こんにちは、本シェルジュの松林です。

今週は、プロ棋士の羽生善治さんの近著をご紹介します。

将棋に詳しくない方のために一応書きますと、羽生さんは15歳でプロデビュー後、将棋の全7タイトル中6つで、永世称号(連続5期など傑出した実績を持つ棋士に贈られる)という成果を挙げた方です。
40歳を過ぎた今も、第一線で活躍を続けています。

将棋は時代とともに進化しているため、30年近くも第一線で活躍するためには、相当な自己研鑽を重ね、心身の健康維持にも配慮なさっているかと思います。

今回は特に、人生の様々な場面で必要になりそうな「直感力」について、スポットを当てた本となっています。

<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次

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〓 1)今日のオススメの一冊                   〓
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直感力
羽生 善治(著)
PHP新書(2012/10)224ページ

今回の登場人物紹介
■松林:子供の頃からやってはいるが将棋は下手。好きな形は「振飛車の穴熊囲い」。
■りか:将棋は知らないが、百人一首なら全部覚えている小3生。
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りか:パパ、スマホで何やってるの?

松林:これ、将棋だよ。ほら、この前日曜日にテレビでやってたでしょ。

りか:ルールがぜんぜんわかんない。難しそう!

松林:誰かと一緒にやっていればそのうち覚えるよ。君もやってみる?

りか:いい。わたしには百人一首があるから。

松林:そうか~。(ちょっと寂しいと思いつつ、将棋を続ける)

りか:あれ? パパ、いま「あなたの負けです」って見えたけど?

松林:えっ? そう?(と言いつつ、サクッと何手か戻す)

りか:将棋は「待ったなし」なんでしょ。ずるはいけませんよ~。

松林:いや、結果から逆算してどうしてダメなほうへいったのかを確かめるのも、大事なことなんだよ。

りか:ふ~ん、そうなんだ。(疑いの目)

松林:(最近、知恵が付いてやりづらくなってきたぞ…)

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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です              〓
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■第1章 「直感は、磨くことができる」より

直感は、本当に何もないところから湧き出てくるわけではない。考えて考えて、あれこれ模索した経験を前提として蓄積させておかなければならない。また、経験から直感を導き出す訓練を、日常生活の中でも行う必要がある。
もがき、努力したすべての経験をいわば土壌として、そこからある瞬間、生み出されるものが直感なのだ。それがほとんど無意識の中で行われるようになり、どこまでそれを意図的に行っているのか本人にも分からないようになれば、直感が板についてきたといえるだろう。(p23)

カメラで写真を撮るときには、被写体に向かい、全体の絵柄(構図)を考えて、ピントを合わせる。このピントを合わせるような作業が直感の働きではないか。
それと同じように、なんとなくここが中心ではないかとか、ここが急所ではないか、要点ではないかといったことを、それまでの自分自身の経験則や体験、習得してきたことのひとつのあらわれとしてつかむことができたなら、そこには直感が働いている。(p33)

■第2章 「無理をしない」より

あえて、無駄をする-イメージとしては、ジグソーパズルを解くときに、適当にピースを散らしながら、ばらばらに、わざと間違えて置いていくような作業だ。
適当に置いておくと、当然のことながらたいてい間違っていて、これはこのブロックではないとか、このブロックはこれではできあがらないとか、明確な間違いが見えてくる。
その明確な間違いが一定量までいくと、ふっと全体の理解につながる。そこから全体を把握できるようになる。
無駄を排除して高効率を追い求めたとしても、リスクを誘発する可能性がゼロにはならない。むしろ、即効性を追い求めた手法が知らず知らずのうちに大きなリスクを増幅させているケースもある。(p41)

■第3章 「囚われない」より

よく、転機という言葉が使われるが、たしかに自分が予想しなかった何らかの出来事で状況が変わることはある。しかし、転機は自発的な行動の中から生まれてくるもので、その小さなきっかけを意識的にたくさんつくっておけば、訪れる転機の回数も増えるのだと思う。それを活かせるかはまた別の話ではあるのだが、切り替えを早くしたり、行き詰まった状況を打開するには転機のきっかけを作るのが重要だと考えている。(p75)

■第4章 「力を借りる」より

将棋では、対局中、相手の集中力によって自分の集中力が呼び起こされることがある。
対局の場合は勝ち負けだから、相手と同調することを目指しているわけではないのだが、盤面を挟んで向かいあい、交互に駒を動かしていくうちに、自然とそういった現象が起きるのかもしれない。そしてそれは、勝負をおざなりにするものではなく、むしろ、その質を高めるものだ。(p82)

「手を渡す」という言い方がある。自分が指した瞬間に相手に手番が渡れば、その瞬間から、自分は何もできなくなるのだ。自分だけではどうにもならない。つい先ほど指した自分の手が最善のものになるか、手痛い失策となるかは、相手の出方次第ではまったく変わってしまう。
つまりは、他力。将棋は他力によるところが大きいのだ。
それは、武術にも似ている。相手の出方、相手の力を利用するということだ。(p84)

■第5章 「直感と情報」より

過去の知識や情報は、すべて素材だ。それらは、次の新しいものを創造する素材として利用されるためにある。過去の素材であっても、適切に組み合わせれば、新しい料理をつくることができるのだ。
しかし、情報をいくら分類、整理しても、どこが問題かをしっかり捉えないと正しく分析できない。さらにいうなら、山ほどある情報から自分に必要な情報を得るには、「選ぶ」より「いかに捨てるか」、そして「出すか」のほうが重要なのである。
情報メタボにならないためにも、意識的に出力の割合を上げていくことが重要になる。(p116)

いかに自分の個性を出していくか-それは、今日意図したから出せるというものではない。基本を踏まえ、一手ごとの選択をし、時にはリスクを冒して決断するといった経験を重ね、道のりを歩いてのちに、自然とあらわれてくるものである。
そして、自分の意識や意図とは離れたところであらわれるその個性こそが、総合的な自分の「力」なのではないだろうか。(p128)

■第6章 「あきらめること、あきらめないこと」より

最終的にあきらめないというのは、たとえ「その一回」はあきらめても、それを次に活かすことだ。
それでもやはり、あきらめるか、あきらめないかを決断するのは、本当に難しい。
このとき私は、その常態が自分として健全か不健全かで考える。
健全というのは、要するに自然に続けられることだ。そうでないのは、やはり不健全で、無理がある。どこか歪みがある。短い時間のことならいいが、長くは続かない。長丁場では通用しないものだろう。(p138)

■第7章 「自然体の強さ」より

いつも、「自分の得意な形に逃げない」ことを心がけている。
戦型や定跡の重んじられる将棋という勝負の世界。自分の得意な形にもっていけば当然ラクであるし、私にもラクをしたいという気持ちはある。
しかし、それを続けてばかりいると飽きが来て、息苦しくなってしまう。アイデアも限られ、世界が狭くなってしまうのだ。
意識的に、新しいことを試みていかないといけない。(p166)

■第8章 「変えるもの、変えられないもの」より

何事であれ、最終的には自力で考える覚悟がなければならない。
何かのデータや誰かの意見に乗って、多数派だから安心だとか安全だということはない。自分で調べて自分で考え、自分で責任を持って判断する姿勢をもっていないと、自分の望んでいない場所へ流されていく可能性もある。
その先を読む目をもつためには、表面的な出来事を見るのではなく、水面下で起きているさまざまな事象を注視することだ。(p183)

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〓 3)今日の気づき                       〓
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変化が激しく、先を読みづらい時代において、直感は自分が生きていくための指針となるものでしょう。

著者は、直感は決して先天的なものではなく、多様な価値観を持ちながら、自分自身の考えによる判断や決断のトライを繰り返すことによって磨かれるものである、と説きます。

情報収集もよいけれど、どんな人の話であれ、どんなデータであれ、最終的に取捨選択し、行動に活かすのは自分です。

一朝一夕に直感力は得られないと覚悟し、自分に合ったやり方で選択を積み重ねていく、その覚悟こそ、いま自分に求められているのでは?と思いました。

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〓 4)本書の目次                        〓
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第1章 直感は、磨くことができる
第2章 無理をしない
第3章 囚われない
第4章 力を借りる
第5章 直感と情報
第6章 あきらめること、あきらめないこと
第7章 自然体の強さ
第8章 変えるもの、変えられないもの

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直感力
羽生 善治(著)
PHP新書(2012/10)224ページ