本シェルジュの村上です。2019年5月1日です。5月が始まりました。

大阪人だからか(?)、割と「いらち」です。以下の本書の引用のようなシーンによく出くわします。

「キャッシュレス元年」と言われた2018年前後にも大きな変化がありました。コンビニやスーパーのレジ前で小銭を出すのに手間取っている人がいる場面は、たった1年前なら平然と待っていられたかもしれません。でもキャッシュレス決済を始めた人はストレスを感じてしまいます。

アマゾン銀行が誕生する日

ムキー! 987円とか全部小銭に払ってんじゃねー、もうせめて千円だして、さっさとレジの方からお釣り受け取れい!・・・それよりキャッシュレスにしようよ!って。

使っていないときは、それほど利便性を感じていなくても、使いだしたら、今までの行動が馬鹿らしくなるくらい便利で快適になる。まさに「顧客体験」の改善ですね。

そういう意味では、銀行って顧客体験が皆無の場所です。(富裕層の資産運用とかは除く) 銀行にワクワクしていくことはまずないですし、振込やら、手続きやらさえめんどくさいのに、その順番を長いあいだ待つことも求められる。会社員時代とかだと、どうしても昼休みにダッシュで銀行へ行ったりするわけで、ますますイライラに拍車がかかります。今では、割と時間的余裕があるので、好きなときに行けるようになりましたし、ほとんどの処理はオンラインで済ませられるのでずいぶん快適になりました。

それでもまだまだ不満は尽きません(^^;

法人口座をネット系の銀行で開いたときはすべてオンラインで済んだのに、某メガバンクで申し込むと、現地に出向いて書類を持っていかされ、後日電話で追加の書類を要求される。おまけにオンライン口座は、いまだに余命の絶えたインターネットエクスプローラーのみという恐るべき、ていたらくぶりです。

日本でも、楽天銀行、ジャパンネット銀行などIT系の銀行が増え、今年もLINE銀行が開行予定で、急速に顧客体験を意識したスムーズが銀行が増えてくると思います。

それでも、アマゾンが銀行を始めたら、結局誰も勝てないのでは・・・なんて思います。

アマゾンは、金融業、すなわち銀行をメインの事業とは考えていないはずです。顧客が便利に何でも簡単に入れられるように仕組みを作る中で、顧客をより便利にするためには金融機能を持とう!という考え方なんじゃないかと思います。

金融機能だけで勝負するのって、特にリテールは先がないでしょうね。(富裕層の個別運用除く)

そういう意味では日本の新しいIT系の銀行は、他に収益源を持った形で金融機能を持っていくわけで、今後もさらに期待したいです。(アマゾンに滅ぼされなければ)

冒頭のスマホ決済も、ずっと決済手数料無料が続くと、事業者にとってもメリットが大きいので急速に導入が進むと思います。

1)本日紹介する書籍

「アマゾン銀行が誕生する日 ~2025年の次世代金融シナリオ」

田中 道昭  (著): 432ページ  日経BP社 (2019/4/18)

https://amzn.to/2GSAaKY

2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき?

特に金融機関の方には全員に読んでほしいです。転職したくなっちゃいますかね。

3)付箋  本書からの内容抽出です


アマゾンがこの無人レジコンビニを展開しているのは、生産性向上や人手不足対策といった企業側の論理からではなく、あくまでも顧客のカスタマーエクスペリエンス向上のためであるということ




ジェフ・ベゾス本人の定義によれば、顧客第1主義とは「聞く」「発明する」「パーソナライズする」の3点から構成されている




キャッシュレス1・0」をクレジッドカードの時代、「キャッシュレス2・0」を電子マネーの時代とするならば、まさに今、隆盛を極めんとするモバイルペイメントの時代は「キャッシュレス3・0」にあたります。そして来たるべき「キャッシュレス4・0」とは、顔認証決済、音声決済、IoT決済の時代になるでしょう。




一方、アマゾンやアリババといった金融ディスラプターは、貸出を行うにあたって担保主義ではなく本質的な信用を見ています。この点が極めて重要です。彼らのプラットフォーム上に、より本質的な個人の信用情報をビッグデータとして蓄積して、それを貸出に活用しているのです。この点において、金融ディスラプターは、既存金融機関よりも、金融の本質に近づいています。




対照的にベゾスは、「DAY2」という言葉を、創業当時の精神を忘れ衰退していく『大企業病』を非難する文脈で用いている




日本の眼鏡ブランド「JINS(ジンズ)」も、アマゾンペイを導入した企業の1社です。同社は2007年にECを開設し、取扱額を伸ばしてきましたが、クレジットカード払い、コンビニ払い、代引き払いという3つの決済方法があり、そのすべてに会員登録が必要でした。メガネの買い替えサイクルは、せいぜい1年単位です。たまにしか購入しないのにわざわざ会員登録をすることがユーザーの負担になり、買い物の途中でページを離脱することが多かったそうです。そこで2016年にアマゾンペイを導入しました。すると、コンバージョン率は 30%も増加したといいます。




三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)では、2016年までの 10 年間で銀行窓口を訪れる客数が約4割減少する一方で、ネットバンキングの利用者は5年間で約4割増加しました




カニバリゼーションに躊躇しないことが理由の1つでしょう。  例えば、キンドルがよい例です。アマゾンは書籍のネット通販から始まった会社ですから、電子書籍というのはそれとカニバリゼーションを起こす可能性がありました。しかしベゾスは、それまで書籍部門を任せていた幹部をデジタル部門に異動させた上で、「君の仕事は、いままでしてきた事業をぶちのめすことだ。物理的な本を売る人間、全員から職を奪うくらいのつもりで取り組んでほしい」と述べた・・・


「アマゾン銀行が誕生する日 ~2025年の次世代金融シナリオ」

4)今日の気づき

金融に価値はない。一方で、金融も含めた総合的なプラットフォームは無限の価値を生む。

結局プラットフォーム事業ができるところしか残らないだろう。

ただし、地域や人密着の個別対応はなくなるわけではない。

LocalなのかGlobalなのか、自分も、事業者も立ち位置を間違えるとうまくいかなくなるのではないか。

5)本書の目次

序章 2025年4月の近未来

第1部 「金融のあるべき姿」を問い直す戦い

第1章 戦いの構図

・もうすぐ到来する世界

・キャッシュレス化の本質と価値観

・覇権を巡る「3つの戦い」

・次世代金融産業のメインプレイヤーたち

第2章 新しい当たり前

・金融がDuplicate(擬似的に創造)できる時代

・銀行の役割と担保主義の限界

・データに基づく本質的な審査

・既存金融機関に残される優位性

第3章 金融実務経験に基づく自戒と問題意識

・リーマンショックの元凶

・「金融とは科学である」の限界

・顧客を忘れたビジネスモデル

・金融は本当に価値を生み出すのか?

第2部 金融ディスラプターの戦略

第4章 アマゾン銀行が誕生する日

・「エブリシング・カンパニー」にとっての金融事業

・「地球上で最も顧客第1主義の会社」

・低価格×豊富な品揃え×迅速な配達

・大胆なビジョンと高速のPDCA

・「DAY1」の精神

・「ワンクリック」から始まった決済の進化と金融事業

・決済を意識させないテクノロジー

・事業者向け融資「アマゾンレンディング」の革新性

・預金機能としての「アマゾンギフトカード」「アマゾンキャッシュ」

・レイヤー構造で考えるアマゾン銀行の詳細予測

第5章 中国を世界最先端のフィンテック大国に変えたアリババ、テンセント

・金融をビジネスモデルの核として生活サービスを展開

・既存金融機関よりも「金融の本質」に近づく

・先鋭化する中国の事業環境をPEST分析する

アリババ

・大国なみの世界第5位の経済圏構築を目論む

・経済圏の中核を担う「アントフィナンシャル」の全貌

・すべての起点となる「アリペイ」

・ワンストップの資産運用サービス「アントフォーチュン」

・個人や企業の信用をスコア化する「ジーマクレジット」

・中小企業を支援する「マイバンク」

・独自の保険商品「相互保」

・アントフィナンシャルを理解する2つのポイント

テンセント

・コミュニケーションとゲームから金融へ展開

・最大の強みは親密で高頻度の顧客接点

・投資・銀行・保険・信用スコアを網羅

・プラットフォーム拡大の好循環

米中分断の時代に顕在化する新しい中国リスク

世界最先端のフィンテック大国、中国の現在

第6章 日本の金融ディスラプター

・プラットフォームを構築して経済圏拡大

楽天:「経済圏の超拡大」の青写真

LINE:顧客接点を巡る戦いで優位に立つ

ヤフー・ソフトバンク連合:話題沸騰「ペイペイ」を立ち上げ

SBI:エクスポネンシャル企業として「破壊」を続ける

第3部 既存金融機関の反撃

第7章 ゴールドマン・サックスとJPモルガンの決断

・リーマンショックとフィンテックの勃興

・大手金融機関の反省と模索

ゴールドマン・サックス:「ベスト&ブライテスト」の選択

JPモルガン:IT投資に年1兆円を投じる

第8章 邦銀のデジタルトランスフォーメーション

・伝統的銀行業務からの脱却

MUFG:「イノベーションのジレンマ」を打ち破る

みずほFG:有力テクノロジー企業との提携を活発化

SMBCグループ:オープンイノベーションの基盤づくりに注力

・日本のメガバンクには何が残るのか?

・メガバンク最大のリスク要因としての海外事業

・絶対に負けられない戦い

第9章 「世界一のデジタルバンク」DBS銀行

・自己破壊によって生まれ変わる

・会社の芯までデジタルに

・最強の都市国家シンガポールの宿命

・「自らを破壊する」ためのアジェンダ

・「ガンダルフ・トランスフォーメーション」

・オープンAPIが創出する「目に見えない銀行」

・デジタルトランスフォーメーションの成果

最終章 「金融4.0」は日本から生み出される

・バーゼル銀行監督委員会による近未来シナリオ

・私が考える2025年の次世代金融シナリオ

・日本の金融機関に対する提言

・次世代金融シナリオの重要ポイント(1)ブロックチェーン

・次世代金融シナリオの重要ポイント(2)新たな価値観

・そもそも「お金」とは何であったのか

・新たな金融システムとしての「金融4.0」

ーーー

「アマゾン銀行が誕生する日 ~2025年の次世代金融シナリオ」

田中 道昭  (著): 432ページ  日経BP社 (2019/4/18)

https://amzn.to/2GSAaKY