皆さまこんにちは。「本シェルジュ」の設楽英彦です。
3回目の投稿になります。

今回は本の紹介に入る前に、ある人物が書いた詩から入ります。

彼女の解けた髪が黄金色の波のように肩に垂れ下がった。
明るい春の空が彼女の上に広がっていた。
すべては純粋で幸せに輝いていた。

なんとも繊細な感受性を持った人が書いた詩であることを想起させます。
しかし、この詩を書いた人は「アドルフ・ヒトラー」です。
まさかあの20世紀最狂の悪魔が、、、と驚きますが、
彼の若いころの純粋な感性については多くの証言が残されています。

さて、今日紹介する本は「ヒトラーの大衆扇動術」です。
(※先の詩は本著の一節 若い頃のヒトラーはどんな人間だったのか より引用)
昭和という時代が終わり、そして平成という時代もまた、終わりを告げよう
としています。そんな中、昭和初期に日本とも深いかかわりあいを持っていたヒトラーが実はとんでもなく非凡な人物だったことが本著では記されています。

たとえば、オリンプックに聖火を導入し、国会意識を植え付け、スポーツとメディアを結び付け盛大な祝典にしたこと。ドイツ近代化のシンボルであるアウトバーン、ドイツが高いブランド力を現在も維持し続ける自動車産業において国民車「フォルクスワーゲン」などもヒトラー政権下で作られたものです。

もちろん、彼が行ったユダヤ人虐殺などは到底許されるはずもなく、あのような悲劇は何があっても繰り返されてはならないことです。
その一方で、彼のもつ強力なリーダーシップから生み出された心理テクニックは今の時代にも十分通用するものであり、様々な場面で応用することが出来ます。

さあそんな・・・黒いカギ十字のドアをそっと開けてみませんか。

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1)本日紹介する書籍
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ヒトラーの大衆扇動術
彩図社 (2010/7/10) 256ページ
許 成準(著)
AmazonURL:https://amzn.to/2JCRTFZ

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2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき?
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・大企業の管理職や一族企業の経営者など、リーダーシップが求められる方
・営業職の方やセミナー講師など、人前で話す機会の多い方
・ヒトラーをユダヤ人を虐殺し、世界大戦を起こした人物としか思ってなかった方
・ヒトラーの意外な一面が見たい方
など、歴史やリーダーシップ、心理学に興味のある方にお奨めです!

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3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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■Reader P.14 人を洗脳するには時間と場所を選択せよ
人は誰でも自由意思で行動しているように見えるが、実は人間なら共通に持っている心の動きがある。例えば、暗い場所で隅から光が差してくれば、人は光の方向に目を向ける。ヒトラーは、そういう人間の本能的な反応を利用したのだ。
彼はサーチライトの光の発する方向になって演説するとか(中略)、このようにすれば、全員の視線が彼に集中する外なかったのである。
また、ヒトラーは演説する時間と場所にも気を配った。(中略) ヒトラーは聴衆の心理的抵抗が最も弱い時間帯、つまり夕暮れ時に演説時間を設定したのだ。午前中は判断力も鋭いが、半日経って夕方になれば、だんだん鈍くなって心の防御を解き、他人が言うことも素直に聞き入れるようになる。

■Reader P.26 怒りの力で扇動せよ
世界でもっとも有名な放送人と言われるラリー・キングはどんな人が上手に話すかについて、以下の4つのタイプを提示している。
1.自分の仕事に情熱を持っている人
2.自分の仕事を面白く説明できる人
3.ユーモアのセンスがある人
4.何か怒っている人
4はちょっと意外だが、ラリー・キングの説明によれば、怒っている人の口からはより強烈で説得力のある言葉が吐き出されるという。(中略)
彼が巧みな話術を持っていたのは、自分の怒りを言葉で論理的に表現する能力があったからだ。怒りは非常に直線的でストレートな感情である。怒りという感情は伝染性も強い。人々に怒りの感情を植え付けるのは、愛を教えるよりもはるかに簡単である。

■Reader P.44 人々の不満を攻略せよ
不幸な人は誘惑しやすい。彼らの不満が何なのかを把握して、それを主要ターゲットとするのだ。ヒトラーは挫折と不幸に陥っていたドイツ国民の心理を利用して、彼らを自分の望みどおりに動かすことが出来たのである。(中略)不幸な人とか生活に不満を持っている人は、その急所を正確に攻めれば、簡単に心を動かすことができる。
ヒトラーもこのようにして、大多数のドイツ国民にアピールし、圧倒的な支持を受けることができたのである。

■Reader P.48 ナチスの宣伝原則
ナチスは次の法則を彼らの宣伝技術の前提としていた。
・人々は小さな嘘より大きな嘘を信じる
・嘘も繰り返せば人々は信じるようになる
(中略)彼らは一番多く聞いたことを真実だと信じる。彼らを騙そうと思えば、いくらでも騙すことができる。必要なら嘘を繰り返して彼らを洗脳することだ。誰かが「宣伝は嘘だ」と主張しても、その言い分を一切認めてはいけない。たとえ話にならない嘘でも、ずっと繰り返していれば、結局は、大勢の人が信じるようになるのだ。

■Reader P.119 シニカルな人々を動かせ
彼は権力を持つまで、数えきれないほど多くの演説をしたが、彼の論旨はいつも同じだった。
「ドイツは国際社会で不当に扱われている。しかしドイツ国民は世の中で一番優れた民族だ。私たちはドイツ民族共同体を中心として、もう一度飛躍し、世界に私たちの力を知らしめなければならない。」
このような論旨は、最悪の景気で生活が苦しくなっていた国民感情にぴったりと合致して、力強い説得力を持つようになった。このような方法でヒトラーは、気力を失っていたドイツ国民を驚くほど簡単に扇動することができたのだ。

■Reader P.137 説得力のエネルギーを最大化せよ
人の心には厚くて硬い壁がある。その壁をあなたのメッセージが通過するには、あなたのメッセージに一種のエネルギーを加えてやらなければならない。
これを「説得力のエネルギー」と呼ぶことにする。説得力のエネルギーには次のような特徴がある。
< 説得力のエネルギーの特徴 >
1. メッセージが単純であればあるほど、説得力のエネルギーは強くなる。
2. 理想から遠ざかれば遠ざかるほど、感情的になればなるほど、説得力のエネルギーは強くなる。
3. 相手のあなたへの好感度が高ければ高いほど、説得力のエネルギーは強くなる。
4. 相手の人生に不安や不満が多ければ多いほど、心の壁は薄くなる。

■Reader P.148 ヒトラーにも暖かい一面があった?
リーダーとして成功するには、目標が良いか悪いかに関係なく、人間としての良い特質を持っていなければならない。大衆に対する仁義、仲間に対する信頼、部下に対する愛情、それらが揃っていなければ、良いことも悪いことも成し遂げることはできない。
人類史上最悪の悪魔、ヒトラーでさえ、周りの人々には善良なリーダーと思われていたのだ。

■Reader P.197 怒りの対象を選定せよ
優れた扇動者は大衆を扇動するために「敵」をよく利用する。英雄にモンスターが必要なように、大衆には共通の敵が必要である。共通点があまりないさまざまな人を団結させる一番簡単な方法は、社会全体の敵、つまり公共の敵(public enemy)を作ることだ。
公共の敵になる最適な対象は、次の条件を満たしていなければならない。
< 公共の敵の条件 >
(1)絶対多数の民衆に被害を与える(ように見える)集団であること
(2)民衆が一致団結すると、充分に勝つことができる相手であること
ナチス時代のドイツのユダヤ人は、この2つの条件をすべて満たしていた。(中略)
この2つの条件の1つでも満たさない集団を敵に設定すると、民衆から同調を得ることは難しい。

■Reader P.214 ヒトラーの人気の秘訣は実質的改善だった
1933年1月、ヒトラーがドイツの首相になった時、ドイツには600万人を超える失業者がいた。しかしわずか3年後の1936年には、失業者はほとんどいなくなった。
また、国民生活は豊かではなかったが、食事の心配がいらないほど経済はよくなった。(中略)彼は、ただ雄弁と扇動だけで大衆から人気を得たわけではなかったのである。

■Reader P.308 悪魔の成功術
では、今まで学んだヒトラーの事例をまとめて、あなたが成功するために役立つ点を上げてみる。特に、なぜ、彼があれほど早く権力を握ることができたのかということに注目したい。
・具体的なビジョンを作りなさい
・他人の前で法螺を吹きなさい
・自分を睡眠しなさい
・自分だけのスタイルを作りなさい
・鏡を見ながら練習しなさい
・芸術的な感情性を育てなさい
・生活を淡白にしなさい
・手段に制約されないようにしよう
・人々の利害関係を利用しよう
・組織の主導権を握ろう
・有能なナンバー2を登用しよう
・実践しよう

※ 「Reader」はソニーの電子書籍リーダーです。
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4)今日の気づき
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(3)の付箋を書いた際に余りに分量が多くなったため、読みにくくなったと感じ、一部カットしました。何が言いたいかというと、それだけこの本には多くのビジネスに関するエッセンスが詰まっているということになります。

もちろん、私が彼を支持することはありません。
ですが、オリンピックの過度なまでの商業化や車社会の発展などを見ると、
彼の残した「遺産」は今の人類になお多くの影響を与えているとも感じました。
天才と悪魔は紙一重。もしかしたら彼が戦争などという蛮行に走らなければ、別の意味で歴史に残る名宰相になっていたのかもしれません。

本書に記された悪魔のテクニック、あなたは活用しますか?

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5)本書の目次
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プロローグ

1.人を洗脳するには時間と場所を選択せよ
2.計算された演出は演説と同様に重要である
3.怒りの力で扇動せよ
4.共通の敵を作れ
5.民衆のプライドを持ち上げろ
6.人々の不満を攻略せよ
7.ナチスの宣伝原則
8.大衆扇動を総合芸術に昇華させよ
9.ロック・フェスティバルのイメージで聴衆を圧倒せよ
10.インチキ宗教の教祖に学べ
11.役者のように演じろ
12.ヒトラー演説の実例【5月演説】
13.若い頃のヒトラーはどんな人間だったのか
14.神秘化戦略
15.メッセージより雰囲気だ
16.目に力を入れろ
17.聴衆の心に火をつけろ
18.シニカルな人々を動かせ
19.芸術をエネルギーの源泉にしろ
20.ヒトラーの大衆扇動術の理論的背景
21.利口な人たちの理性より愚かな人たちの感性に訴えろ
22.説得力のエネルギーを最大化せよ
23.ヒトラーにも暖かい一面があった?
24.孤独をエネルギーの源にせよ
25.英雄ファンタジーを作れ
26.実践の前に大口を叩け
27.イメージ・トレーニングに努力せよ
28.肯定的な嘘をつけ
29.嘘のフィードバックを使え
30.不確実な状況でも確信を持て
31.民衆の怒りを扇動せよ
32.怒りの対象を選定せよ
33.単純明快なビジョンと思想を確立せよ
34.ヒトラーの人気の秘訣は実質的改善だった
35.味方を団結させるアイデンティティーを捜せ
36.若者たちにアピールせよ
37.実際のヒトラーの演説内容
38.メディアを活用せよ
39.ビジュアルが大切だ
40.大衆は愚かである
41.任務型戦術(Mission-type tactics)
42.大衆は感情的にさせ、自分は理性的になれ
43.騙す人と騙される人
44.ヒトラーの没落
45.悪魔の成功術

エピローグ

ヒトラー関連年表
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ヒトラーの大衆扇動術
彩図社 (2010/7/10) 256ページ
許 成準(著)
AmazonURL:https://amzn.to/2JCRTFZ

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