こんにちは、本シェルジュのホリケンです。 インクルーシブな人生100年を生き抜くのに役立つ本をご紹介していきます。
わたくしホリケン、この4月から社会福祉の国家資格を取得するべく通信大学で学んでいます。 さて、みなさんは障がいを持った方々の賃金がいくらか、考えたことはありますか?
平均すると月給1万円です。
驚いた方も多いと思いますが、これが現在の日本の実情なのです。障害者の自立と言葉で言うのは簡単ですが、その実現のためには多くのハードルを乗り越えなければなりません。
本書はこの問題に対する一つの解答を示したものです。
本日紹介する書籍
福祉を変える経営 -障害者の月給1万円からの脱出−
日経BP社 (2013/9/20)164ページ ※Kindle版
書籍版は 2003/10/14 224ページ
小倉昌男(著)
https://amzn.to/38lC0os
本書を選んだ理由〜どんな人が読むべき?〜
私が社会福祉に興味を持つようになったきっかけは、現在働いている企業でのダイバーシティ&インクルージョンの取り組みに参加したことです。
女性活躍、障がい者支援、LGBTQ+など、さまざまな社会課題が全世界をまたがるチームで議論され、各国でさまざまな取り組みが行われています。中でも、障がいを持った方の働き方に関するタスクフォースは日本オフィスの中でも最もアクティブな活動となっています。
昨年行われた東京パラリンピックでは、全世界の15%の人は何らかの障がいを持っていることを広く世界に示しました。障がいを持った方もそうでない方も同じように生きられる社会の実現が求められている現在、今まで目が向けられてこなかった現実にきちんと向き合って問題を解決していく必要があります。
今までダイバーシティ&インクルージョンに関して全く考えたことがなかった方にこそ読んでいただきたい一冊です。
付箋 本書からの内容抽出です(Kindleのページ数です)
日本の国は障害者にとって住み難い国である(中略)障害者の自立とは何か?具体的には、障害者が働いて収入を得て生活できるようになることではないか?(P.2)
ヤマト福祉財団は、障害者の自立を促すためのさまざまな援助を行うために1993年に設立しました。(中略)主催業務のひとつは経営セミナーの開催です。毎年6月から9月にかけて、障害者の就労施設である民間の共同作業所の運営者数百人を対象に北海道から九州まで全国7~12カ所で経営セミナーを開き、共同作業所の経営改善を指導しています。現在月給一万円以下の低賃金にあえいでいる障害者の所得を上げ、金銭的自立を促すのがセミナーの狙いです(P.12)
「障害者の自立」とは、簡単にいうと、働いて、収入を得て、生活することだ――。私はそう定義してみました。なぜかというと、働かなければ収入が得られない。収入がなければ生活できない。だから自立というのは、まず働くことから始まるわけです。(P.16)
「いったい、障害者の方たちにいくらくらいの賃金を払っているんですか?」その答えは、「平均して月給一万円くらいですね」。驚きました。今どき、たった一万円の月給で月曜日から金曜日まで毎日朝から晩まで働いている人たちがいる。しかも、その人たちは障害者なのです。どう考えても、自立とはほど遠い現実でした。(P.19)
私から見て、共同作業所の方々に決定的に欠けているものがあったのです。それは、作業所を「経営する」という概念でした。自分たちの仕事をちゃんと事業化し、障害者にいきいきと働いてもらい、おカネを儲け、障害者が自立するに足る給料を支払えるよう努力する――。そんな経営の視点が、残念ながら共同作業所にはまったくなかったのです(P.20)
大半の共同作業所の仕事は次の二つの条件を満たす仕事がほとんどでした。ひとつ、タダもしくは非常に安く原材料が手に入る仕事であること。もうひとつ、一番能力的に劣った障害者の人でもできる単純作業であること。モノをつくったらそれでおしまい。あとはせいぜいが身内に買ってもらったり、チャリティ・バザーに出店するくらい。これでは商売になりません。共同作業所の方々がこうした発想にとどまっている限り、障害者の自立はとても無理でしょう。(p.29)
ノーマライゼーションというのは、障害がある人もない人も同じように生活できる、権利も義務も同じように持って生活できるということです。それがノーマライゼーションの理念です。けれども残念ながら、日本ではいまだにノーマライゼーションはかけ声だけです。ちっともすすんでいません。(p.32)
障害者の自立を促して真のノーマライゼーションを日本にもたらすには、手始めに共同作業所の経営を立て直し、障害者の月給が一万円という状況を打破してもらうことが第一だろう、ならば、私の経営者として積んできた経験とノウハウを作業所の方々に伝授する機会をつくってみよう、と。(P.40)
経営というのは企業だけに必要なものではありません。病院も学校も本来は「経営」が必要です。そしてもちろん、障害者のための共同作業所にも経営が欠かせない。経営がなければ、障害者に十分な給料を支払う事業を打ち立てることなどできません。(中略)セミナーで経済と経営について順を追って説くことで、これまで福祉に関して抱いていた思い込みから作業所の方々が解き放たれ、「作業所をいかに経営するか」という問題意識を持ってもらうよう考え方を変えてもらうわけです。(P.44)
生産力アップコースは、運営や法律などの抽象的な話はほとんどせず、具体的なビジネスの紹介をすることで作業所の生産力をアップさせるのが目的です。(p.47)
運営力アップコースは従来通り、日本全国数カ所をキャラバンで回ります。こちらでも一日目は私の経営学講座をやりますが、その次は国の障害者政策はどう変わりつつあるかを専門家に解説していただきます。(p.48)
そしてセミナーの最後のテーマは「共同作業所からの脱出」です。 これはある意味で究極の発想の転換を、他ならぬ作業所の方々にお願いする話です。私個人は、障害者が共同作業所で一生働くというのはとんでもない話だと思っています。早く作業所を「卒業」して、一般企業など「普通の職場」で働くのが究極のノーマライゼーションではないのかと思っています(P.49)
障害者雇用促進法では、常用労働者数の一・八%の障害者を雇わなければいけないとある。ただし罰則がないため、現実の企業の障害者雇用率は2001年時点で1.49%で、法定基準を満たしていない。(P.61)
すなわち、障害者は健常者に比べ労働能力が低い、よって労働時間も短い。そこで、障害者に仕事をさせるにあたっては労働時間を短くし、労働負担も軽くし、その代わり低賃金で我慢してもらう――これが福祉的就労というわけです。そして、それが月給一万円以下の低賃金に甘んじている共同作業所での障害者の方たちの就労実態につながっているのです。こんな馬鹿な話はありません。(P.67)
まず、福祉的経済というものは存在しません。日本にあるのは資本主義――市場経済だけです。売り手と買い手があって商売をする。これが基本です。(中略)一般市場で必要なのは、お涙ちょうだいではなく、消費者である買い手が欲しいものをつくることなのです。(P.69)
市場を通して買いたいという消費者の気持ちが動かないとモノは売れないわけです。モノが売れなければ、結局高い給料は払えない。ですから、共同作業所も、福祉全体も、この市場経済の仕組みを理解して、自分たちも実際の市場で売れるモノ、売れるサービスをつくる努力をしなければなりません。(P.77)
売れるモノをつくる」ことはとても大事なことだけど、「売れる仕組みを考える」ことはもっと大事なことなのです。(P.80)
そして、みなさんが障害者の方々と儲かる仕組みを考えてつくり、実行すること。それが経営なのです。(P.81)
では、どうすれば、売れる仕組みがつくれるのでしょうか。そのためにはまず、お客さんが喜ぶサービスはなんだろうか、お客さんが喜ぶ商品の付加価値とはなんだろうか、ということを徹底的に考え抜くことが大切です。(P.100)
障害者の方たちにとってみても、給料が上がれば、生活にも目標が生まれて、かならず次の要求が出てきます。今度は、自分で稼いだおカネで、旅行に行きたい、お酒が飲みたい、習い事をしたい、という具合に。これこそがノーマライゼーションではないでしょうか。(P.124)
今日の気づき
「日本の障がい者の平均給与は月額一万円」
これが何よりもの衝撃でした。
そして、なぜそうなってしまっているのか、という背景や構造を丁寧にわかりやすく解説してくれている本書は、多様な人材を活かす経営が求められている今日において、特に経営に携わる人達に是非お読みいただきたい一冊です。
私たち中小企業診断士は、とかく戦略やマーケティングに目が行きがちです。しかし社会福祉法人も立派な法人であり、ご支援するクライアントになりうるのです。
また、社会福祉という観点からの著書は多いものの、経営観点から社会福祉に切り込んでいる書籍は少なく、多くの事例も含めて、日本そのものの課題である生産性向上にも大変良い気づきを与えてくれる書籍でした。
事あるごとに読み返したいと思います。
本書の目次
- まえがき
- 第1章 障害者の自立を目指そう!私の福祉改革
- 第2章 福祉を変える経済学
- 第3章 福祉を変える経営学
- 第4章 先進共同作業所の経営に学ぼう
- あとがき
福祉を変える経営 -障害者の月給1万円からの脱出−
日経BP社 (2003/10/14)164ページ
小倉昌男(著)
https://amzn.to/38lC0os
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