みなさん、こんにちは。本シェルジュの園田泰造です。
私たちは、未知の情報を把握するために、それが複数の数値であれば、平均を
取って、全体の代表値とするのに何の疑問も持たないと思います。
また、手法の定まっていない作業を多くの人で実行するためには、作業を標準
化して効率を高めようとするのではないでしょうか。
平均にしろ標準にしろ、均一な集団全体を対象にしている前提においては、確
かに「効率的」かもしれません。ただ、現実社会において、平均に基づくあり
もしない「平均像」から外れる人が排除されたり、一つの指標で平均以上が優
れていて、平均以下は劣っているといった「一次元的な」思考が世の中にはま
だまだ多いにも事実です。
今回ご紹介する本は、私たちが「大好き」な「平均」が役にたたないどころか
弊害も多いことを知り、個性やばらつきを理解することで、個人も社会もより
良い結果を出すことができる処方箋を提示してくれています。
私たちに染みついた平均思考を、思い切って捨ててみませんか。
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1)本日紹介する書籍
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平均思考は捨てなさい~出る杭を伸ばす個の科学
早川書房 (2017/5/24) 292ページ
トッド・ ローズ (著), 小坂恵理 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/415209690X/
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2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?
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人事採用担当者はもちろんのこと、一つの指標や標準的な方法にどうしても
うまく適応できず、自分の評価を上げることにあきらめてしまいそうな方、
ついつい平均や標準でものごとを判断しがちなすべての方へ、お勧めします。
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3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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P15 ダニエルズが発見した答えは明快で、議論の余地がなかった。平均的な
パイロットなど、存在しないのである。つまり、平均的なパイロットにフィッ
トするコックピットをデザインしたら、実際には誰にもふさわしくないコック
ピットが出来上がるのだ。
P29 何か新しい事柄を学ぶ際に最も難しいのは、新しいアイデアを受け入れ
ることではない。古いアイデアを手離すことだ。
P44 人間性全般に関してもケトレーは同じ論法で臨み、宇宙には人間の理想
像と言える雛形が存在しており、個々の人間は欠点のあるコピーにすぎないと
主張した。そして、この雛形を「平均人」と名付けた。(中略)今日では、平
均的な人間を完璧とは考えず、その代わり集団の原形の象徴、すなわちタイプ
とみなす。人間の心は、人びとを単純にタイプ分けする傾向が強い。
P61 個性を重視しない平均主義を中心に据えれば、無駄は系統的に解消される
とテイラーは確信した。その結果、「これまでは人間が優先されたが、将来は
組織が優先される」ことになったのだ。
P81 科学者、教育者、ビジネスリーダー、採用担当マネージャー、医師など、
誰もが平均主義という罠におびき寄せられ、グループの平均と比較すれば、個
人を理解できると信じてしまう。しかし、実際にはこのとき、個人にとって、
重要なもののすべてが無視されている。
P97 集計してから分析するアプローチは、それぞれの子どもの個性的な発達パ
ターンうぃ隠蔽してしまった。分析してから集計するテレンのアプローチは、
かくされているパターンを白日のもとにさらした。
P107 グーグルもデロイトもマイクロソフトも、才能を数字で要約し、味気な
い平均を比較するという発想は、機能しないという現実を突き付けられた。し
かしそれはなぜだろう。ランク付けが予想外に失敗した根本的原因は、何だっ
たのだろうか。それは一次元的な思考である。一次元的思考に陥る理由は、個
性の第一の原理、すなわちバラツキの原理によって説明することができる。
P128 自分はユニークな能力の持ち主だと認識できれば、それが第一歩となり、
自分の潜在能力を十分に理解できるようになる。そうすれば、平均主義によっ
て将来像を独断的に決めつけられても、狭い枠に閉じ込めようとする圧力をは
ねつける勇気がわいてくるだろう。
P138 正田の研究結果は、個性の第二の原理の正しさを裏付けている、それは、
コンテクストの原理である。この原理によれば、個人の行動はコンテクストす
なわち特別の状況に左右されるもので、コンテクストから切り離して説明する
ことも予測することもできない。一方、コンテクストがおよぼす影響は、当事
者がどんな特性の持ち主かによって異なってくる。言い換えれば、行動は特性
だけ、状況だけで決まるわけではない。両者のユニークな相互作用によって生
まれるのだ。
P153 コンテクストの原理は、よりよい人材の発掘に役立つだけではない。他
人についての理解を深め、自分以外の人たちの才能や能力や可能性を確認する
ためのヒントを与えてくれるだけでなく、自分への理解も深めてくれる。自分
がどんな人間で、周囲の人たちとどのように交流しているのかを解明すれば、
私生活においても仕事においても成功するための土台が形成される。
P166 人間の体、精神、モラル、職業など、いかなるタイプの成長についても、
たったひとつの正常な経路など存在しないという事実から、個性の第三の原理
は生まれた。迂回路の原理である。この原理からは、ふたつの重要な指摘の正
しさが確認される、人生のあらゆる側面において、そしていかなるゴールを目
指そうとも、同じゴールにたどり着く道はいくつもあって、しかもどれも妥当
な方法だということがひとつ。そしてもうひとつは、最適な経路は個性によっ
て決定されることだ。
P184 あなたに最もふさわしいのは、足を踏み入れた人が少ない道のほうだ。
さあ、勇気をだして新しい道に一歩を踏み出し、まだ誰も進んだことのない方
向を目指そう。平均的な経路をたどるよりも、成功する可能性は確実に高くな
る。
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4)今日の気づき
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私たちは学生のころから、試験であれば、平均点より上に入ることを意識し、
そのための勉強方法も標準的な手法を強制されることに何の疑問も感じません
でした。
社会人になっても、自分や他人を評価したり、サービスや商品を提供する際に
ついつい基準を平均において、「外れ値」は異端であり、平均を中心に据えた
発想をしがちだということに、改めて気づきました。
もちろん、平均やそれにもとづく標準化がすべて悪というわけではありません
が、個性やばらつきを無視する、存在しない「平均像」を個人に無理やりあて
はめようとせず、個人のユニークな才能に気づきそれを伸ばしていけるかに無
限の可能性があることを知りました。
まだまだこの歳でも、自分にも眠っているはずの才能があるのではないかと。
三つの原理に基づいて、私も自己の宝探しを始めたいと思います。
そして、それによって自他ともに人を見る目もきっと変わって来るはず…。
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5)本書の目次
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はじめに
第1章 平均の発明
第2章 私たちの世界はいかにして標準化されたか
第3章 平均を玉座から引きずりおろす
第4章 才能にはバラツキがある
第5章 特性は神話である
第6章 私たちは誰もが、行く人の少ない道を歩んでいる
第7章 企業が個性を重視すると
第8章 高等教育に平均はいらない
第9章 「機会均等」の解釈を見直す
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平均思考は捨てなさい~出る杭を伸ばす個の科学
早川書房 (2017/5/24) 292ページ
トッド・ ローズ (著), 小坂恵理 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/415209690X/
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