明けましておめでとうございます。
本シェルジュの大橋功です。
新年を迎えて、「今年は何にチャレンジしようかな」と思いを巡らす方も多くいらっしゃることでしょう。そんな時に私が感じるのは、趣味や余暇活動の好みや内容に、あまり年齢差がなくなってきているな、ということです。
先日学生時代の友人たち(60歳前後のオヤジ連中)と久々に会食したときにも、「俺、実は嫁さんと一緒に『××坂48メンバーの○○』の推し活をやっていて、最近は夫婦で揃いのTシャツを着てコンサートに行ったりしてるんだよね」という話が出たりします。また現在40代や50代で、SNSやスマホを日常生活で使っている人たちがそのまま年齢を重ねていけば、ネット利用の面でも段々と世代間ギャップは小さくなりそうです。
「消齢化」とは人々の意識や好み、価値観に、世代や年齢による違いが小さくなる現象を意味します。日ごろから何となく感じていたことを、アンケートやデータの裏付けで実証的に示してくれるのがこの本。
また広告代理店系のシンクタンクが書いた本だけに、こうした社会的な傾向がビジネスやマーケティングにもたらす影響もカバーしており、幅広い内容がコンパクトに整理され読みやすい点もおすすめです。
1)本日紹介する書籍
「消齢化社会 ~ 年齢による違いが消えてゆく! 生き方、社会、ビジネスの未来予測」
インターナショナル新書(2023/8/12)220ページ
博報堂生活総合研究所(著)
2)どんな人が読むべき?
消齢化がなぜ進んできたのか、今後の生活や仕事にどんな影響があるのか、気になる人
3)付箋
次の5つの項目は、「生活定点」で実際に調査している質問事項です。年齢による違いが小さくなってきているのはどの項目でしょう。
(A)ハンバーグが好き
(B)超能力を信じる
(C)夫婦はどんなことがあっても離婚しないほうが良いと思う
(D)木の床(フローリング)が好き
(E)世界に一つしかない自分の服や小物などを作りたいと思う実はこの5つの項目は、分野はバラバラですが、すべて年齢による違いが小さくなっていた項目でした。
(P.22~23)
消齢化の背景をまとめてみましょう。
(P.79)
(1)能力の面で、年齢に囚われず「できる」ことが大きく増えた
(2) 価値観の面で、世代交代や時代の共有を経て、社会から「すべき」が減った
(3) 嗜好や関心の面で、「年相応」から離れ出した生活者の「したい」が重なった
この3つの変化を背景として、消齢化は進んでいるという結論に私たちは至りました。
実年齢にかわって重視されるのは、肉体年齢、肌年齢、精神年齢など、フィジカルやメンタルが実際にどの程度なのかを測定して算出される「実質年齢」です。
(P.111)
・・・重要なのは「自分の他の人も、基本的な部分で考えはそれほど離れていない」という共通認識、「手をつなげるポイントがあるんだ」という認識が持ちやすくなることです。それが人間関係の構築にポジティブな影響を及ぼすことは、言うまでもありません。
(P.113)
市場においても、企業は商品開発や商品訴求の切り口を変えていくことが求められていくことになりそうです。・・・年齢も見た目もバラバラな生活者の中に大きな「同じ」を探し出し、広く訴求するアプローチにこそチャンスが広がっていくでしょう。
(P.124)
人口減少を社会の量的な変化と捉えるならば、消齢化はいわば社会の質的な変化だといえるでしょう。量的にみれば「少子高齢化」が進んでいる日本ですが、質的にみれば「失われた30年を共有して、近い価値観を持つ大人たちがたくさんいる社会」であるともいえそうです。
(P.207)
消齢化社会という研究を通じて、私たちが伝えたかったこと。それは人口減少や高齢化という大きな課題に直面していても、社会や生活者を捉え直し、新たな活路を見出すチャンスは、どこかに常にあるのだということです。
(P.218)
4)今日の気づき
「消齢化」というと、元気なシニアが増えたとか、若者が老成化しているといったイメージを抱きがちです。しかしこの本を読むと、そのような単純な話ではなく、人間としての共通の価値観や好きなこと、得意なことなどが、年齢に関わりなく広い世代にわたって存在しつつある社会になってきたんだ、ということに気づかされます。
その意味では、年をとっても「実質年齢」が若々しければ、まだまだできることがあるということかもしれません。改めて自分自身の可能性を考え直すためにも、年の初めに読んでみたい1冊です。
5)本書の目次
はじめに さよなら、デモグラ
第1章 消齢化の発見
第2章 消齢化の背景
第3章 消齢化の未来
第4章 有識者と考える「消齢化社会」
終章 発送転換のための8つのヒント
おわりに 消齢化発想で、新市場創造を
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