皆さま、こんにちは。本シェルジュの赤塚です。
先々週から5回シリーズで、「再生」をテーマにお届けしています。
3週目の今回は、「企業再生」に関する本をご紹介します。
企業再生のプロセスがどのように進められるのか、
そして、企業再生のプロフェッショナルはそこにどう関わるのか。
著者は、日本航空やライブドアの再生・再建に携わった
アリックスパートナーズLLPの日本支社代表。
そんな企業再生のプロフェッショナルが、再生プロセスの現場をリアルに描いています。
社内のコスト削減、工場における生産体制の見直し、クレームの多い問題業務の改善。
「企業再生」のプロセスに関する本ですが、再生を必要としない企業であっても、
業務改善に役立つエッセンスが多くあります。
「企業再生」という特性上、本書で描かれるのは架空の企業ですが、臨場感はたっぷり。
単純に読み物としても引き込まれます。
日ごろ、漠然と違和感を感じている取引。
当たり前だと思っている社内の慣習。
そういったところに、破綻の芽が潜んでいるかもしれません。
本書をきっかけに、ご自身の会社、仕事を振り返ってみてはいかがでしょうか。
<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〓 1)今日のオススメの一冊                   〓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
企業再生プロフェッショナル
アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシー (監修), 西浦 裕二 (編著)
日本経済新聞出版社 (2009/12/17) 320ページ
amazonURL http://amzn.to/xbDIhZ
今回の登場人物紹介
◆赤塚:本シェルジュ
◆N子:赤塚が勤める会社の同期
-----------------------------
N子:「企業再生」の本っていうから、私関係ないじゃんって思ってたけど・・・
   全然そんなことないんだね。
赤塚:ね!製品の生産とか、カスタマーサポート業務とかリアルだよね。
   「これが普通」「あたり前」って思っていることが
   実は会社の業績不振のもとだったりするのかと思うと・・・ちょっと怖いよね。
N子:「組織」っていう集団の中にいると、感覚がマヒすることがあるもんね。
赤塚:粉飾決算の根本原因が、会社のカルチャーにあるっていうのも衝撃的・・・。
   確かに、売上だ!利益だ!って言うだけで、正しい取引かどうかチェックする
   仕組みがなかったら、不正が起きたっておかしくないよね。
N子:経営者もそうだけど、従業員ひとりひとりが会社や業務の「あるべき姿」を
   きちんと描いていないといけないね。
赤塚:だね。いい勉強になった!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です              〓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■P.72より
企業が経営不振に陥る原因は、大きく二つに分類できる。
一つ目は、急成長企業が陥りがちな、事業の将来への過信に基づく過剰投資である。
二つ目は、社歴が長く、経営の安定していた企業が、外部環境の変化に適応できず、
長期低落傾向に陥り、次第に債務が膨らみ、その返済に苦しむようになるという
パターンである。
どちらのパターンの企業にも、次の四つの特徴がある。
第一は、「見栄っ張り症候群」である。つまり、自分を実際の実力よりも良く見せよう、
競合会社を出し抜いてやろうという気持ちが強く、身の丈に合わない経営を目指す傾向である。(中略)
第二は、「青い鳥症候群」である。自分の置かれた現状よりも、より魅力的な世界、
もっと簡単に儲かるビジネスがあると信じ、それを追い求めて、投資をする。(中略)
第三は、「ゆでガエル症候群」である。この傾向は、外部環境変化型の経営不振に多く見られる。
外部環境が変わり、自社のビジネスモデルが通用しなくなったのに、それに気がつかない、
それを認めようとしない。(中略)
第四は、「いつも他人のせい症候群」である。社長は部下が悪いと言い、部下は社長が悪いという。
営業は技術が悪くていい製品ができないから売れないと言い、技術は営業が売ってこないから
いけないという。
■P.144より
顧客が受け取る荷姿は、「パソコン本体」ではなく、「梱包」である。
ゆえに、梱包まで品質保証して初めて、ものづくりが完成するのである。
梱包品質を向上させることが顧客満足の第一歩である。だが、それを理解していない企業は多い。
■P.214より
粉飾決算の根本の原因は、売上高・利益を過剰に追求する組織のカルチャー、
売上高・利益と結びついた過度のインセンティブ、取引チェック体制など内部統制の不備にある。
粉飾決算の疑惑が出た時、その分野だけを調査して改善しても、また別の分野で粉飾が行われる危険性がある。
したがって、一つの粉飾疑惑が出てきた時には、他にもあるものと思って調査しなければならない。
■P.255より
ハイテックスの真の再生は―今後どれだけ経営陣と従業員とが双方向の関係になれるかにかかっている。
■P.270より
再生プロセスは、企業の存続のために遂行するものであり、プロセスが完了すれば、
債務が大幅にカットされて身軽になった状態で事業を継続できる。(中略)
再生プロセスは、見ようによっては、「一時期頭を下げさえすれば、債務が帳消しになる、
おいしい制度」と見えなくもない。しかし実際には、再生プロセスが完了してからこそが
本当の戦いである。
なぜ破綻に至ってしまったのかを反省し、真摯に経営努力を重ねることができなければ、
たとえ再生プロセスを完了したとしても、真の再生にはならない。
■P.304より
再生が必要な状況に陥った企業で共通して見られる病状が、「決められない」病である。
経営者が痛みを伴う課題から目をそむけ、決断しなかったために、手遅れの状況まで
追い込まれているのである。
「決められない」のは、気持ちの問題からだけではない。「決める」ためには、
客観的な数値、データが不可欠である。
問題を抱えている企業においては、当然あるべき数字が存在しなかったり、
経営者がそれらを見ていないことが多い。
■P.310より
どの企業にも経営計画や事業計画はあり、その中には目標が掲げられている。
しかし、これまでの経験では、「具体的にどのような施策によって、
そうした目標を達成していくのか」がきちんと説明されていない企業が、意外と多い。
■P.317より
どんなに健全な企業であっても、大きな転換点を迎えたり、想像しなかったような危機に
遭遇することが、必ずある。
そこで経営者がうろたえたり、判断を誤れば、会社の存続が危うくなってしまう。
有事の際にこそ、経営者の力量が問われるのである。
「有事への備え」あるいは「有事について頭の中でシミュレーションしておく」といったことは、
経営者にとって、いまや必須の仕事となってきた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〓 3)今日の気づき                       〓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
再生のプロセスが必要な企業の現場は、想像していた以上に壮絶である。
そういう状況に陥らないために、いま自分たちにできることは、恐らくたくさんあるだろう。
企業の健全性を守るために、ビジネスパーソンにとって「企業再生プロフェッショナル」の視点は
重要なスキルであると感じた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〓 4)本書の目次                        〓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
はじめに
主要登場人物
序 章 企業再生とは何か
第一章 業績急落
第二章 新たな株主
第三章 コストダウン・マスタープラン
第四章 生産体制のターンアラウンド
第五章 コールセンターのターンアラウンド
第六章 不正の根を断つ
第七章 最後の賭け、民事再生
第八章 事業売却、選択と集中
エピローグ
終 章 これからの企業再生
企業再生プロフェッショナル
アリックスパートナーズ・アジア・エルエルシー (監修), 西浦 裕二 (編著)
日本経済新聞出版社 (2009/12/17) 320ページ
amazonURL http://amzn.to/xbDIhZ