こんにちは、「本シェルジュ」の大橋功です。

五輪開催が迫ってきましたが、コロナ禍終息の見通しはなかなか立ちません。感染者数が世界的に見て少ない、よく対応していると思っていたら、気づいてみるとワクチン接種が進まず、先進国では最低レベル。危機管理の拙さやデジタル化対応の遅れも指摘され、コロナ後の日本は大丈夫だろうか、という気にもなります。

そんな中で目についた本が、企業再建や地方創生の分野で活躍する冨山和彦氏と、ジャーナリスト界の大御所、田原総一朗氏との対談で進む「新L型経済~コロナ後の日本を立て直す~」です。L型経済は地域密着型の中堅・中小企業で構成されるローカル経済圏のことで、グローバルに活動する大企業群(G型)と対比される概念です。冨山氏によれば日本のGDPの7割を生み出しているのがL型経済とのこと。L型経済の活性化が今後の日本のカギを握ります。

1.本日紹介する書籍

「新L型経済」 ~コロナ後の日本を立て直す~ 
KADOKAWA(2021/4/10)254ページ
冨山和彦 田原総一朗(著)

2.どんな人が読むべき?  

  • これからどうすれば日本経済が元気になるのか、心配な人
  • これから金銭的、精神的に豊かに生活するにはどうすればよいか、ヒントを得たい人

3.付箋

『私(注:冨山氏)の主張は、日本経済の主流はG型産業ではなくL型にあり、地域経済、地方経済が全国的に回復することなしに日本経済の復興はありえないというものです。・・・L型のほうが日本の経済成長の上でも、伸び代がはるかに大きい。』

P.92~93

『Lの領域はリアルな産業の集合体なので、運輸、介護、医療、飲食、観光産業も典型ですが、どれも「そこ」でしかできない仕事がすべて含まれます。・・・L型産業は需要があるのに人手が足りない産業になっていたんです。』

P.95

『(地方では)給料は一段階下がったとしても、家賃や住宅ローンといった部分の支出も減ります。そこに自分が東京でやっていたキャリアを活かせるような仕事があれば、東京にいたときよりも豊かな生活ができる可能性が高まります。・・・・・人口30万人規模の自治体が地方再生のカギを握っているというのが僕(注:冨山氏)の考え方です。』

P.99

『これまでのように大企業が大量の中産階級を終身雇用で持っている、その人たちが消費を牽引するというモデルを捨てる。・・・L型産業に従事する人たちにこれからは大きく稼いでもらい、消費してもらって経済を回していく』

P.169

4.今日の気づき

この本の読みどころは、日本の社会や経済を今後どのように活性化するかについて、冨山氏の具体的な処方箋が示されているところでしょう。年功序列の日本的経営には批判的で辛口なところはありますが、企業再生の現場を数多く経験してきた人だけに、考え方は合理的で分かりやすいです。

個人的に、大都市圏より地方都市の生活の方が豊かに感じられるという主張には同感できるものがあります。私も転勤で4年間地方都市に住みましたが、首都圏に比べて家賃や物価は安いし、通勤や週末の行楽やスポーツも混雑が少なく格段に楽であることを実感しました。仕事があってそこそこの生活ができれば、地方に住みたい人は多くいると思います。

ローカル地域が豊かになって、地方⇒大都市の一方向ではなく、多様な生活パターンが普通の世の中になることを望みたいですね。

本書の目次

第1章 観光立国構想の蹉跌

                            ~コロナ禍がもたらした経済の停滞 

第2章 グローバルIT企業は雇用を生まない

                            ~日本経済はなぜ行き詰ったのか

第3章 まず三十万人都市を再生させよ

                            ~地方創生のカギは限界集落ではない

第4章 「ゾンビ企業」退場のためのシナリオ

                            ~地方経済の新陳代謝をうながすために

第5章 多様性が経営を強くする

                            ~日本を牽引する人材をどう育てるか