こんにちは、本シェルジュの堀江賢一です。
     
一昨年、電通の新人社員が自ら命を断つという痛ましい事件が起きました。その原因の一つとして「長時間労働」が挙げられており、政府としてもその是正に乗り出しています。

労働人口が減少に向かいつつある現在、「長い時間働けば価値が出る」時代はもう終わっています。これからは、生産性を上げて、いかに価値の高いアウトプットを出すかが一人一人に課せられてきます。

私が紹介するのは、先週の三上さんご紹介の「生産性」とも関連の深い1冊、
『労働時間革命』
です。

株式会社ワーク・ライフバランスの代表であり、安倍総理が議長を務める「産業競争力会議」の民間議員でもある著者が、
①なぜ今国を挙げて労働時間革命に乗り出しているのか
②どうやれば労働時間革命を起こし生産性を上げることができるのか
③成果を上げている組織はどのようにして生産性を挙げているか
を具体的に紹介しています。

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   1)本日紹介する書籍 
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「労働時間革命 残業削減で業績向上!その仕組みがわかる」
毎日新聞出版(2016/325)226ページ
小室淑恵(著)

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   2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき? 
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この書籍は、企業の管理職以上の方に特に読んでいただきたい1冊です。

特に、以下の3点は驚いたというより衝撃を受けました。
①団塊世代の大量退職を皮切りに、育児休暇の女性の数よりも親の介護をする男性の数が上回るのが今年2017年であること。
②今すぐ働き方を変えていかないと、2100年ごろには人口が現在の4割まで下がって下げ止まらないこと。
③逆に働き方をガラリと変えることで男性の育児参加率が上がり、出生率を今より上げることができれば、2100年ごろの人口は今の7,8割をキープできること。

これらの情報は全て国の機関により提供されている事実です(内閣府の「選択する未来」委員会)。

この書籍に掲載されている15事例はいずれも生産性改善なんて無理と思われていた組織を劇的に変えた事例です。
日本を変えることに本気で取り組んでいる著者のアツい1冊、ぜひ読んでいただきたいと思います。

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   3)付箋  本書からの内容抽出です
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私たちは3年以上、リクルートスタッフィングにコンサルティングに入らせていただいていますが、働き方改革のための取り組みを続けた結果、休日出勤は68%削減、深夜労働は86%削減、生産性は5%向上しました。(中略)このとき何よりも政府が注目したのは、リクルートスタッフィング社長の「女性従業員が出産した数が取り組み前に比べて1.8倍、およそ2倍になった。ぜひ国の数字に焼き直して考えていただきたいと思う」という発言でした。(P.14)

男性の労働時間や家事参画度と出生率の関係性は、昨今政府内で大変注目を集めています。今までの政策は主に、制度を作ることや、女性に配慮する方向にばかり進んでいましたが、本当の少子化対策に重要なのは、男性の労働時間改革により、家事・育児参画時間を増やしていくことことだったという点が、大きなパラダイムシフトだったようです。(P.31)

最大の人口ボリュームゾーンである団塊世代が、2017年には一斉に70代に突入するのですが、60代から70代にはいるところで要介護率は跳ね上がるのですから、今の比ではない大介護時代がやってくるのです。男性比率の高い企業で試算をすると、なんと育児で休んでいる女性の数を、介護で休んでいる男性の数が逆転して超えます。(P.45)

私たちのコンサルティングでは以下の5つのステップを回しながら変革をしていきます。(P.62)
1.朝メール・夜メールを用いて現在の働き方を確認する
2.業務の課題を抽出する
3.カエル会議で課題を話し合い、見直し施策を決める
4.働き方の見直し施策を実行する
5.定例会でコンサルタントと共に進捗確認をする

労働時間改革は経営者のコミットがないと不可能でしょうか?そんなことはありません。一人ひとりが自分の職場で明日にでも始められるものなのです。
・若手社員なら、「家系図ワーク」をやることによって、上司に介護問題を自分ごとと捉えてもらい、働き方改革を提案する
・育児世代の女性なら、タイムキーパーになって時間泥棒上司の意識を改革する
・行く次世代の男性なら、後輩や年配社員をサポートしながら仕事を分け合う
・20代若手女性なら、追い風が吹いている今こそ怖気づかずに経営層に対してプレゼンを

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  4)今日の気づき 
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生産性向上や働き方改革という言葉はとても抽象度が高く、具体的にどうすればよいかよくわかりません。この書籍には15社以上の企業・団体の働き方改革を成し遂げた具体的な事例が生々しく掲載されています。そして、働き方改革に手を付けなければいけない理由・・・国から発表されているデータを目の当たりにして今すぐにでも取り組まなければならない大変重要な問題であると危機感をいだきました。

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   5)本書の目次
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序章         「長時間労働の是正」が国歌の重要施策になるまで
第1章  長時間労働は「勝つための施策」ではなく「負けている原因」
第2章  課題山積、仕事は増え、人は減らされている職場でも労働時間改革は起こせる
第3章  労働時間革命に効く万能薬はないが、不可能な職場もない
第4章  労働時間革命が出生率を上げる
第5章  労働時間革命は一人ひとりがすぐに始められる
終章    国家予算を膨張させないために、今すぐ労働時間革命を
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「労働時間革命 残業削減で業績向上!その仕組みがわかる」
毎日新聞出版(2016/325)226ページ
小室淑恵(著)