こんにちは。本シェルジュの安藤準です。

世界ではすっかりコロナ渦で大混乱。 緊急事態宣言は解除されたとはいえ、
Withコロナ時代として当面委縮した社会になりそうですね。

そんな中でテレビメディアへの批判もピークに。 もともと、すでに「価値が無い」と言われてきましたが、 不安を煽ったり、政治批判、工作情報に乗っかる虚偽情報は、 価値が無いどころか「害」が出ており、 今回の新型コロナも「インフォデミック」ともいわれるのも納得です。

さて、この「害」ともいえるメディアはなぜ生まれるのでしょうか。 実は、今に始まったことではなく今までもフェイクニュースはありましたが、 ネット情報が溢れることでそれに気づきやすくなっただけとも言えます。

今回はその仕組みを実体験で解説した本をご紹介します。 元々テレビの現場にいた著者の「情報のゆがみ方」の実体験を 生々しく理解することができます。 例えば、オウム真理教事件。 当時どのメディアも「極悪集団」として放送していましたが、 筆者は現場で「普通の人」が多いことに驚き、 その温和な側面を報道しようとしたら 上層部に怒られ、異を唱えたらクビになってしまったとか。

私もYouTube配信をするようになりましたが、 編集の仕方によって「自分の主観」が入ることを実感し、 改めて情報を中立公平に扱うことの難しさを感じています。

本書は、子供向けに書かれた本のようで、 「ふり仮名」がふられていますが、 正直、内容そのものは子供には難しい印象を持ちました。 中学生以上がターゲットかと思いますが、 案外、大人のほうが学びの多い内容かと思います。

社会変化の節目にいる今日この時、 メディアリテラシーを高める一助にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

1)本日紹介する書籍

「フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ」
ミツイパブリッシング (2020/1/24)
森達也 (著)
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/B0844XN9XQ

2)本書を選んだ理由(どんな人が読むべき? )

本来のターゲットはおそらく中学生のようですが、 真に学びが深いのは大人だと思います。 そして筆者・出版社もそれを狙っている気がします。
メディアリテラシーを高めたい方はもちろん、 今の劣悪なメディアに苛立っている方、 メディアにどう向き合うべきなのか視点を増やしたい方におススメです。

3)付箋 ~本書からの内容抽出です

第1章 ニュースは間違える

○メディアが間違うとき

 松本サリン事件」が起きてから二五年以上も経っている。だからあなたが、この事件について知らなくても不思議はない。でもこの事件は、これから僕が書くこの本のテーマに、とても重要な関わりがある。

第2章 ニュースを批判的に読み解こう

○字が読めなくてもわかる

 一九世紀末から二〇世紀初頭にかけての時代、義務教育制度は、まだほとんどの国で定着していなかった。つまりこの時代までは、文字を読める人は、ほんの一握りだった。 ところが映画とラジオは、字を読めない人でもわかる。字を知らなくても、映像を観ることはできるし、ラジオのアナウンサーがしゃべることを聴くことはできる。リテラシー(読み書き能力)を必要としない。誰もが楽しめる。誰もが理解できる。

第3章 きみが知らない、メディアの仕組み

○僕がクビになった理由

 僕が撮影した「A」は、そのサリン事件で、たくさんの人を殺害したオウム真理教の信者を被写体(撮影の対象とする人やもの)にしたドキュメンタリーだ。実はこの映画は、最初はテレビで番組として放送する予定だった。でも「オウム真理教の信者を絶対悪として描け」とのテレビ局上層部の指示に、どうしても納得できない僕は、結果的に当時所属していた番組制作会社から、契約を解除されることになる。つまりクビだ。

第4章 真実はひとつじゃない

○メディアはあおる

ナチスの最高幹部だったゲーリングが、戦争を起こすときには「危機をあおればいい」と証言したことは第2章で書いた。もちろん戦争を起こしたいと考える権力者がメディアを利用する場合もあるけれど、メディアはそもそも、不安や危機をあおることがとても得意だ。なぜかわかるよね。そのほうが視聴率や部数は伸びるからだ。

第5章 フェイクニュースに強くなるために

○メディアと僕らは合わせ鏡

 つまりテレビには社会の関心や興味がそのまま表れる。これはインターネットも同じだ。サイトの訪問者を増やすためには、アクセス数を稼ぐ記事をアップし続けなければならない。もちろん新聞も、テレビやインターネットほど露骨ではないけれど、やっぱり社会の関心や興味が反映される。

4)今日の気づき

 私は「テレビメディアが悪い」という意見が強かったのですが、 少しだけ見方が変わりました。 メディアの情報は中立性・公平性は不可能で、 どんな情報でも「意図」が入ってしまいます。 大切なのは受け手が意図が入ることを きちんと理解することこそ、 メディアリテラシーといえます。
私自身も日常的に 元情報を見に行ったり、あえて反対意見を読んだりすることでバランスを取ろうとしますが、 それでもいつの間にか雰囲気に流されることもあります。 当たり前だと思っても非常に難しいですね。

メディア現場にいる実例とともに、筆者の言う 背景や意図を理解すると倫理観で害と思える情報にも、 少し情報の見方も変わってきました。

5)本書の目次

第1章 ニュースは間違える
第2章 ニュースを批判的に読み解こう
第3章 きみが知らない、メディアの仕組み
第4章 真実はひとつじゃない
第5章 フェイクニュースに強くなるために


「フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ」
ミツイパブリッシング (2020/1/24)
森達也 (著)
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/B0844XN9XQ