こんにちは!本シュルジュの新メンバー、関義之です。
新メンバーといっても、不定期に投稿するイレギュラーズの1人です。皆様が忘れたころに現れます。他にもイレギュラーズのメンバーがいますので、今後の投稿をお楽しみに!
昨年中小企業診断士の登録をしましたが、もともと弁護士をしていますので、他のメンバーとはちょっと変わった「ビジネス法務」の視点から参考となる本を紹介していければと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今回ご紹介する本は、契約実務に役立つ1冊です。
契約実務の本といっても、よくある市販の書式集ではありません。契約書を作成、チェックする上での基本的な視点・着眼点を実践的に学ぶことができる本です。
契約書の作成に関わるすべてのビジネスパーソンにオススメの1冊です。
<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次
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〓 1)今日のオススメの一冊 〓
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リスク・マネージメントの道具としてのビジネス契約書の起案・検討のしかた(第2版)
弁護士 原 秋彦(著)
株式会社商事法務(2011/9/30 第2版第1刷)183頁
今回の登場人物紹介
■A部長:ベテラン法務部長
■Bくん:法務部の新入社員
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Bくん:A部長、相談にのってください。法務部の仕事として契約書のチェックを担当するようになりましたが、正直、どのようにチェックすればよいか分からないんですよね。一般的な書式集や、過去に締結したことのある、似たような契約書を探してきて、その条項と比較してはいるんですが。
A部長:書式というのは、一般的に想定されるリスクを踏まえて作成されたものではあるから、リスクのチェックリストとしては参考にする意味はあるけど、あくまで一般的な契約条項が載っているだけだから、当該取引に特有なリスクを検討するにはそれだけは不十分だよね。過去に締結した契約書だって、どのような交渉の果てにできた条項かを吟味しないと、そのまま利用してよいとは限らないよね。
Bくん:そうなんですね。そもそも、契約書というのは、どういう視点でチェックしていけばいいんですか。
A部長:契約書のチェックは、?リスクのシミュレーション、?リスクのアセスメント、?リスクのマネージメントという三段階の作業に分けて考えるといいんだよ。
Bくん:具体的にはどういうことなんですか。
A部長:(さっと、今回の本を取り出す)
この本の59頁以下に詳しく書いてあるよ。さっきのチェックリストとしての利用についてもこの本から学んだんだ(65頁)。この本は、よくみかけるけど問題のありそうな条項例と、その改善を試みた条項例を比較することによって、問題点を浮き彫りにする形で、契約書のチェックの基本的な視点を実践的に学ぶことができる画期的な教材だと思うよ。貸してあげるから、よく勉強して、早く一人前の法務部員になってくれよ。
Bくん:分かりました、がんばります!
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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出(引用)です 〓
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■「契約書の作成・締結とは、基本的に、当事者間で生じることのあり得る紛争、トラブル、揉め事について、それが発生してしまってからでは円満な話し合いによる解決は不可能であるかまたは困難であろうと想定される場合に、当事者間の自治的な対処策・処方箋として、事前に当事者双方が納得できる紛争の解決処理のための規範を条文化して手当てしておくということです」(9頁)
■「営業マンやエンジニアは方言を標準語と錯覚しがちである」「一定の用語があまりにもその人たちの内部集団の中では日常的な用語として使われているためか、その用語を外部の人間までが当然に同じ意味合いで理解してくれるはずと思い込んでおられることが結構ある」(11頁)
■「裁判官・仲裁人は、法律の専門家ではあっても、問題となっている当該ビジネスや当該取引の専門家ではないことを、契約書作成時点から念頭に置いておくべきです」(47頁)
■「想定される一定の問題状況(要件)に対して当事者間での一定の権利義務の分配(効果)を定めるというのが、紛争処理規範としての契約における条文の起案の基本だということになります」(58頁)
■「よく「法的センス」の有無という言い方をしますが、この局面(注:リスク・シミュレーションのこと)で問われるのは、…実は、ビジネス・センスなのです。何故かと言えば、ここで要求されるセンスというのは、(?)「この取引、このビジネスであれば、かくかくしかじかの問題場面・問題状況が生じるであろう」こと、また、(?)「その問題場面・問題状況においては、かくかくしかじかの点において当事者間で利害が対立するであろう」ことを見据えることができる能力だからです」(60頁)
■「だからこそ、そうしたリスク・トラブルのシミュレーションを可能にし容易にしてくれる前提情報の依頼者から弁護士への提供、そういう意味での依頼者による弁護士の教育が重要であるということになるわけです」(149頁)
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〓 3)今日の気づき 〓
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契約書の作成、チェックは、基本となる視点・着眼点を押さえることが重要である。
また、法的な知識・センスを磨くだけではなく、当該取引におけるリスクを想定するためのビジネスセンスを磨くことも必要になる。
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〓 4)本書の目次 〓
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第1章 契約書の意義と役割
第2章 契約書の文言の客観性の必要性
第3章 契約条項の「要件」と「効果」
第4章 契約書の起案・検討におけるトラブル・リスクのマネージメント
第5章 裁判所を通じての強制
第6章 弁護士に相談すべきこと
第7章 契約準拠法の指定とその限界
第8章 終わりに
リスク・マネージメントの道具としてのビジネス契約書の起案・検討のしかた(第2版)
弁護士 原 秋彦(著)
株式会社商事法務(2011/9/30 第2版第1刷)183頁
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