本シェルジュの平鹿です。

玉子屋というお弁当屋さんの話はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。
きわめてユニークなビジネスモデル、スタンフォード大学MBAコースの「ケーススタディ」に取り上げられたことでも話題になりました。本書は、その玉子屋の社長自らが執筆し2018年に出版された書籍の新書版です。手軽に買えるようになったことから手にとってみたのですが、そのユニークさ、語り口に引き込まれ、一気に読み終えてしまったのでした。

玉子屋のビジネスは、一言で言えば、日替わり弁当の製造販売です。しかし、メニューは日替わり弁当一つ、販売先は東京区内の一部と川崎、横浜圏の契約のある会社のみ、9時までに注文を受けて12時までに配達、その数実にピーク時で7万食、原価率53%、廃棄率0.1%(一般の30分の1)といった中身を知ると、その独自性が際立っていることが解ります。
このビジネスがどのように始まり、どのように磨きがかけられてきたかが経営者の想いとともに語られます。同社のモットーは「三方よし」であり、そのバランスを崩すような成長は目指してこなかった。何より「三方よし」を実現する仕組みと人材の育成に努めてきた結果として今の姿があるのです。
この事業を始めた父親からの事業承継の話も承継の成功例として興味深いものがあります。

新書版のあとがきでは、コロナ禍での売上激減、食中毒事件からの回復にも触れられており、企業が存続することの大変さがひしひしと伝わってきます。 
企業経営者の一方向からの見方ではありますが、企業にとっての成長とは何か、企業は何を目指していく存在なのかを考える上で大変意義のある「ケーススタディ」と感じたのでした。

1)本日紹介する書籍

東京大田区・弁当屋のすごい経営
菅原勇一郎(著)
239ページ、扶桑社新書(2023/1/1)
https://bit.ly/4bFfhPr

2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき

日本の元気な会社に出会いたい人

3)付箋

玉子屋もフランチャイズ化や全国展開のお話などをいただいておりますが、私は玉子屋を「大企業」にするつもりはありません。日本を支えているのは昔も今も中小企業だと思っているし、玉子屋は「輝ける中小企業」でありたいのです。

食数や売り上げを伸ばすのは意図していたことですが、1.5倍とか2倍というような急成長はむしろ望ましくないと考えました。社員の成長と売り上げの伸びは正比例するべきであって、これがズレて売り上げの伸びに対して社員の成長が追い付かなくなると、玉子屋のサービスにお客様が満足できなくなって「三方よし」が崩れるからです。

1を10に増やすことは得意でも、ゼロから1を創り上げるのが苦手な人だっている。玉子屋の事業に照らして言えば、1975年時点で弁当屋を興して、2万食まで食数を伸ばすことは私にはできなかったでしょう。逆に会長が私と同じタイミングで玉子屋を引き継いで7万食まで伸ばせたかと言えば、絶対に無理だと思います。

配達ルートからかなり外れていて、注文数が10個未満の場合はお断りしています。すべてをお引き受けすると、配達効率の悪いところが出てきます。現在のお弁当のクオリティを保てるか、今お取引いただいているお客様へのサービスがそのまま提供できるかを第一に考えて、決めています。

いずれにしても、リターナブルの弁当箱を使って回収しているからこそ見えてくる情報があり、それがメニューの改善や見込み数の精度アップにつながり、その積み重ねが0.1%という廃棄率に結実しているということです。

会社のよしあしは、会社の大きい小さいではない。まず健全経営であること。従業員が満足して働いていること。そして提供するサービスをお客様が喜んで受けていること。おの「三方よし」を満たしている会社が「いい会社」だということが、3年経った時点で見えてきたのです。

距離が近いから社員一人ひとりに目を配って長所を伸ばせる。これは中小企業の強みだと思います。実際、玉子屋は若い人材の長所を伸ばして戦力にしてきました。玉子屋がここまで食数を伸ばすことができたのは、間違いなく彼らのおかげです。

4)今日の気づき

新書版が出版されたのが昨年1月。既に1年半が経過しています。その後の玉子屋はどうなっているのか是非知りたいところです。ホームページを拝見すると食数は4万食程度まで回復したようです。ポストコロナで勤務スタイルも変化する中、頑張ってほしいものです。

5)本書の目次

はじめに
1章 中小企業の事業承継は先代が元気なうちに
2章 数字で語る玉子屋
3章 嫌いだった弁当屋を継いだ理由
4章 社員の心に火を灯せ
5章 玉子屋の未来
おわりに 事業に失敗するこつ十二箇条
新書版によせて