こんにちは、本シェルジュの松林です。
今回は、行動経済学の入門的な本をご紹介します。
行動経済学とは、利己的で完全に合理的な「経済人」を前提とせず、実際の人間による実験やその観察によって、人間の選択や行動のパターンを究明しようとする、経済学の一分野です。認知心理学や社会心理学などの理論を援用し、人間が必ずしも経済的に合理的ではない選択や行動をする理由を明らかにしていきます。
この行動経済学は、10年前にダニエル・カーネマン氏がノーベル経済学賞を受賞した頃から、一般にも知られ出し、本書のような入門的書籍も多数出版されるようになりました。
本書は、設例、実験結果(何%の人がどれを選択したか)、その解説という形式で書かれており、読み進めやすくなっています。
複雑な数式等はなく、楽しく読める本ですので、秋の夜長のお供にぜひ!
<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次
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〓 1)今日のオススメの一冊 〓
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経済は感情で動く-はじめての行動経済学
マッテオ・モッテルリーニ(著)、泉 典子(訳)
紀伊國屋書店 (2008/4) 320ページ
今回の登場人物紹介
■松林:ロードバイクマニア。好きな素材メーカーは「東レ」。
■Y子:なんちゃって経済学部卒の主婦。好きなおかずは「男前豆腐」。
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松林:ただいま~。
Y子:おかえり。ねえ見て! 前から欲しかったチュニックが安くなってたから、買っちゃった。9,800円が6,800円って、お買い得でしょ?
松林:えっ。この間は、9,800円と5,800円を見て、「5,800円のほうで十分かな」って言ってたよね?
Y子:(不服そうに)だって、こっちは3割も安くなってたのに、5,800円のほうは値段が変わってなかったのよ。
松林:それはね、数値の暗示にかかったんだよ。行動経済学では、最初に印象に残った数字が、その後の判断に影響を及ぼす現象を「アンカリング効果」と呼んでいる。
Y子:何よ偉そうに! あなただって、「もともと390,000円するカーボンの自転車フレームが、型落ちで半値になったから」って、嬉しそうに発注しちゃってたじゃない? ジョギングシューズだって、パソコンだって、(以下続く…)
松林:・・・・・・
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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です 〓
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■P34より
選択肢が一つなら迷わない。二つになり、三つになり、さらに選択肢が増えるほど迷いは深くなり、はじめは買おうと思ったものも買わずに手ぶらで帰ってきたりする。
選択で目が行きやすいのは「肯定面より否定面」。選択の際には一歩下がり、「プラス面、マイナス面、いま見ているのはどっち?」と自分に問いかけてみよう。
■P46より
ランチメニューで「特上・上・中」とあれば、「上」の注文が多い。一般に三つの選択肢では、真ん中が最もよく売れる。このことから導かれる帰結として、例えば類似商品で4000円と5000円のものがあり、儲けるために5000円のほうを「売りたい」と思えば、6000円の選択肢を付け加えればよい。
■P60より
私たちが現状維持を好む傾向は著しいが、これが有害になることもある。たとえば、すでに多くを投資してしまっているという理由だけで、不利な投資をさらに続けるような場合だ。
この場合はどうして、既に投資していることに制約されてしまうのだろうか。いうまでもなく、失敗することを考えないからだ(「コンコルドの誤謬」、「サンクコストの過大視」)。
■P78より
確率の判断でもう一つ決まって犯しやすいエラーは、メディア攻勢によるものだ。ある出来事が起こる確率の判断は、それが頭に入りやすいか否かに左右される(「利用可能性」という)。
鳥インフルエンザが毎日新聞や画面をにぎわしていたころは、その危険性の度合いや日々の行動に、大いに神経をとがらせていた。ほんとうは、食卓に鶏肉をのせるときより、ミラノ=ヴェネツィア間で車を運転するときのほうが、よっぽど神経を使うべきなのに。
■P213より
私たちがある経験を評価するときには、その経験の全体的な継続時間などはなおざりにされ、苦痛がもっとも強烈だったときと最後の時間によって判断されるということがしばしば起こる(「ピーク・エンドの法則」)。
手短に言えば、その経験をする前は苦痛の少ないほうを選び、経験が終わったあとでは、たとえ長くてもよりよいよい記憶を残しているほうを選ぶのだ。
■P279より
「理性 VS 感情」という対立図式でとらえるのではなく、「感情は理性を支える不可欠なパートナー」であり、「知識だけでは正しいことをするには足りない」という本章の主張をよくかみしめよう。「理性で感情を御す」のではなく、両者をうまくかみ合わせることができるかどうかは、あなた次第である。
楽しみにしていた結婚式が間近に迫ってくると「マリッジ・ブルー」になったり、海外旅行の出立の日が近づくと次第に億劫になる。これも「時間的選考の逆転」である。
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〓 3)今日の気づき 〓
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人間とは、思い込み、錯覚、過去の経験などに左右されやすい、あいまいで非合理的な存在のようですね。
でも、あいまいで非合理的だからこそ、人間には「味」が出てくるのかもしれません。
行動経済学の一端を知ることは、ビジネスやプライベートの様々な場面で、「似たような提案でもより相手に選択されやすい出し方ができる」ことに繋がり、大いに役立ちそうです。
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〓 4)本書の目次 〓
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はじめに
パート1 日常のなかの非合理
1 頭はこう計算する
2 矛盾した結論を出す
3 錯覚、罠、呪い
4 「先入観」という魔物
5 見方によっては得
6 どうして損ばかりしているの
7 お金についての錯覚
パート2 自分自身を知れ
8 リスクの感じ方はこんなに違う
9 リスクとの駆け引き
10 知ってるつもり
11 経験がじゃまをする
12 投資の心理学
13 将来を読む
パート3 判断するのは感情か理性か
14 人が相手の損得ゲーム
15 怒れるニューロン
16 心を読むミラーゲーム
17 理性より感情がものを言う
18 人間的な、あまりにも人間的なわれわれの脳
おしまいに-怠け者の経済学
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経済は感情で動く-はじめての行動経済学
マッテオ・モッテルリーニ(著)、泉 典子(訳)
紀伊國屋書店 (2008/4) 320ページ
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