こんにちは、本シェルジュの堀江賢一です。

今年、新しい令和という時代が幕を明けました。令和の前は当然平成。なのですが、テレビなどのメディアの扱いを見ているとおかしいな、と感じることがよくあるのです。

それは、「昭和のことを語ることは多くても平成を語ることはない」ということです。おそらくバブル崩壊やリーマンショックなどの経済的なマイナスイメージが強いために語られることが少ないのでしょう。

しかし平成は1989年から2019年までの丸30年たしかに存在し、その時代には政治・経済・社会・技術それぞれで様々な出来事があったのです。

本書は、平成という時代を駆け抜けた日本企業を観察することで、「日本企業の日本的経営の経営基盤の堅牢さと地力を、疾風となる出来事がどのようにして育てたのか」を説明する書籍となっています。

本日紹介する書籍

 「平成の経営」
日本経済新聞出版社 (2019/1/25)
  310 ページ 伊丹敬之 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532322596/

本書を選んだ理由〜どんな人が読むべき?

よく平成不況や失われた20年や失われた30年等と言われますが、実際本当はどうだったのか?と考えたのが本書を手にとったきっかけです。

日本的経営とはどのようなものなのか、そして平成という時代に何が起こって日本企業がどのように行動を起こしたのか、その結果どのようなことが起こったのかなど、企業経営を歴史的背景を踏まえて俯瞰して考えたい方におすすめします。

付箋 本書からの内容抽出です

中国の開放政策と経済成長は結局、平成という時代の日本企業に巨大なインパクトを与えていく。その出発点は、平成元年だった。平成の日本企業は、この平成元年をピークとして、そこから一気に激動と長い下り坂を経験することになる。それを象徴するのが、東証の株価が1990年1月の大発会で早くも下げはじめたことで、たった3カ月で1万円近く(率にして25%近く)も下がってしまったのである(Kindle位置136)

日本の実質経済成長率(暦年)はかなりの幅の振動を繰り返していたことが分かる。平成の最高値は1989年の5.4%、平成の最低値は2009年のマイナス5.4%で、じつに11%のふれ幅である。そして、マイナス成長が2年続く時期が2回ある。1998・99年と2008・09年である。日本全体が強い疾風に襲われたとでもいうべき2つの危機の時期で、最初は金融崩壊、つぎはリーマンショックである(Kindle位置154)

2011年以降の八年間、成長率そのものは決して高くはないのだが、リーマンショック後のどん底から日本経済がみごとに回復してきていることがわかる。日本の法人企業全体(上場企業だけでなく、中小企業も含む。ただし、金融業と保険業をのぞく)の売上営業利益率も労働生産性(実質一人当たり付加価値、GDPデフレーターで実質化)も、08年を底としてほとんど一本調子で改善してきているのである。利益率も同じパターンである。とくにリーマンショック後の上昇パターンは、あたかもリーマンショックで日本企業全体がシャキッとしたと思われる(Kindle位置166

今日の気づき

歴史的背景を定量的データを背景にした分析によってえぐり出し、そこから企業がとった行動を鋭くあぶり出していきます。あくまで淡々と、論理的に。論文とはこうあるべきだろうというお手本のような書籍です。

そのなかでも、印象的なのは、平成の間に起こった様々な苦境を乗り越えて日本企業がようやく「シャキッとした」と 筆者が 表現している点です。この主張を肯定的に解釈するのか、反論を唱えるのはかは読者のあなた次第です。

ぜひ手にとって様々な角度から読んでみてください。

本書の目次

序章:疾風に勁草を知る
第1部:平成30年間の日本企業
・第1章:バブル崩壊、そして金融崩壊
・第2章:産業迷走、つかの間の成長、そしてリーマンショック
・第3章:どん底からの回復第2部:世界・技術・ヒト・カネの30年
・第4章:アメリカと中国のはざまで
・第5章:複雑性産業がより中核に
・第6章:変わる看板、変わらぬ基盤
・第7章:積み上がる自己資本、増えない投資
・第8章:トヨタと日産・終章:日本の原理と神の隠す手を信じて

「平成の経営」
日本経済新聞出版社 (2019/1/25)  310 ページ
伊丹敬之 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4532322596/