こんにちは。本シェルジュの安藤準です。

異常な暑さの夏が続きましたが、体調は大丈夫でしょうか。

私は最近、「将棋」がマイブームです。きっかけは非常に単純で、漫画「3月のライオン(羽海野チカ著)」を読んでから火がついてしまいた。(ちなみにこちらも非常に名著なのでぜひお勧めしたい)

気になる棋士の対局がある日には、ニコニコ動画や将棋連盟ライブ中継などを見るようになりました。
昔は日曜日の朝NHKでしかプロの対局見れなかったものですが、今はいつでもどこでも見る・指すできる良い時代になったものです。

将棋業界といえば藤井聡太7段の活躍などの話題も多いのですが、昨年度、永世7冠を達成して国民栄誉賞を獲得した羽生義治竜王の偉業もすごいものです。
将棋業界を少し知るとその偉業の「異常さ」を実感します。
なんせ、1つタイトルをとることも偉業なわけですが、7つすべてのタイトルで永世と呼ばれるまで何度も獲得するわけですから。
野球に例えると10年連続3冠王、ゴルフに例えれば、4大メジャーをすべて10回勝つようなものです。

さて、そんな羽生さんですが、今年に入って少々苦戦中。
1992年以降常に複数保持していたタイトルが少しずつ奪われ、残り1つ竜王です。これを失うと約30年ぶりに無冠になるわけです。
これはにわか将棋ファンといえ少々寂しい。応援にも熱がはいります。

羽生さんの将棋を見ているとあることに気づきます。
1局の中で必ずと言っていいほど「思い切った大胆な手」を指すのです。
前例のない駒組みをしたり、序盤なのにズバ!っと角を切ったり。
それで負けると素人の私にはヒヤヒヤして、無理している?勢いあまった?などと考えてしまうのですが、見方によっては、常に新しい世界にチャレンジしているようにも見えるのです。

そんな折、ふと以前の羽生さんの本をもう一度読みたくなりました。
それが今回紹介する本「決断力」です。
10年ほど前の本ですが今でも売れ続けている名著といえるでしょう。
時を経て呼んでみると改めて色々なことが心に沁みました。
きっと自分の立場や経験によって気づく点が違うのでしょうか……、
1つのことを極めた人の本質的な言葉だからこそ、不変的で時が経っても心に沁みるのだと思います。

例えば本にはこんな1文があります。

「積極的にリスクを負うことは未来のリスクを最小限にすると、いつも自分に言い聞かせている」

そうか。なるほど……。
羽生さんはおそらく、今でもこの変わらない気持ちで将棋を指しているのではないか。
本に書いてる一つひとつの言葉が今の将棋の一手一手に重なって見えるようになりました。

長年頂点に立つ人、そして極めてきた人の積み重ねてきた決断力とは何か。
今度の対局も「未来の一手」に注目して見てみたいと思います。

1)本日紹介する書籍

「決断力」
角川新書 (2005/7/1)
羽生義治 (著)

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2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき?

幅広い分野・立場の方にお勧めします。
文章も読みやすく内容もシンプルですので年齢や立場も問いません。
ただし、特に経営者や管理職など日ごろビジネス現場で、様々な事柄を責任を持って決断しなければならない人にとっては、ぐっとくるポイントも多いのではないでしょうか。
決断の基準として参考となる考え方が多い本です。

3)付箋 ~本書からの内容抽出です

■はじめに

 追い込まれるということはどういうことか、でも、 人間は本当に追い詰められた経験をしなければダメだということも分かった。
逆にいうと、追い詰められた場所にこそ、大きな飛躍があるのだ。

■第1章 勝機は誰にもある

七冠をとったあと、米永先生から、釣った鯛をたとえに、
「じっと見ていてもすぐには何も変わりません。しかし、間違いなく腐ります。
どうしてか?時の経過が状況を変えてしまうからです。だから今は最善だけど、それは今の時点であって、今はすでに過去なのです」
と戒められた言葉は、今も胸に深く刻まれている。

■第2章 直感の七割は正しい

「将棋を指すうえで、一番の決め手になるのは何か?」と問われれば、
私は「決断力」と答えるだろう。
~略~
判断のための情報が増えるほど正しい決断ができるかというと、必ずしもそうではない。
私はそこに将棋の面白さの一つがあると思っているが、経験によって考える材料が増えると、
逆に、迷ったり、心配したり、怖いという気持ちが働き、思考の迷路にはまってしまう。

■第3章 勝負に生かす「集中力」

「だからダメなんだよ、君」
対局中に、駒の配置のすべてが自分の都合が悪いときなどに、
こう駒がささやく声が聞こえてくる。
「まだ修業が足りないんだよ」と言われているようだ。
逆に、局面全体から「この一手しかない」ときは、
その駒が光って見えたりすることもある。
~(略)~
深く集中できたときなどに、時として起こるのだ。

■第4章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報

「オールラウンドプレイヤーでありたい」 私が棋士として大事にしていることだ。1つの形にとらわれず、色々な形ができる。
そんな棋士であり続けたいと思っている。~(略)~
そのためにも「自分の得意な形に逃げない」ということを心がけている。
自分の得意な形に持っていくと楽だし、 私も楽をしたいという気持ちはある。
しかし、それを続けてばかりいると飽きがきて世界が狭くなってしまう。

■第5章 才能とは、継続できる情熱である

以前、私は才能は一瞬のきらめきだと思っていた。
しかし今は、十年とか二十年、三十年を同じ姿勢で、同じ情熱を
傾けられることが才能だと思っている。
直感でどういう手が浮かぶとか、ある手をぱっと切り捨てることができるとか、
確かに個人の能力に差はある。しかし、そういうことより継続できる情熱を
持てる人のほうが、長い目で見ると伸びるのだ。

4)今日の気づき

決断とは、経験、直感、論理、読み、様々な要素で総合的に判断するものだが、その判断には常に新しいことに情熱を傾けて持続することが重要である。

5)本書の目次

はじめに
第1章 勝機は誰にもある
第2章 直感の七割は正しい
第3章 勝負に生かす「集中力」
第4章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
第5章 才能とは、継続できる情熱である

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「決断力」
角川新書 (2005/7/1)
羽生義治 (著)