こんにちは、本シェルジュの酒巻秀宜です。
よろしくお願いいたします。
今回は、4大商社の一角を占める伊藤忠商事の、160年にわたる歴史を紹介する本です。関西の繊維商社が、いかにして今日の地位を築いたのか?
キーワード「か・け・ふ」を軸に、その秘密を紐解いていきます。
• 1)本⽇紹介する書籍
本日ご紹介するのは
伊藤忠 財閥系を超えた最強商人
です。
- 著者:野地秩嘉
- 出版社 : ダイヤモンド社
- 発売日 : 2022/12/14
• 2)本書を選んだ理由
伊藤忠商事は、学生の就職人気ランキングで上位の常連です。その秘密は
どこにあるのでしょう?
考えられるのは、2021年3月期に「時価総額」「株価」「純利益」の3冠を達成し、総合商社のトップに躍り出たこと。
世界的に著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が、総合商社株を買い増しており、2023年には来日して総合商社トップと会談したニュースがわだいになりました。
これらが影響しているという推測は成り立ちます。
しかし、それだけではありません。人的資本経営に代表される「人財の重要性」がとかく注目されている昨今、いかにして優秀な人材を獲得し、育て、活用していくべきか?を教えてくれます。
総合商社の仕事はなかなか理解されにくいのですが、
間違いなく言えることは「人がすべてである」ということ。
伊藤忠商事は、4大商社の中で唯一の「非財閥系」で、関西の繊維専門商社からスタートしています。そのため、エネルギー関連や鉄鋼関係の大きな商いになる事業には入り込みにくい。
しかも社員数が少ないため、少数精鋭で生産性を高めないと対抗できない。
これらの要因から、人を大切にし、社員の能力開発、モチベーション向上に積極的になる素地があったと言えます。
そして「か・け・ふ」です。
「か」は稼ぐ、「け」は削る、「ふ」は防ぐです。
稼ぐは、営業して儲けること。
削るは、無駄を省くこと。
防ぐは、不測の事態に備えて日ごろから仕事をチェックしておくこと。
「か」と「け」は、他の商社もやっていることですが、「ふ」を行い常に先を見越して一歩先を行くこと、特定分野への集中を避けること。社員数で劣る伊藤忠商事の特長であり、この道しかなかった。
不測の事態が次々に起こる現在だからこそ、その重要性は増していると言えるでしょう。
どんな⼈が読むべき︖
企業が「人を大切にするとはどういうことか」を知りたい方
商社の仕事について知りたい方
ビジネスのヒントを得たい方
• 3)付箋本書からの内容抽出です
P9
「社長応接室には「か・け・ふ」の3文字を額装して掲げている。「(利益を)稼ぐ、(無駄を)削る、(損を)防ぐ」の頭文字だ。「か・け・ふ」を、彼が信奉する近江商人の商いの原則ととらえ、実践してきた。社員に商いの攻守に目配りをする意識を持たせたことが、伊藤忠を商社のトップに駆け上がらせたと言っていい」
P21ー23
「社員が在職中に万が一の事態になったとしても、残されたご家族に心配がないように徹底した支援を行っていきたいと言うことです。(中略)(教育費を補助するのは)お子さんが何人いようとも全員、大学院を修了するまで」
P236
「昔、商人は虹が出たところに市場を開いた。商人であろうとするならば虹が出たところを絶え注視し、いち早く市場を開く。そして、商品は自分の手の内にあるもの、得意とするものを携えていく」
• 4)今⽇の気づき
「人にやさしい企業」と「人を大切にする企業」
これらは似て非なるものだということ
給与が良くて残業もなく、福利厚生が充実していて働きやすい。いわゆる「ホワイト企業」は離職率が低いことも特徴です。しかし、この「人にやさしい企業」から、離職する人が増えている。それはなぜでしょう?
理由は、「ここにいても成長できない」「他では通用しなくなってしまう」
という危機感にあるようです。ChatGPTの登場や、日本そのものの地盤沈下もあいまって、自分の成長、能力を高めることに敏感な層が多くなっているからではないでしょうか。
そんな考えの方には、総合商社での仕事は、自分を高めるためには有効な
環境です。常に自分を磨き、世の中の動きを敏感に感じ取る嗅覚を持ち、自分で商売のタネを見つけ、自分で動かなければ仕事になりません。
それは決してやさしい環境とは言えないでしょう。しかし「人を大切にする」ことと両立することは可能です。また、福利厚生の充実や残業がないことによってしか「人を大切にする」ことを達成できないわけではない。
企業が「人にやさしい」ということは、厳しさと、望む人には機会を与え、見守り、バックアップする体制があることである。そのことを、この本は教えてくれます。
• 5)本書の⽬次
プロローグ 社員との約束
第一章 伊藤忠の原点
第二章
財閥系商社との違い
第三章 戦争と商社
第四章 総合商社への道
第五章 高度成長期における商社の役割
第六章 自動車ビジネスへの挑戦
第七章 オイルショックの衝撃
第八章 下積み時代の教訓
第九章 バブルの残照
第十章 商社の序列
第十一章 コンビニ事業への参入
第十二章 ITビジネスへの飛躍
第十三章 か・け・ふ
第十四章 あるべき姿とめざすべき姿
第十五章 日本と総合商社
第十六章 CEOの決断
エピローグ 花見と桜と
コメントを残す