本シェルジュの村上知也です。
週末にTVを見ていると、某局でAIについて取り挙げられていました。なんでも、社会データを自局で分析できるAIを開発したとのことです。
その結果、以下の様なことがわかりました。
- 少子化を食い止めるには結婚よりも車を買え
- 病院が減ると健康な人が増える
- ラブホテルが増えると女性が活躍する
- 女子中学生がぽっちゃりしていると、40代男性の離婚率が増える
- 40代ひとりぐらしが日本を滅ぼす
みなさんはこの結果を見てどう思いますか? そうかもなあ・・・というものもあるかもしれませんが、本当にそうかな・・・つながりが見えないなあ・・・と言うものもあるのではないでしょうか。
このテレビ放送に対するネットでの反響をみていると、根拠のない暴論だ!データの関連性があるだけで,因果関係がわかっていない!といった批判コメントが多かったですね。
確かにテレビの内容は、扇動的な印象でした。
ただ、参加されているアナリストの方々は、色々と相関はあるけど因果があるのか、この事象の間に挟まれる別の因子があるのか?といったコメントをされていました。
様々なデータから、数値上相関関係をがあるものを見出してその因果を考えるのは、社会政策を考える上では重要ではないかと思います。
例えば、
病院が減る → 健康な人が増える
は、明らかに違和感があるでしょう。
ただ、実際に取りあげられていた事例は市政が破綻した夕張市でした。当然病院の数は減ります。その結果、病院に行かなくて済む健康づくりをやろう!という活動が盛り上がり、高齢者を中心にみんなで運動に取り組んだりされていました。そうすると、健康な人は増えますよね。
病院が減る → 健康な人が増える はデータから見ると相関関係はあるのでしょう。
一方で因果関係があるとはいいにくいですね。
そうすると、
健康になるための運動をする人が増えた → 健康な人が増えた
これは明確な因果関係があるのではないでしょうか。
政策や施策を考える上でも、データの見た目上だけの相関で判断して、「よし病院を減らそう!」ではなくて、「健康づくり運動を市内で積極的にはやらせよう!」という風に因果を考えて施策を立案してほしいですね。
1)本日紹介する書籍
「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法
中室牧子 (著), 津川友介 (著) (2017/2/17) 208ページ
2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?
冒頭に書いたとおり、相関関係と因果関係を常に意識することが重要です。その違いを把握したいヒトには良い本だと思います。
もう一つ別の例を紹介すると、経営学の最初に方には「ホーソン実験」というものが登場します。
ホーソン実験は、労働者の動機づけに関する古典的研究のことで、シカゴ郊外にあるホーソン工場で行われました。具体的には、照明実験やリレー組みたて実験、面接実験、バンク配線実験が行われました。
そして、照明を暗くすると、作業効率が下がるだろう!と思って、照明を暗くしたら、なんと作業効率が上ったという結果になりました。
これも、この結果を持って、「じゃあ、作業効率をあげるために証明を暗くしよう!」
という取組をするとダメだと思います。
この実験の場合は、従業員が照明が暗くなったことに気づいて、「この会社の経営状態がやばいんじゃないか!それなら頑張って働こう」と思った結果、作業効率が上がりました。
従業員に危機意識をもってもらう → 作業効率があがる
これであれば、因果関係は明確に成り立っているのではないでしょうか。
単に数字上の相関関係によって、施策を立案するのではなく、因果関係を常に考えられるようになるための本です。
3)付箋 本書からの内容抽出です
(Kindle位置No240)
たとえば、「ニコラス・ケイジの年間映画出演本数」と「プールの溺死者数」(図表1-3)、「ミス・アメリカの年齢」と「暖房器具による死亡者数」(図表1-4)や、「商店街における総収入」と「アメリカでのコンピューターサイエンス博士号取得者数」(図表1-5)のあいだには、それぞれ強い相関関係があることが示されている。
(Kindle位置No1095)
女性管理職比率に数値目標を設定する「女性活躍推進法」を成立させた。これによって企業や自治体は、女性管理職比率の数値目標を盛り込んだ行動計画を策定し、公表することが義務付けられることとなった。ある調査によると、女性取締役の数が多い企業は業績がよいように見えるが(図表5-4)、これが因果関係なのか、相関関係なのかについては、慎重に見極める必要がある。
(Kindle位置No1113)
政府によって、女性取締役比率の数値目標が課されたことで、ノルウェーの企業の多くは、経験が浅く、経営者の資質に欠ける女性を無理やり取締役にして急場をしのいだ。このことが企業価値を低下させることにつながったと考えられる。
(Kindle位置No240)
「個人の経験談の寄せ集めはデータではなく、エビデンスでもありません。われわれはきちんとデータを集めており、オバマケアの効果を検証しています。その結果、平均的には、アメリカ国民の保険料はオバマケアによって安くなっていることがわかっています。人によっては残念ながら保険料が上がって損しているかもしれませんが、そういった個々の話に惑わされずに、データを用いて全体像を見るようにしてください」。
4)今日の気づき
相関関係だけではなく、因果関係を見ることは重要だと思います。
ただし、まずは、多面的なデータをたくさんみて、相関関係のチェックを行うことが大事です。
データを見ずして、因果関係にはたどり着きません。
5)本書の目次
第1章 根拠のない通説にだまされないために
「因果推論」の根底にある考えかた
第2章 メタボ健診を受けていれば長生きできるのか
因果推論の理想形「ランダム化比較試験」
第3章 男性医師は女性医師より優れているのか
たまたま起きた実験のような状況を利用する「自然実験」
第4章 認可保育所を増やせば母親は就業するのか
「トレンド」を取り除く「差の差分析」
第5章 テレビを見せると子どもの学力は下がるのか
第3の変数を利用する「操作変数法」
第6章 勉強ができる友人と付き合うと学力は上がるのか
「ジャンプ」に注目する「回帰不連続デザイン」
第7章 偏差値の高い大学に行けば収入は上がるのか
似た者同士の組み合わせを作る「マッチング法」
第8章
ありもののデータを分析しやすい「回帰分析」
「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 」
中室牧子 (著), 津川友介 (著) (2017/2/17) 208ページ
コメントを残す