こんにちは、「本シェルジュ」の大橋功です。

デジタル社会がもたらすフェイクニュースとプライバシー侵害の脅威。NHKスペシャルでも取り上げられたこの問題を、丹念な取材でじっくりと読ませてくれる本です。
グーグルの利用履歴だけを頼りに、その利用者の実像に迫る実験を詳細に追った箇所は、特に興味深いと思います。9年分、2.7ギガバイトの履歴データから、AIが個人の年齢、性別はもとより住居、職業、歩んできた人生まで割り出してしまうというのは驚きです。

また冷静に考えれば信じがたいフェイクニュースが、世論形成に大きな影響力を持つに至ったのも、昨年の米国大統領選挙で記憶に新しいところです。
今後私たちはどのようにデジタル社会と向き合っていけばいいのか、そう感じたときに一読をお勧めします。

1)本日紹介する書籍

「やばいデジタル」 
講談社(2020/11/20)215ページ
NHKスペシャル取材班(著)

2)どんな人が読むべき?

フェイクニュースはどのように作られて、個人攻撃や世論操作に使われるのかを知りたい人

デジタル時代に、個人のプライバシーはどのように脅威にさらされているかが気になる人

3)付箋 

ディープフェイクが問題となるのは、作られることだけではなく、それが拡散されるということである。私たち一人ひとりにできることは、「これは本物なのか?」と疑い、偽物である可能性があれば、それを拡散しないという認識を持つことなのではないだろうか。

P.57

フェイクニュースの役割は、今日の政治キャンペーンにおいては、非常に重要なのです。なぜなら残念ながら非常に拡散性が高いからです。機能してしまった以上、悪いこととわかっていても続けられてしまうのです。

P.91

「ファクトチェックだけでは、フェイクを解決することはできません。私たちが持つ情報を市民に公開することが大切です」こう語るのは、台湾のオードリー・タン デジタル担当相だ。・・・「私たちの言う「透明性」とは、政府の施政方針や現状をすべての国民に公開することです。・・・こうしたことがフェイクニュースによる被害を未然に防ぐことにつながるのです」

P.97~99

「私たち自身」を表すデータに大小様々な企業が殺到し、巨額の金を巨大IT企業に支払う。市場の中心がモノではなく、私たちの日常を監視するかのようにして得られた、「私たち自身」を映し出すデータになっている。それが新たな資本主義の形態、「監視資本主義」だ。

P.149

4)今日の気づき

個人データの活用とプライバシー保護のバランスは、デジタルマーケティングが脚光を浴びる中、その裏側にひそむ重いテーマです。普段何気なく行っている、ソーシャルメディアへの写真投稿、検索エンジンの閲覧、Webサイトへの個人データ入力などが持つ意味の大きさを改めて感じます。

同時に、SNSの記事や意見に「いいね」を押したり、リツイートしたりすることがどのように社会に影響するのか、自分自身の行動に目を向けることも忘れてはいけませんね。この本を読むと、デジタルとリアルが密接に関わりあうようになった世界での暮らし方を、自分事として考える機会になります。

5)本書の目次

第1章 フェイクに奪われる「私」
    ~ 情報爆発と「ディープフェイク」 
第2章 デジタル絶対主義の危険
    ~ フェイクが民主主義を脅かす
第3章 あなたを丸裸にする「デジタルツイン」
    ~ ビッグデータはすべてを知っている
第4章 さよならプライバシー
    ~ 恐怖の「デジタル監視」時代
第5章 あなたのデータは誰のもの?
    ~市民の主導権、企業の活用、政府の規制