こんにちは。本シェルジュの安藤準です。

いよいよ冬に突入。
世間ではクリスマスソングやら正月飾りなど出始めましたね。
さて、そんな折、年末商戦でも覗くか~と。
家電量販店へ行くと家電もずいぶん様変わりしたことに気づきます。
以前よりメーカーが増えたのです。
中でも特に目を引くのがバルミューダ。
2003年に設立された新鋭の会社ですがそのシンプルなデザインや機能は
なかなか魅力的な個性を放ちます。
一方で、往年の有名な大手家電メーカーはというと……
本質的な機能以外の高機能を主張するイマヒトツな製品が並びます。
やめれない機能、前例踏襲・既存延長。
つい、う~んと腕を組んでしまいます。
いやいや。どうしたものか。
もちろん、大手電機メーカーにとって家電事業はメインでは
なくなりつつあるものの、
その姿はまるで会社の状態を象徴しているようにも見えます。

今回の本は日本の電機産業がなぜここまで落ちたのか。
鋭く分析しかつ現実的に切り込んだ本といえます。

私自身も大手電機メーカー出身ですが、
ひとつひとつの意見には的を射ているように感じました。
また、単なる悲観論・批評論ではなく、
経済の流れをマクロで捉えた現実的な解決策も提示されています。
なるほど。確かに書いてあることは電機産業だけでなく、
日本のすべての企業にいえるヒントといえそうです。

著者の佐藤文昭さんは日本ビクター出身でその後、
外部アドバイザーとしてジャパンディスプレイの設立に貢献した人で、
中からも外からも電機産業を見つめてきた人です。
ぜひ、新しい年に向けてこれからの電機産業、
ひいては未来の企業スタイルとして参考に読んではいかがでしょうか?

1)本日紹介する書籍

「日本の電機産業 失敗の教訓」
朝日新聞出版 (2017/3/7)
佐藤 文昭 (著)
AmazonURL:http://www.amazon.co.jp/dp/4023313505

 

2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき?

まず会社や大手電機メーカーに関連する人には絶対的にお勧めします。
会社の方針や考え方に大いなるヒントがあります。
そして、類似したケースとして日本の企業で大企業病に近い会社に関連する方にも
参考になると思います。
ひいては日本企業の強みと弱み、そして時代の流れをマクロで捉えた活用方法に
関心にある人ならどなたでもお勧めします。

 

3)付箋 ~本書からの内容抽出です

■はじめに
電機産業の次は、自動車産業、いや、日本全体かもしれない。
本書を貫くのは、10年後、20年後を見据えたそんな危機感である。

■第1章 危機感のない企業に未来はない

○大手の総合電気メーカーでもみんな、海外にチャレンジしなければならないという気持ちはあった。
ただし、どの危機感が低いというか、ある意味、何でもちょっと大手のほうが中途半端な感じになってしまう。
つまり、決断が遅いのだ。

■第2章 起業家精神を失ったサラリーマン集団

○組織が大きくなると、縦の階層が増え、横のセクションも増大していくため、
各担当者は全体が見えにくくなり視野が狭くなる。
だから、組織全体のことを考えたうえで、業務を最適化できる人が少なくなる。
仕事は次第に日常業務に追われる形へと変化(ルーティン化)していくので
物事を見る視点がどうしても短期的になりがちで長期的な視点がなくなってくる。

■第3章 ジャパンディスプレイ誕生を可能にしたリスクマネー

○日立、東芝、ソニーという親会社との交渉も大変な作業であったが、
アップルなどといったユーザーが求める高精細な中小型駅長ディスプレイをつくるための
設備投資を行う資金がなくては、親会社に対し事業統合の提案すらできなかっただろう。
その点で、ジャパンディスプレイは運にも恵まれていたのかもしれない。

■第4章 コモディティ化への対処法
○専業メーカーをつくる業界再編が、最終的な結果であってはいけない。
目的は世界で戦っていくことである。
新たな企業をつくって、それで終わりではなく、10年先、20年先の未来をイメージしながら、
絶えず変化し続けていかなければならないということだ。

■第5章 事業特性に合わせて経営のスタイルを変える

○日本の総合電機メーカーには、製品ライフサイクルの長短、リスク、リターンの大小、
資本・労働集約の大小、成長、成熟のステージ、技術進歩の遅速、市場の変化の遅速、
さらには製造・非製造など性質のまったく異な事業があまりにも数多く集められすぎなのだ。

4)今日の気づき

変化が激しい業界では規模の大きい総合力は足かせになることに納得感がありました。
また、専業メーカーの道はこれからの有力な企業スタイルといえます。
さらには日本型の経営に合う産業、材料や部品メーカーのポイントは、
日本企業の経営スタイルのヒントとなりそうです。

5)本書の目次

はじめに
第1章 日本に製造業を残す方法
第2章 日本の電機メーカー連敗の構図
第3章 世界と戦える企業を生んだ業界再編
第4章 日本企業を襲う「破壊的イノベーション」
第5章 日本企業に突きつけられた課題

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「日本の電機産業 失敗の教訓」
朝日新聞出版 (2017/3/7)
佐藤 文昭 (著)
AmazonURL:http://www.amazon.co.jp/dp/4023313505