こんにちは、本シェルジュの松林です。
6月の本シェルジュは、『未来』をテーマにお送りしています。
私からは、「未来志向の組織とは?」という疑問から手に取った、組織学習分野の第一人者であるピーター・センゲ氏の著書をご紹介します。
センゲ氏は20年以上前から、変化が加速し相互につながった今の世界に、従来のマネジメントの一般的体系では対応しきれないことを指摘し、未来の組織構造や社会問題に対応するための新しい組織像を示してきました。
彼は本書で、「チームの中核的な学習能力の三本脚」として、「志の育成」、「内省的な会話の展開」、「複雑性の理解」を挙げ、それらの一本でも欠ければ椅子は倒れてしまうと説きます。
そして、集団学習の技術と実践に関心のある人たちを対象に、「学習する組織」の構築の具体的な実践方法を提示しています。
組織の中にあって、「皆頑張っているのにどうして成果が出ないのか」と悩んだり、アメとムチによるマネジメント等に限界を感じている方に、特にオススメの一冊です。
<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次
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〓 1)今日のオススメの一冊 〓
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学習する組織-システム思考で未来を創造する
ピーター M センゲ(著)、枝廣淳子・小田理一郎・中小路佳代子(訳)
英治出版 (2011/6) 584ページ
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今回の登場人物紹介
■A氏:バブル期入社組の生き残りサラリーマン
■B氏:A氏の友人。誰でも知っているが赤字で苦しむ大企業X社の部長。
(居酒屋にて)
A氏:だいぶ悩んでいるようだね。
B氏:ああ。ここ数年、新卒で入社して3年以内で辞める若者が多くて。昔と違って、頑張れば給料が上がるとか、そういうインセンティブには興味を示さないし…。
A氏:X社って、目標設定や業績評価が厳しいことで有名だったよね?
B氏:うん。経営陣が目標を設定して、そもそも達成可能だったか否かにかかわらず、社員は目標未達の責任を負わされる、って感じかな。
A氏:短期的な指標に焦点が当たりすぎて、足の引っ張り合いが起きているんじゃない?
B氏:そうかもね。皆でビジョンを共有して、もっと一体感を出してやりたいんだけど、どうすればいいんだろう?
A氏:この本を読んでみたら? ビジョンは“上から押し付けるもの”じゃないってことに、きっと気付くと思うよ。
B氏:おいおい、ずいぶん厚い本だなぁ。(苦笑)
A氏:まあ、そう言わずに読んでみてよ。意外とわかりやすいよ!
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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です 〓
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■第2章 あなたの組織は学習障害を抱えていないか? より(P65)
私たちの一人ひとりに「学習の視野」がある。つまり私たちは、時間的にも空間的にも、ある一定の幅の視界の中で自身の有効性を評価するのだ。行動の結果が自身の学習の視野を超えたところに生じるとき、直接的な経験から学ぶことは不可能になる。
ここに、組織の前に立ちはだかる学習ジレンマの核心がある。つまり、私たちにとって最善の学習は経験を通じた学習なのだが、多くの場合最も重要な意思決定がもたらす結果を私たちが直接には経験できないのだ。
■第5章 意識の変容 より(P129)
システム思考を実践するには、まず、行動がどのように互いを強めたり、打ち消したり(バランスをとったり)するかを示す、「フィードバック」と呼ばれるごく単純な概念を理解することだ。これが、何度も繰り返し生ずる「構造」の型を見ることを学ぶ基礎となるのだ。軍拡競争は、エスカレートの一般的、典型的なパターンであり、本質的には、街の二つのギャング間の縄張り争いや、婚姻の崩壊、または市場シェアをめぐって価格競争を繰り広げる二社の広告合戦と同じだ。
■第8章 自己マスタリー より(P227)
望ましい結果にもっと明確に焦点を合わせる方法を学ぶ練習の手始めとして効果があるのは、何でもよいから特定の目標やビジョンの一面を選ぶことだ。まず、その目標が完全に実現するところをイメージする。次に「実際にこれが実現したら、何が手に入るだろう?」と自問する。人がしばしば発見するのは、その問いの答えが目標の背後にあるもっと深い願望の姿を明らかにすることだ。実はその目標は、より重要な結果に到達するために必要だと想定される暫定的な段階なのだ。
■第10章 共有ビジョン より(P291)
共有ビジョンを築くディシプリンを習得する第一歩は、ビジョンはつねに「上」から申し渡されるもの、あるいは組織の制度化された計画立案プロセスから出てくるものだという既成概念を捨て去ることだ。(中略)
組織中のあらゆる人々の個人ビジョンと結びつくまでは、ビジョンは真の「共有ビジョン」にはなっていないのだ。
■第14章 戦略 より(P417)
振り返りは仕事の遂行の一部として位置づけなくてはならない。SoLネットワークで幅広く応用されている一つのシンプルな方法が、米国陸軍で開発されたツール「行動後の振り返り(AAR:アフター・アクション・レビュー)」である。これは二日間におよぶ複雑な戦争ゲーム・シミュレーションを実施した後でも、一時間の会議の後でも用いることができる。最も簡単な形では、AARは次の三つの問いから成り立っている。
・何が起きたか?
・何を予想していたか?
・この乖離から学べることは何か?
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〓 3)今日の気づき 〓
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印象に残った点を、あえてざっくりとまとめると、
・問題を起こしたり成長を抑制させたりするパターンを見抜き、従来の思考パターンから脱却する。
・本当に自分がやりたいことやなりたい姿に焦点を合わせ、知識・スキルと心の両面を成長させる。
・心をオープンにして、探求と主張のバランスをとる。
・メンバーが個人のビジョンと集団のビジョンを切り離さなくなってはじめて、集団のビジョンが共有される。
・ディスカッション(集約型)とダイアローグ(拡散形)を使い分け、両者のバランスを取る。
あたりです。
本書は、「木を見て森も見る」(俯瞰的・体系的に理論をまとめつつ、具体例や実践プログラムについても記述している)アプローチをとっており、550ページを超える大部の書籍でありながら、読みやすくなっています。まだの方、ぜひ書店でお手にとってみてください。
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〓 4)本書の目次 〓
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第1部 いかに私たち自身の行動が私たちの現実を生み出すか…
そして私たちはいかにそれを変えられるか
第1章 「われに支点を与えよ。さらば片手で世界を動かさん」
第2章 あなたの組織は学習障害を抱えていないか?
第3章 システムの呪縛か、私たち自身の考え方の呪縛か??
第2部 システム思考-「学習する組織」の要
第4章 システム思考の法則
第5章 意識の変容
第6章「自然」の型-出来事を制御する型を特定する
第7章自己限定的な成長か、自律的な成長か
第3部 核となるディシプリン-「学習する組織」の構築
第8章 自己マスタリー
第9章 メンタル・モデル
第10章 共有ビジョン
第11章 チーム学習
第4部 実践からの振り返り
第12章 基盤
第13章 推進力
第14章 戦略
第15章リーダーの新しい仕事
第16章 システム市民
第17章「学習する組織」の最前線
第5部 結び
第18章 分かたれることのない全体
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学習する組織-システム思考で未来を創造する
ピーター M センゲ(著)、枝廣淳子・小田理一郎・中小路佳代子(訳)
英治出版 (2011/6) 584ページ
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