こんにちは。
「本シェルジュ」の廣瀬達也です。

グッと冷える日を織り交ぜながら確実に秋が進んでいますね。
コロナ禍のテレワーク、WEB会議の普及などで「地方で働く」というスタイルの浸透が進みそうな雰囲気が漂ってきました。菅内閣も地方活性化を重視。国の取り組みとしても力が入っています。そもそも、地域活性化は昔から言われており、各地でいろんな有識者が語ったり、活動したりしています。
私自身、「地域活性化」とか「地方創生」の領域には以前から興味を持っています。何年か前に受講していたと診断士のプロコン塾で「地域活性化に寄与できる診断士になりたい」的なことを話した際、指導員の方から「それって、『ナポレオンの村』(当時やっていた唐沢寿明がスーパー公務員を演じていたドラマ)のコンサル版になりたいってこと?」とツッコまれ、「は、はい。そうです…」とシドロモドロに回答しました…。
「地域活性化」の領域に関わるにはおそらく「現場」とか「人間関係」の濃密な世界に入っていくことが必須なんだろうとは考えています。ただ、最近は「理論」への関心が高まってきました。「地域活性化」の活動は行政とかその行政の政策に関わる領域も大きい。加えて長期的には経済活動としての営みに合致する必要がある。なので、シッカリとした理論も把握しておく(どのように行使するかは現場との兼ね合いと思いますが)ことが大切なのでは…と考え始めたからです。東京で企業内診断士をしている現在の自分の立場でできることの1つとしても現実的。そんなことを考えているときに出会ったのが今回のご紹介本です。
複数の理論系著者によりキレのいい話が展開されています。そして、全体をまとめている飯田氏は経済学者。飯田氏のマクロなコメントは今、私自身の関心とフィットしました。
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1)本日紹介する書籍               
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「これからの地域再生」
晶文社 (2017/6/16)  275ページ
飯田 泰之 (編)、浅川芳裕、新雅史、木曽崇、島原万丈、広瀬郁、藤野英人
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4794968302/

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2)本書を選んだ理由~どんな人が読むべき?               
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・ 人口減少している日本の中で、一部地域が人口増を目指すって変なのでは?と気になっている人
・ 経済学というマクロなフレームで都市と地域の関係を俯瞰してみることも大切なのではないか、と考えている人
・ そもそも都市の魅力ってなんなのか?と疑問に思ってる人
・ 地域で成果を上げているプレーヤーの例を具体的に知りたい人
・ これまでどんな大都市と地方の経済格差対策がとられていたのかを再確認したい人
・ 農業分野で地産地消を具体的に導入しようとしている事例を知りたい人

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 3)付箋 ~本書からの内容抽出です   
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現在、各自治体が目指す地域再生で最大の目標とされているものが地域人口の維持、または増加である。しかし、個々の地域が行う人口維持政策はミクロ的には一定の意味があるように感じられても、マクロの視点からは効果のない、ときにマイナスの効果しか生まないものがある。

多くの地域経済にとって最大の輸入品はなんだろう。それを考えるためには「東京都の最大の(国内他地域向け)輸出品は何か」を知ることが近道となる。東京都産業関連表の統合大分類における最大の他地域需要項目は「本社」だ。


東京に本社を持つ製造業企業が新潟県で工場を操業しているとしよう。この工場が30万円の原材料を用いて100万円の商品を製造・販売したとしても、粗利である70万円が新潟県内の誰かの所得になるわけではない。

発生した利益の多くは本社のものとなる。商品の価値を高める本社活動の対価が、「(新潟県の東京都からの)本社」機能の購入である。

何かしらのサービスや商売などソフトの魅力がなければ人は来ないというシンプルな問題を理解せず、都市空間の整備を行っても街に賑わいは取り戻せないのだ。

ほとんどの賑わいや活性化を目的としたイベントは、当日の集客人数をKPIとしてそれ以外のシナリオが存在していない。そのため、残念ながら公金を投入しても、本来の目的である街の担い手の増加には程遠い結果となる。

あらゆる地方都市をまんべんなく回って強く感じているのは、もはや地方と都市の格差ではなく、今後は地方間での格差が大きくなってくるということである。地方間の格差にダイレクトに反映されるのは、やはり首長の意識差だ。

多くの地方都市においては行政や地元経済の中心にいるのは「本質的に変化を好まず、自分でリスクをとってビジネスを展開したことのない人たち」ということだ。

地方でしぶとく稼げるビジネスを展開している「ヤンキーの虎」たちの思想や手法には、多くのヒントが隠されているとも言える。彼らそれぞれのビジネスに新規性があるかないかは別として、リスクをとり未来を切り開き、利益を出して、雇用を生み出している実績があるからだ。

一方で「虎」たちは頻繁に東京を訪れており、情報収集を怠らない。東京で流行っているものや、人気の出そうなものを自分の地元に持ち帰るのだ。いわば「ミニマムタイムマシン経営」である。

地方都市、農村地帯のほうが大都市部より所得が低いにもかかわらず、都市から逆流する商品、つまり東京プライスで地元民は買っているから、ますます貧しくなってしまう。地域の農業が地域住民、地域経済に貢献していないのだ。

多くの地域で域外(というよりも三大都市圏)から購入している最大の項目は広い意味で「本社機能」である。商品の企画やデザイン、ブランド価値の創造、物流網の管理を担いうる経営資源の地産地消を進めなければならない。

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 4)今日の気づき                       
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地域問題を人口と所得という経済的切り口で分析し、多くの地域経済にとって最大の輸入品、そして東京にとっての最大の輸出品が「本社機能」とする考え方は新鮮でした。そして、新鮮ながらも会社員である私にとって分かりやすくかったです。成功している地域活性化アクションはこの「『本社機能』」を地域で担うことが実現できていることが多いように感じました。

「リスク」という単語が何か所化に登場します。また、地域で何かアクションを起こす際には「リスク」をどう考えるかカギ。地域活性化アクションの遂行にはリスクをとるという「経営センス」が求められていることが分かります。あたりまえではありますが、情熱とか思いだけでなく「シビアな視点」と覚悟が必要です。
「ヤンキーの虎」は少し前に流行ったワード。「マイルドヤンキー」たちの雇用主であり、地域で地元密着の複合経営をやっている経営者。この本の執筆者の一人である藤野英人氏の別の著書のタイトルにもなっています。確かに地域経済のカギを握る層。私自身、「あぁ、あの人みたいな層だな」と、ある知り合いの顔が浮かびました。

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 5)本書の目次                        
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はじめに  
序論  地域再生を巡る基礎理論 
1章 センシュアス・シティから見る地方都市の魅力
2章 開発のあとに拡がる消費空間の二極化
3章 地域再生における建物利活用の未来
4章 都市にとってのナイトタイムエコノミー
5章 地域経済を支える企業人たち
6章 地方都市住民に貢献する地域農業モデル
おわりに

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「これからの地域再生」
晶文社 (2017/6/16)  275ページ
飯田 泰之 (編)、浅川芳裕、新雅史、木曽崇、島原万丈、広瀬郁、藤野英人
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4794968302/
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