本シェルジュの平鹿です。

本日紹介するのは「ニュータイプの時代」。
著者の山口周氏は哲学を学んだあとコンサルタントとして活躍したという経歴の持ち主。「武器になる哲学」という著書もあります。

この本では、「ニュータイプ」と「オールドタイプ」が対比されます。A対Bという二元論は物事を単純化しすぎる危険をはらみますが、本書では実に本質的な議論が展開されます。

現代では「モノ」と「問題」の希少性が逆転してしまったという基本認識が示され、それに適応できた人の行動様式を「ニュータイプ」として特徴づけます。本書が本質的なのは、このキーワードから現代の様々な課題に演繹できる懐の深さにあるのでしょう。

山口氏の著作は、どれも「はじめに」が秀逸です。そこで問題が定められ、勝負が決まったという印象を受けます。本書は、その典型。

そして、山口氏はシニア世代を「オールドタイプ」としているわけではありません。古い価値観から自由になれば世代を問わず「ニュータイプ」になれると言っています。本書は提言の書でもあります。

「『正解』はコモディティ化している」「解決能力が過剰な時代」などはっとする鋭い切れ味の文章が続きます。現代を見る視点と行動指針を提供する一冊となるでしょう。

1)本日紹介する書籍

ニュータイプの時代
新時代を生き抜く24の思考・行動様式

山口周(著)
351ページ、ダイヤモンド社(2019/7/3)
https://amzn.to/3tn4KVv

2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき

「ニュータイプ」に覚醒しかけている人!
「ニュータイプ」の必要性に気づいている人は、きっと皆、覚醒しかけている人なんです!

3)付箋

世の中の要請に対して相対的に希少な能力や資質は「優秀さ」として高く評価され、逆に過剰な資質や能力は「凡庸さ」として叩き売られる、ということです。

したがって「モノ」が過剰になる一方で、「問題」が希少になっている現在の社会において 求められる人材要件が、その真逆である「モノ」が希少で「問題」が過剰であった、かつて の社会において求められる人材要件と大きく異なるのは当たり前のことなのです。

しかし、人間のマインドはとても保守的なので、多くの人は相も変わらず、偏差値に代表さ れる「正解を出す能力」を、その人の「優秀さ」を示すモノサシだと信じていまだに崇め続けています。この認識のネジレが、社会のさまざまな局面で悲劇と混乱を巻き起こしてい ます。

つまり、今の私たちを取り巻いている「システムの大きな問題」を解決するには、システム そのものをリプレースするのではなく、システムそのものを微修正しながら、その中に組み込まれる人間の思考・行動様式を大きく切り替えることが必要だということです。

このような時代になれば、ある瞬間において環境への「最適化の度合い」はどうでもよくなり、むしろ変化していく環境に対して、どれだけしなやかに適合できるかという「柔軟性の 度合い」の方が重要になってきます。

このような時代にあって、ひたすらに金銭やモノを褒美としてチラつかせながら、意味を 与えることもなく他人をコントロールしようとするのは典型的なオールドタイプのマネジメントパラダイムであり、今後は有効に機能しません。

マイケル・ポーターの競争戦略論においては「コストリーダーシップ」と「差別化」の2つ が戦略の基本アプローチであり、これらを両立しようとすれば中途半端な状況に陥って競争力を失うとされ、明確に「悪手である」と指摘されています。しかし今日、このトレードオフは性質を変えつつあります。

ところが、現在の日本企業では、この関係が逆転しているケースがほとんどです。つまり「何を打ち出すか=WHAT」をビッグデータなどに代表される数値が決め、「どのように打ち出すか=HOW」を人間が考えている、というトンチンカンな構図です。これでは訴求力のある切っ先の鋭いコンセプトが出てこないのは当たり前のことです。

「役に立つ」市場では勝者総取りが発生する一方で、「意味がある」市場では多様性が生まれることになります。これを身近でわかりやすく示しているのがコンビニエンスストア(以下CVS)の棚です。ハサミやホチキスなどの文房具はほとんど1種類しか置かれていませ ん。しかし、それで顧客が文句を言うことはありません。一方で、そのように厳しい棚管理 がなされているCVSにおいて、1品目で200種類以上取り揃えられている商品がある のですが、なんだかわかりますか?タバコです。

4)今日の気づき

「ニュータイプ」といえば、ガンダムですよね。
テレビアニメの「機動戦士ガンダム」が放映されたのは1979年。なんと43年前。
その時、10歳だった人は53歳。企業のマネジメントに関わる人も多いでしょう。山口氏はその人たちに届くように書名を考えたんでしょうね。

5)本書の目次

はじめに
第1章人材をアップデートする6つのメガトレンド
第2章ニュータイプの価値創造 問題解決から課題設定へ
第3章ニュータイプの競争戦略 「役にたつ」から「意味がある」へ
第4章ニュータイプの思考法 論理偏重から論理+直観の最適ミックスへ
第5章ニュータイプのワークスタイル ローモビリティからハイモビリティへ
第6章ニュータイプのキャリア戦略 予定調和から偶有性へ
第7章ニュータイプの学習力 ストック型学習からフロー型学習へ
第8章ニュータイプの組織マネジメント 権力型マネジメントから対話型マネジメントへ
おわりに