こんにちは。
「本シェルジュ」の廣瀬達也です。

コロナ禍が始まってから「経済を回す」というフレーズを聞く機会が増えました。
この場合「モノやサービスを購入すること」「購入することで政策的な縛りで冷え込んでいる業界を助けること」でした。あるいは「購入を我慢できない。でも購入してしまった。自分への言い訳け」な場合もあったかもしれません。いずれにしても、その「経済」を身近に感じたり、大切さを再認識したりする機会になりました。

今回の紹介本は「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」
タイトルはとんでもなく長いのですが、タイトルとおり「経済」を分かりやすく「語ってくれる」(「解説」というより「語ってくれる」が適切な感じがします)本です。
著者はギリシャ経済学者でもあり政治家として財務大臣も務めたこともあるヤニス・バルファキス氏。タイトル通り、父が娘に語る、という形式になっています。


1)本日紹介する書籍

「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」
ダイヤモンド社 (2019/3/7)  248ページ
ヤニス・バルファキス
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4478105510



2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?                

・ 一般的な「経済学」なるものがなかなか理解できない人
・ 人間の歴史、営みを踏まえた現在の社会の仕組みを理解したい人
・ 自分自身の日々の営みと「経済」の繋がりを理解したい人
・ 「経済」について、さらには「資本主義」について、自分自身のアタマで理解したい人
・ そして、「経済」を自分の言葉で説明できるようになりたい人


3)付箋 ~本書からの内容抽出です    

誰もが経済についてのしっかりと意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ。

経済学を教える中でさらに強く感じてきたことがある。それは、「経済モデルが科学的になるほど、目の前にあるリアルな経済から離れていく」ということだ。

人間が農耕の手段を開発していく過程で、社会は劇的に変わっていった。農作物の生産によって、はじめて本物の経済の基本になる要素が生まれた。それが「余剰」だ。

テクノロジーも、最初の生物化学兵器を使った戦争もまた、もとをだどると余剰から生まれている。

経済について語るとはつまり、余剰によって社会に生まれる、債務と通貨と信用と国家の複雑な関係について語ることだ。この複雑な関係をひもといていくと、余剰がなければ国家そのものも存在しなかったことがはっきりとわかってくる。

農作物の余剰によって、文字が生まれ、債務と通貨と国家が生まれた。それらによる経済からテクノロジーと軍隊が生まれた。

だから、アフリカとオーストラリアと南北アメリカがヨーロッパ人の植民地になったのは、もとをたどると地理的な環境が理由だった。DNAや、性格や、知性とは何の関係もない。大陸の形と場所がすべてを決めたとも言える。

人間は、自分が何かを持っていると、それを当然の権利だと思ってしまう。何も持たない人を見ると、同情してそんな状況に怒りを感じるけれど、自分たちの豊かさが、彼らから何かを奪った結果かもしれないとは思わない。

市場社会では、すべての富が借金によって生まれる。過去3世紀のあいだにありえないほどお金持ちになった人たちはみな、借金のおかげでそうなった。市場社会にとっての借金は、キリスト教にとっての地獄と同じだ。近寄りたくはないけど、欠かせないものなのだ。

理性あるまともな社会は、通貨とテクノロジーの管理を民主化するだけでなく、地球の資源と生態系の管理も民主化しなければならないと私は思う。

満足と不満の両方がなければ、本物の幸福を得ることはできない。満足によって奴隷になるよりも、われわれには不満になる自由が必要なのだ。

国家や社会は、よそ者の目で見るほうがその本当の姿がよくわかる。世界のありのままの姿をはっきりと見るために、精神的にはるか遠くの場所まで旅をしてほしい。それによって、君は自由を得る機会を手にできる。


4)今日の気づき                        

著者自身がプロローグで
「この本は、経済学の解説書とは正反対のものにしたいと思った。もし、うまく書けたら、読者の皆さんが経済を身近なものとして感じる助けになるだろう。それに、専門家であるはずの「経済学者」がなぜいつも間違ってしまうのかもわかるようになるはずだ。」
と言っています。そして、実際にゴリゴリと経済を押してくる内容になっていません。かなり「うまく書けて」います。
私自身を振り返ると、試験対策など学問としての「経済学」、ニュースとか新聞を見ているときの「経済」、そして、自分の「お金事情」、それぞれ別ものとして捉えていました。この本を読んだことで、バラバラだった経済とかお金についての根っこというか繋がりが分かりそうなきがしてきました。

著者が影響を受けたものや出典として挙げているものの1つ、ジャレド・ダイヤモンドの『銃・病原菌・鉄』は、私も好きな本なのですが、「あぁ、確かに影響受けてる。それがまた納得感を高めてる」と感じました。さらには映画『マトリックス』、これは著者の経済視点を通した解説を読むことで、「あの映画が言いたかったことはそういうことか」と腹落ちすると同時に、観なおしたくなりました。


5)本書の目次                         

章立て代表的な小見出しの紹介です。

プロローグ 経済学の解説書とは正反対の経済の本
第1章 なぜ、こんなに「格差」があるのか? ――答えは1万年以上前にさかのぼる
第2章 「市場社会」の誕生 ――いくらで売れるか、それがすべて
第3章 「利益」と「借金」のウエディングマーチ ――すべての富が借金から生まれる世界
第4章 「金融」の黒魔術 ――こうしてお金は生まれては消える
第5章 世にも奇妙な「労働力」と「マネー」の世界 ――悪魔が潜むふたつの市場
第6章 恐るべき「機械」の呪い ――自動化するほど苦しくなる矛盾
第7章 誰にも管理されない「新しいお金」 ――収容所のタバコとビットコインのファンタジー
第8章 人は地球の「ウィルス」か ――宿主を破壊する市場のシステム
エピローグ 進む方向を見つける「思考実験」

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「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」
ダイヤモンド社 (2019/3/7)  248ページ
ヤニス・バルファキス
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4478105510
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