本シェルジュの氏家です。

 突然ですが、皆様、「美意識」を鍛えてますか?

たな思考法として一昔前にデザインシンキングが話題になり、2015年に世界トップクラスのコンサルティングファームマッキンゼーがデザイン会社LUNARを買収するなど、ビジネスの領域とアートの領域は切っても切り離せないものになっており、また、修士号・博士号を授与できる英国のロイヤルカレッジオブアートでは、企業の幹部向けトレーニングを拡大する等、その注目度は年々高いものになっています。

 今回ご紹介する「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか」では、そのタイトルのとおり、経営にとってなぜアートが重要なのか、そしてビジネスマンがなぜ「美意識」を鍛える必要があるのか、その答えを知ることができる非常に実践的な本となっています。

 今回ご紹介する「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか」では、そのタイトルからすると「美術の本なのかな」と思ってしまわれる方もいらっしゃると思いますが、経営にとってなぜアートが重要なのか、そしてビジネスマンがなぜ「美意識」を鍛える必要があるのか、その答えを知ることができる非常に実践的な本となっています。

1)本日紹介する書籍


世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」光文社 (2017/7/20) 257ページ
山口 周(著)
AmazonURL:
https://amzn.to/2UfYXAl

2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき?

 「アート重要だよね」ということは何となくわかっているものの、「なぜアートが重要なのか」聞かれると、それをこたえることができないビジネスマンにお勧めです。また、この本ではロジカルシンキングをはじめとした「サイエンス」とバランスをとる存在として、「アート」の説明をしており、ロジカルシンキングや説明責任といった言葉につかれてしまった方、さらに、哲学とビジネスとの関係性についても説明があるので、大きな決断を下そうとするビジネスマンにぜひ読んでいただきたい本になっています。

3)付箋 ~本書からの内容抽出です

■第一章より
 システムの変化に法律の整備が追い付かないという状況においては、明文化された法律だけを拠り所にせず、自分なりの「真・善・美」の感覚、つまり「美意識」に照らして判断する態度が必要になります。

P.39

 論理や理性で考えてもシロクロのつかない問題については、むしろ「直感」を頼りにした方がいい、ということです。

P.55

 ある意思決定をしようというとき、アートとサイエンスのあいだで主張がぶつかると、サイエンス側がアート側を批判することは非常に容易であるのに対して、アート側がサイエンス側を批判するのは非常に難しい、ということです。

「なんとなく、これが美しいから」という理由で主張を展開するアート側に対して、財務面その他の定量的分析の結果を盾にして、別の主張を展開するサイエンス側が対等な立場で戦えば、勝負は目に見えています。答えはアート側の敗北でしかありません。

P.68

 重要なのは、アート・サイエンス・クラフトのバランスと経営トップチームの中での役割分担と権限のバランスがしっかりと整合していることなのです。

P.75より

 組織の意思決定の品質というのはリーダーの力量だけによって決まるわけではなく、一種のシステムとして機能します。有効な人材を有効なサブシステムとして配置できればそのシステムは高品質の意思決定を行うわけですが、一方でそれは、リーダーの力量が変わらなくても、システムとしてのバランスが崩れれば、意思決定の品質もまた既存してしまうのだということを示してくれているようにも思います。

■P.140

コーン・フェリー・ヘイグループの分析によると、高い業績を上げる人材は統計的に高い達成動機を持つことがわかっています。達成動機というのは「与えられた目標を達成したい」という欲求ですから、高い業績を上げた人物が強い達成動機を持っているというのは、とてもわかりやすい話ですね。

しかし、一方で問題もある。というのも「高すぎる達成動機」を持つ人は、「達成できない」という自分を許すことができないために、粉飾決算などのコンプライアンス違反を犯すリスクが高いんですね。

これは大矛盾です。高い目標を掲げて、その達成に向けて限界まで努力するという態度は褒められこそすれ避難されるべきものではありません。私たちの多くは、そのような態度を持つことを、ある種の「絶対善」として教育されてきてしまっています。

4)今日の気づき

本書では、経営におけるサイエンスとアートの重要性、そしてビジネスマンの倫理観について大変示唆に富んだ指摘を行っています。ともすれば、私も「直感的、倫理的には正しくないけれど、説明がしやすい方を選択する」といった意思決定を行っているのではないかと、自分を振り返るきっかけを与えてくれました。

日々、様々な意思決定や企画立案にロジカルシンキングだけで対応し、サイエンス疲れを起こしている皆様にぜひ読んでいただきたい一冊です。

5)本書の目次 


第1章 論理的、理性的な情報処理スキルの限界

第2章 巨大な「自己実現欲求市場」の登場

第3章 システムの変化が早すぎる社会

第4章 脳科学と美意識

第5章 受験エリートと美意識

第6章 美のモノサシ

第7章 どう「美意識」を鍛えるか
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」光文社 (2017/7/19) 257ページ

山口 周(著)