みなさん、こんにちは。本シェルジュの園田泰造です。
本日ご紹介する『失敗から学ぶマーケティング 売れないモノには理由がある』は、著者の豊富な実戦経験に基づくマーケティング理論が展開されています。世に成功事例にもとづく理論書は数あれど、失敗事例に基づく理論書というのは貴重です。
著者も本書の中で語っているとおり、成功事例と失敗事例を理論的に整理して自身の中に蓄積しておくことで、マーケティングの現場において、高確率で次の展開が予想でき、打つべき手も的確になってくるからです。
ちょっぴり分厚い本のように見えますが、事例が多くて読みやすいので、あっという間に読み終えてしまいました。今まで消費者視点から見えていた世の中の様々な企業の動きのカラクリが見えてくる一冊です。
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1)本日紹介する書籍
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失敗から学ぶマーケティング~売れないモノには理由がある
技術評論社 (2021/12/3) 512ページ
森 行生 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4297124599/
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2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?
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企業のマーケティング担当者はもちろん、製品開発や営業、そして経営者やコンサルタントだけでなく、世の中の動きに興味のあるすべての方へ。
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3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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P006 例えて言えば、お祭りの射的で、普通の人は銃身の短いピストルを使いますが、我々は銃身の長いライフルを使い、かつ身を乗り出して的との距離を極力縮めることで、的の中心に弾丸を当てる確率を極力高めます。「ずるい」と言ってはいけません。ライフルを使うことがマーケティング理論および成功と失敗のパターンを駆使することなのですから。
P022 じつは失敗のうちの9割がたった1つのパターンです。このパターンさえ回避できれば成功確率が激増します。そのたった1つとは、「知名度不足」です。「知られなければ『ない』のと同じ」と私はよくいいます。
P092 イノベーターが去ったブランドや商品ジャンルの末路は悲惨です。いくら売上が大きくても、活性化できず徐々に衰退し、忘れ去られる運命なのは、ファミレスしかり、キャラメルしかり、ポケベルしかり。過去の歴史が教えてくれます。
P116 どうすればイノベーターを見つけられるのか。(中略)まず、調査票に次の2つのイノベーター判別用質問を加えます。
・「新製品についての情報を、ほかの人よりも早く収集するほうだ」
・「新製品を、ほかの人よりも早く買うほうだ」
P149 しかし、冷静に考えれば、ターゲットをすべての性年代に設定しては、売れるはずの商品も売れません。そこで、私がアドバイスするのが、「買ってほしくない人を決めよう」です。
P158 このように、従来の基準ではイノベーターでもなんでもなく、むしろアーリーアダプターやフォロワーに分類される人たちが、ひと晩あけたら別種のイノベーターに変貌し、業界の地図を塗り替えることがあります。多くの場合、トップシェアを握っていた企業の対応が遅れたあげく、転げ落ちるのです。
P184 人にとって、自分の頭の中にあるもの(認知)が事実です。客観的な事実があったとしても、「知らない」「知ろうとしない」「信じようとしない」のどれかです。「だったら教えてあげればいい」と単純に考えてしまうと、花王や資生堂の悲劇が繰り返されるのです。
P318 「我が社の商品がブランドになったら売上が上がる」との声をよく聞きます。しかし、大半は「テレビ広告を作ろう」「イメージのいいタレントを使おう」といった施策しか出てきません。下手をすると、「一流イメージがついたらブランドになる」と言い始めます。ブランドは「結果」であり、「原因」ではありません。
P419 商品に差別優位性がないために、広告で差別化を図ろうとする企業がたくさんあります。「広告で差別化すれば、商品も差別化される」と勘違いしているケースもあります。その大半が失敗します。広告自体のインパクトや意外性「だけ」を念頭に広告を制作するので、商品よりも広告表現しか生活者の頭に残らないからです。
P501 時には成功/失敗パターンやルール、理論を無視して挑戦してほしいのです。マーケティングの7割は手堅く理論どおりに実践し、3割は挑戦のための遊びを作ってほしいのです。(中略)何も知らずに無謀な挑戦をするのと、基本は定石を理解しながらも、自分の頭で考えたうえであえて挑戦を選ぶのとでは、根本的に違います。また、手堅い戦略で成功を重ねれば、遊びを作る余裕も生まれます。もし、あなたが人の上に立つ存在ならば、部下や後輩が自由に動くチャンスを与えてあげてください。
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4)今日の気づき
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本書で提唱されている独自のマーケティング理論も基本的には、既存の理論を実践的に組み合わせたものであり、目新しいものではないはずです。ただ、理論を適用してマーケティング施策を打つのは、人間であり、顧客側にも、企業側にも様々なバイアスが掛かってしまうため、必ずしも理論通りに期待した結果が出なかったりするものです。
そんなとき、本書を処方箋として、気づかないうちに陥ってしまっている症状を少しずつでも改善して、事業の健康を取り戻したいものですね。
いつも思うのですが、マーケティング理論は、なにも企業の商品開発だけでなく、個人の自己開発にも使えるはずです。いくつになっても、自分を改革し続けて、人生を豊かに過ごして行きたいものですね。
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5)本書の目次
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P003 :はじめに
P021 :1知られなければ「ない」のと同じ
P022 :1/1「自分が知っているから他人も知っている」と勘違いする
P056 :1/2インパクトだけを求めて、理解してもらうことを放棄する
P089 :2生活者を見誤る
P090 :2/1ヒット商品を最初に買った人を捨て置く
P123 :2/2人を属性で表面的に判断してしまう
P152 :2/3ゲームのルールが変わったことに気づかない
P178 :2/4事実は事実であることに疑いを持たない
P213 :3市場を見ずに突っ走る
P214 :3/1「時代に早すぎた」は「単なる戦略ミス」
P230 :3/2生活者の変化に気づかない
P250 :3/3自分を弱者と認めたくない
P275 :4商品の健康診断をサボる
P276 :4/1訴求すべきポイントを勘違いする
P309 :4/2商品にロゴをつければブランドだと信じて疑わない
P331 :4/3あれも欲しい、これも欲しいとタダをこねる
P363 :4/4「らしくない」ことをする
P279 :4/5有望株の芽を摘む
P415 :競合製品にも顧客がいることを忘れる
P416 :5/1自社製品ですら区別がつかない
P444 :5/2「市場が大きいから売上も大きい」の勘違いを犯す
P474 :5/3守るべきなのに攻める、攻めるべきなのに守る
P498 :おわりに
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失敗から学ぶマーケティング~売れないモノには理由がある
技術評論社 (2021/12/3) 512ページ
森 行生 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4297124599/
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