本シェルジュの平鹿です。

本日紹介するのは「エンジニアリング組織論への招待」。
エンジニアリングと銘打っていますが、エンジニアしか目にしないとすると実に勿体ない本です。

「不確実と如何に向き合うか」がこの本の通奏低音。
著者の広木氏は、私たちをとりまく様々な問題の根源には、不確実性、つまり「わからない」ことに対する不安があるといいます。そして、その「わからない」ものの発生源は「未来」と「他人」のふたつなのだとします。

そこから、この2つとどのように向き合えば不確実性を減らすことができるのか、自分自身、他人、そして組織と視界を拡げながら論じていきます。

広木氏の真骨頂は、経験主義、仮説思考、全体論、システム思考、アジャイルといった古今東西の思考の枠組みを不確実性への向き合い方という主題で再構成し、一つのフレームワークにまとめ上げている点でしょう。再構成が知的創造であることを再認識させてくれます。

IT系のエンジニアでないと取りつきにくい論説も少なからずありますが、「未来」と「他人」が人生の最大の関心事でもある以上、多くの刺激が得られる本だと思いますよ。

1)本日紹介する書籍

エンジニアリング組織論への招待

広木大地(著)
303ページ、技術評論社(2018/3/8)
https://amzn.to/2MDx0A7

2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき

エンジニアリング業務携わっている人、そして、エンジニアリングという仕事に興味を持っている人

VUCAな世の中にあって今までのモノの見方では何か足りないと感じている人

3)付箋

先が見えないという「不確実性」をどう扱うかを知ることができれば、「不安」は「競争力」に変わります。エンジニアリングに必要な思考は、まさにこの不確実性を力に変えるという点なのです。
本書は、「不確実性に向き合う」というたった1つの原則から、エンジニアリング問題の解決方法を体系的に捉える組織論です。

私たちは、2つの「わからいない」もの、つまり「未来」と「他人」という不確実性の発生源から逃れることはできません。この2つの不確実性に向き合って、それらを少しでも減らしていくことが、唯一物事を「実現」させる手段なのです。

わからないものがあったときに、人は「回避」するか「攻撃」するかを迫られる機能が本能的に埋め込まれています。その結果、正しく事実を見ることができずに認知が歪んでしまいます。

自分自身がどのように本能に囚われているのかを知り、仮説と検証を通じて、未来の不確実性を下げていきながら、同じ目的で働いているはずの人々との間にあるコミュニケーションの不確実性を減らしていく必要があります。

4)今日の気づき

コロナ禍で未来の不確実性は劇的に高まりましたね。さらにその不確実性を高めているのが人々という他人の行動と言説かもしれません。

5)本書の目次

Chapter1思考のリファクタリング
1-1 すべてのバグは、思考の中にある
1-2 不確実性とエンジニアリング
1-3 情報を生み出す考え方
1-4 論理的思考の盲点
1-5 経験主義と仮説思考
1-6 全体論とシステム思考
1-7 人間の不完全さを受け入れる

Chapter2 メンタリングの技術
2-1 メンタリングで相手の思考をリファクタリング
2-2 傾聴・可視化・リフレーミング
2-3 心理的安全性の作り方
2-4 内心ではなく行動に注目する

Chapter3 アジャイルなチームの原理
3-1 アジャイルはチームをメンタリングする技術
3-2 アジャイルの歴史
3-3 アジャイルをめぐる誤解
3-4 アジャイルの格率

Chapter4 学習するチームと不確実性マネジメント
4-1 いかにして不確実性を管理するか
4-2 スケジュール予測と不確実性
4-3 要求の作り方とマーケット不安
4-4 スクラムと不安に向き合う振り返り

Chapter5 技術組織の力学とアーキテクチャ
5-1 何が技術組織の”生産性”を下げるのか
5-2 権限委譲とアカウンタビリティ
5-3 技術的負債の正体
5-4 取引コストと技術組織
5-5 目標管理と透明性
5-6 組織設計とアーキテクチャ

紹介する書籍

エンジニアリング組織論への招待

広木大地(著)
303ページ、技術評論社(2018/3/8)
https://amzn.to/2MDx0A7