みなさん、こんにちは。本シェルジュの園田泰造です。
本日ご紹介する「起死回生ロード」は、いわゆる「ビジネス小説」形式のビジネス書です。三枝匡氏の「V字回復の経営」にタイトルイメージが似ていますが、今回は、中小企業の事業承継に絡めた事業再生について、経営コンサルタントである著者が実際に取り扱った案件を元に考えさせてくれる一冊となっています。
とくに、国内企業の96%以上を占めると言われる「同族経営」企業は、「創業者一族が保有している株式を同族内で受け継ぎ、企業理念や事業の展望などもスムーズに引き継がれるため事業を継続しやすい特長がある」ものの、「同族経営ゆえの課題やトラブルを多く抱えているのも事実」です。
本書は、事業承継後に経営不振に陥ったある中小企業の物語をベースに、全部で6つの観点から、事業承継や事業再生についての道しるべとなってくれる一冊です。
さあ、あなたもぜひご一緒に、苦境に陥っている都内の中小食料品メーカー、株式会社ノノマルの経営を立て直してみませんか?
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1)本日紹介する書籍
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起死回生ロード ~倒産寸前企業の事業再生~
幻冬舎 (2022/10/24) 186ページ
神門 剛 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4344941152/
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2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?
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自社の業績で悩んでいる同族経営の中小企業経営者や、その経営者を回りで支えている方々、経営コンサルタントなどはもちろん、企業経営に関心のあるビジネスピープルや学生の方など、事業承継や事業再生について考えてみたいすべての方へ。
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3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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P3 2代目社長の放漫経営により、倒産必至の状態に追い込まれた小さな食品メーカーと、その会社を建て直すために立ち上がった副社長……。本書は、全国どこにでもあるような同族経営を行う中小企業の事業再生物語です。
P42 先代経営者の右腕だった人が番頭的な役割を果たすこともあるでしょうが、そういう人は後継者よりも先代に近い年齢のはずです。すると事業承継のあとに長い期間勤めることは難しいといえます。理想的には後継者育成にあたって、後継者と同じ年代でナンバー2となれる人材を社内で意識的に育成しておくことです。もちろんそれが兄弟姉妹などでもかまいません。
P64 2代目、3代目など後継経営者が陥りやすい典型的なワナが、売上拡大主義と新機軸主義です。物語では社長のワンマン体質と浪費癖に加えて、このワナに陥ってしまったことがノノマルの危機の要因でした。
P68 企業再建を図る際には、まずは正確な資金繰りを把握していつまでキャッシュがもちそうかを理解することと、それまでにリストラがどの程度実行できるのかを想定することがポイントだということです。
P77 その内容とは、銀行から「リスケ実施の条件」として事業の見直しやリストラを社長に言ってもらうというものだった。弘樹の立場を考えると、修二から言われればプライドもあって反発するが、これが銀行からだと「それなら仕方ない」と言い訳がたつ。つまり弘樹が言い訳できるような状況をつくってあげて、弘樹のメンツを守ってあげようという作戦だった。
P118 そのたびに修二は、それはノノマル全体の利益になるのか、それは客にとってのメリットがあるのかなど、全体最適、顧客利益などの原則論を確認した。
P136 また盲点になりがちなのは商品アイテムや取引先の見直しです。多くの商品アイテムを扱っていたり多くの取引先をもっていたりしている会社では、それらのなかに作れば作るほど赤字、売れば売るほど赤字となる、不採算商品や不採算取引先が混ざっていることがあります。ろういった商品や取引先を見直すことも有効です。
P163 「いよいよ最終手段を採るしかなさそうですね。『スクイーズアウト』と呼ばれる方法です。簡単にいえば、株の単位を変更して弘樹さんが持っている分を端数株式という1株未満の議決権のない株にしてしまうのです。すると株主総会にも参加できませんし、持っていてもほとんど意味のない株になります。そうしてから買い取ればいいのです。」
P174 そのためには、できれば社内の人材に受け継いでほしいと考えた。だが経営者として、ふさわしいと思える人材は思い浮かばなかった。それは、そういう人材を意識的に育成してこなかった自分のせいだ。修二は唇を噛んだ。神島は、本来であれば修二が回復して10年は陣頭指揮を執るのがベストだと前置きしたうえで、第三者承継の道を勧めた。
P184 本書を読まれて弘樹のようになってはいけないと思われたのであれば、ぜひ身近に相談相手を、特に自分にとって耳の痛いことを率直に進言してくれるような相手をおいてください。(中略)それが会社とあなた自身を救う道になるはずです。
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4)今日の気づき
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ビジネス小説というと、池井戸潤氏の「半沢直樹」や「下町ロケット」のような勧善懲悪的な爽快なストーリーを思い浮かべますが、本書でも、確かに社長の弘樹が敵役ではあるものの、倍返しされて叩きのめされるというわけでもありません。逆に、弘樹は適切な事業承継のあるべき形を経なかったばかりに、後継者としても、人としてもある意味被害者として描かれています。
もちろん、一定の報いは受けますが、彼を一人悪者にするのではなく、主人公は家族としても彼に寄り添って、まさに関係者の全体最適を図ることにより、スムーズな事業承継が実現するということなのでしょう。
自分がもし、このような会社の支援をすることになったとしたら、現実を見据える厳しさも大切ですが、なによりもまず、経営者に寄り添うことの大切さを実感したのではないかと思いました。それがひいては会社のため、社員のため、そして社会のためになると思うのです。
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5)本書の目次
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P2 :プロローグ
P16 :第1章 公私混同の放漫経営…暴走する2代目社長
P44 :第2章 この会社は絶対に潰れる…崖っぷちで固まった社内改革の覚悟
P76 :第3章 激化する経営権を巡る骨肉の争い 混乱のなか陣営を整え改革を始動
P96 :第4章 原価管理システムの導入、営業スタイルの転換、人事制度の再構築…事業再生に向け施策を実行
P140 :第5章 同族経営の争いに終止符を打つ勝負の一手 「株式の集中」で企業再生を加速させる
P172 :第6章 数々の試練を乗り越え2年で完全黒字化に成功 さらなる成長のために決断した第三者承継という道P182 :エピローグ
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起死回生ロード ~倒産寸前企業の事業再生~
幻冬舎 (2022/10/24) 186ページ
神門 剛 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4344941152/
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