こんにちは。
「本シェルジュ」の廣瀬達也です。

「出版って、なんだかんだ言って『東京の地場産業』なんですよ」
私が数年前に大阪開催されていたライター関連セミナーを受講したとき関西の出版社の方から聞いたこの言葉は今でも覚えています。そして、確かにそうかもな…と納得しました。
そんな中でキラリとした本(「マイノリティデザイン」、(この本シェルジュでも紹介された)「拝啓 人事部長殿」など)を世におくり、存在感を示している「非・東京」の出版社が兵庫県明石市に本社を置く「ライツ社」さん。

今回の紹介本は「ライツ社」さんから出版されている「認知症世界の歩き方」です。
症状を医療従事者や介護者視点の難しい言葉で説明した本ではありません。「とにかく、『本人』の視点で認知症を知ることのできる本を目指しました」、というはじめにから始まる本です。「ご本人の視点からその困りごとがまとめられた情報」が不足していることが原因で認知症に関する知識はイメージに偏りが生まれ、ご本人と周りの方の生きづらさにつながっている。そのすれ違いを少しでも減らしたい。そんな思いで作られています。


1)本日紹介する書籍

「認知症世界の歩き方」
ライツ社 (2021/9/15)  264ページ
筧裕介
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4909044329


2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?              

・ 身近に認知症の方、症状はなくても高齢の方がいる人
・ 認知症の方々がどのように感じ、困っているのかを理解したい人
・ 「少し先の未来の自分」について心の備えをしておきたい人

3)付箋 ~本書からの内容抽出です    

認知症とは「認知機能が働きにくくなったために、生活上の問題が生じ、暮らしづらくなっている状態」のこと。


たとえば「お風呂を嫌がる」のはどうしてなのか?


あなたは認知症世界を旅する旅人。この物語に登場するのは、架空の主人公でも、知らないだれかでもなく、「少し先の未来のあなた」や、「あなたの大切な家族」です。


便器と床が白くて便器の場所がわからない。


水分補給するタイミングがわからない。


そう、こちらも、本人の記憶に基づけば正しいことを言っています。いずれも、本人の中では何もおかしいことはない正常な反応なのです。


脱ぎ着が難しい理由はいくつか考えられます。1つ目は、自分の手足の位置や動かし方がわからないという理由です。


実は、顔を見て正しく人を認識するというのは、簡単なように見えて、ものすごく多くの情報を統合しながら行う高度な認知能力なのです。


いないはずの人や動物が確かに見える理由


人には自分に必要な情報に特別な注意を向けて、集中する能力が備わっています。しかし、その機能が損なわれたことで、まったく不要の声までなんでもすべて耳に入ってしまうとしたら…


混乱を生むモノ・コトを生活空間から取り除く

4)今日の気づき                        

「認知症の方自身の声を集めて作った、認知症の方自身の立場にたった考え方」が示されているとても貴重な本です。
私は身近な家族に認知症の症状者がいます。「自分に専門知識はないけど、家族だからある程度は理解している」つもりになっていました。しかしこれがいろいろな面で間違いと気づきました。
例えば顔の認識などです。「あぁ、俺のこと分かってないな」と感じることはたびたびあります。そんなときは、なんとなく「記憶の障害」と思っていました。しかし、そうでなかったかもしれない。実は「機能の障害」かもしれない可能性があることを知りました。この事象正しく理解することはとても大切に感じます。正しく理解することで初めて、正しいアクションができるはずなので。
特に「本人の中では何もおかしいことはない正常な反応」であることを理解しておかないと、その後のアクションがいろいろズレそうです。
そして、頼れる仲間を作ることの大切さ…。
やさしい書きっぷりで、相当な切れ味の内容でした。

5)本書の目次                         

小見出しの紹介。この本は、その章の内容が見事に章タイトルにあらわれています。

PART1   認知症世界の歩き方
STORY1  乗るとだんだん記憶をなくす ミステリーバス
STORY2  視界も記憶も同時にかき消す深い霧 ホワイトアウト渓谷
STORY3  誰もがタイムスリップしてしまう住宅街 アルキタイヒルズ
STORY4  メニュー名も料理のジャンルもない名店 創作ダイニングやばゐ亭
STORY5  イケメンも美女も、見た目が関係ない社会 顔無し族の村
STORY6  目の前に突如現れる落とし穴、水溜り、深い谷 サッカク砂漠
STORY7  熱湯、ヌルッ、冷水、ビリリ、入浴するたび変わるお湯 七変化温泉
STORY8  人面樹、無人の森から聞こえる歌声、動き出す枝 パレイドリアの森
STORY9  時計の針が一定のリズムでは刻まれない トキシラズ宮殿
STORY10 一本道なのになかなか出口にたどり着かない 服ノ袖トンネル
STORY11 距離も方向も分からなくなる 二次元銀座商店街
STORY12 ヒソヒソ話が全部聞こえて疲れてしまう カクテルバーDANBO
STORY13 記憶、計算、注意、空間…支払いに潜む数々の罠 カイケイの壁

PART2  認知症とともに生きるための知恵を学ぶ 旅のガイド