と「教養」