「社会学、やるじゃん」


こんにちは。
「本シェルジュ」の廣瀬達也です。

私は週末に大学院へ通っています。いわゆる社会人学生です。「ビジネススキルを上げるためにIT、会計、マネジメントなどを学ぶ」というような今流行りのカッコいい「リスキリング」とはちょっと違います。「地域資源マネジメント研究科」というところで、主に「民俗社会学」領域を学んでいます。知りたいから学んでいる、という完全に趣味です。

そんな学生の私が課題本を読んでいて思わずつぶやいたのが冒頭のセリフでした。

今回のご紹介するのは僕が民俗社会学領域の学ぶ中で指導教授から示された課題本、
「村の社会学-日本の伝統的な人づきあいに学ぶ」
です。


1)本日紹介する書籍               

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「村の社会学-日本の伝統的な人づきあいに学ぶ」
筑摩書房 (2023/2/9)  208ページ
鳥越 皓之
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4480075364/
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2)選んだ理由・どんな人が読むべき?               

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・ 「地域」との関わりのある活動に興味をもっている人
・ 都市部から地域への移住を考えている人
・ 経済学的、経営学的な理論や数字で解決できない課題に取り組んでいる人
・ 人の関わりが重視されてくる中小企業の支援をしている人━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


3)付箋 ~本書からの内容抽出です   

進みゆく都市化のなかで村は軽んじられる傾向にあります。もちろん村には伝統的な規範が多く、現代に適合できない側面を持っていることは否定できません。ただ、昨今、プラスの面よりマイナスの面が強調されがちで残念なことです。

江戸時代においては、この村が年貢の支払いの単位でした。個人は個別の家ではありません。村は村高という年貢高を割り当てられており、その高に見合った年貢を村内の家々から集めました。

どちらともいえるということは、「強制」とか「ボランティア」という用語を使用すること自体がそもそも適切でないということです。では、このどちらでもいえるし、どちらともいえない実態に対して、どういう用語が適切でしょうか。私たちは日本のあちらこちらの農漁村で伝統的に使われてきた「つとめ」という用語を使いたいと思います。

「田舎の人は素朴で親切ね」という都会の人たちの「親切ね」というのは、都会の人が性根の悪い人たちばかりで、田舎の人は性根の良い人たちばかりという人間の性格の問題ではありません。社会的な価値観(規範)の問題です。

村の人びとは単に農産物などの生産活動をしているだけではなくて、そこで暮らしを営んでいます。経済学的にいえば「消費生活」をしているともいえますが、社会学的にたんに「生活」しているといっておきましょう。

エゴイズムは個人からはじまり、村においては個々の家がエゴイズムの主体となって現れます。その権利主張は、所有権や占有権、利用権を論拠とします。そして村では法令と異なり、所有権でもその所有権の程度に強弱があるために、異議が唱えられたり、反論があったりすると、丁寧な話し合いがもたれることになります。

また、それとは別に、村では明文化されていないルールがあります。それは弱者の問題を個別の家だけでは十分に解決できないことがしばしば生じるからです。

田舎を車などで通りすぎたときに、人家の少ない田んぼのなかに中学校が立っているのを見かけたことがないでしょうか。その李勇はほとんど例外なく綱引きの結果です。

他人の非をあばくことは容易だが、あばいた後は、村の中の人間関係は非をもつ人が悔悟するだけでは解決しきれない問題が含まれている。

村は個人の自由を束縛するものであるから、よくないものとして消滅させるべきであるという考え方があります。これを村の意図的消滅論と呼びましょう。

意図的な消滅論以外にもうひとつ、村は自然消滅をしつつあるのだという解釈が成り立ちます。それは、近代化が進めば進むほど村は消滅していかざるを得ないものであるという考え方です。この考え方の主要な論拠は、村は封建的であるからというものです。


4)今日の気づき                      

過疎化対策の1つと、コンパクトシティなどの考え方が提唱されていたことがありますね。理屈としては有効な対策と思います。しかし、実際に「過疎化進行地域の人びとが移動するか」というと移動するケースは多くありません。人びとにはそれぞれの暮らしがあり、その暮らしを変えることは簡単ではないからです。
経営学とか経済学的な切り口で「有効な対策」も地域で実践されるのは難しいです。
ときに膝を折って相手と目線を合わせる。そして、ゆっくりと丁寧に話を聞く。社会学はそんな姿勢を持っているように感じます。

今回の本に描かれている「村」、都市部に暮らしている人からみると「それっていつの時代?」と感じる面があるかもしれません。確かに、表面的には現在はあまり見えてこない風景が描かれている感はあります。
(しかし、現在地方在住の僕にとっては)令和の今も、「一枚めくれば」、さらには「一歩踏み込めば」、接することになりそうな地域の姿です。そして、そんな地域の「人づきあい」のベースにはこの本に描かれていることたちの理解がとても大切に思えました。


 5)本書の目次                        

章立て代表的な小見出しの紹介です。
第1章 村の知恵とコミュニティ
 1 村の知恵
 2 コミュニティの構造
第2章   村とローカルルール
 1 村とは何か
 2 ローカルルール
 3 生活組織としてのコミュニティ
第3章   村のしくみ
 1 村のタテの構造と関係
 2 村のヨコの関係
 3 人間と自然
 4 村での仕事と権利
第4章   村のはたらき
 1 交換不可能性とエゴイズム
 2 弱者救済
 3 災害対応
 4 村の教育-平凡教育
第5章   村における人間関係
 1 あいさつ
 2 不公平を嫌う
 3 話し合いと意思決定
第6章   村の評価と村の思想
 1 村の意図的消滅論
 2 村の自然消滅論
 3 Society 5.0と異なる方向へ


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「村の社会学-日本の伝統的な人づきあいに学ぶ」
筑摩書房 (2023/2/9)  208ページ
鳥越 皓之
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4480075364/
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