みなさん、こんにちは。藤川豊です。
初めての投稿になります。よろしくお願いします。

本日ご紹介する『「行為のデザイン」思考法』は、人の行動に着目し、改善点を見つけてより良い、新しい解決策をみつけていく、デザインマネジメントに関する本です。

デザインと聞くと、ビジュアルの美しさや色合いを連想する人も多いと思います。ですが、昨今、求められているデザインとは、単なるビジュアル領域の成果に限らず、エンジニアが携わるような製品の利用手順の領域、色や形が作用する心理領域、経営や社会的つながりを考慮するソーシャル領域などの幅広い知識を元になされるものです。
言い換えると、造形能力をトレーニングしたデザイナーでなくても、誰でもデザインに深く関わることができるということになります。

著者の村田智明氏は、プロダクトを中心に広範囲なデザイン活動を行い、国内外で160点以上のデザイン関連の賞も受賞されています。プロダクトデザインに加え、コンソーシアムや、地域振興プロデュース業務などにも数多く携わっていますが、そうした村田氏の経験とデザインアプローチが詰まった本です。

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 1)本日紹介する書籍
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問題解決に効く「行為のデザイン」思考法
CCCメディアハウス (2015/9/17) 232 ページ
村田智明氏 (著)
https://amzn.asia/d/gZt0jEp

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 2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━新規事業や新製品開発に関わっている方、製品やサービスをより使いやすい、満足度の高いものにしていく活動に関わっている方、またはそのような活動に興味がある方へ

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 3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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P27
「行為の」デザインとは、対象をものだけに絞らず、人や情報、環境を含んだ中で「行為がスムーズに美しく振る舞われるためにどうあるべきか」を考えるデザインです。だからまずユーザーが目的を達するための動き・行為に着目します、もし利用中に動きが止まるのであれば、それは利用法がわからないか、いったんやめて戻らなければいけないなど、プロダクトに「バグ」があるということです。

P28
たとえば、会議室のような広い部屋の照明をつけようとして、スイッチで迷ったことはありませんか?
このときデザインが担うべきは、美しいスイッチ盤やつまみの色ではありません。情報をどう見せるとユーザが行動を止めずにすむか、美しく振る舞えるのかを考える「行為そのもののデザイン」です。

P42
今プロダクトの周辺で起こっている「バグ」は、人間らしい営みを象徴していると考えます。日常の至るところにある「バグ」に気づき行為の歪みを直せば、本来あるべき「人とモノ」の関係が取り戻せるのではないでしょうか。「行為のデザイン」は人らしい美しい行為を再発掘することの一環でもあります。

P65
いつもの自分とは違う視点から自社のプロダクトやサービスを見るメリットは、普段の自分では気が付かないポイントに気づけることです。
わからないままに設定やデザインを進めていくと、どこにも響かない無難な平均点の成果物ができます。すべてのユーザーに向けたプロダクトやサービスは、実はすべてのユーザーにとって平均かそれ以下です。

P94
想像体験を経ると、既存のプロダクトやサービスを使う際に、「この人にとっては使いにくい」「この状況下ではユーザが不便だ」といくつものバグがあることに気づきます。バグは8種類にパターン化でき、それぞれソリューションが考えられます。8つの基本的なバグの性質を理解すれば同様の課題や解決策を見つけやすく、企画立案への早道になるでしょう。

1「矛盾のバク」
これは目的を果たすために施したデザインによって反対の効果が出てしまい、結局目的を果たせなくなってしまうバグです。
iPhoneを裸で持つ人はあまりいません。せっかくのデザインなのに「傷をつけたくない」とカバーをつけて使い、美しい姿を見るのは買ったときだけという人がほとんどなのです。

P98
2 迷いのバグ
目的に向かって行動しようとしているのに、迷いが生まれて動きが止まってしまう、または逆戻りしてしまうのが、迷いのバグです。
P101
立食パーティーなどでグラスを受け取って、ずっと持ち続けている人は少ないでしょう。しかし一度テーブルに置いてしまうと、自分のグラスがわからなくなります。予備のグラスは用意されていますが、そのたびに新しいグラスを持ってくるとテーブルの上は、持ち主がわからないグラスだらけになってしまいます。

P104
3 混乱のバグ
コトやモノの数が多すぎて混乱を招き、見た目にも美しくない状態になるのが混乱のバグです。
地元のバスに乗るとひっきりなしにアナウンスが続くのですが、これもカオスのバグです。ずっとアナウンスされ通しなので何が大事なのかさっぱり伝わってきません。

P111
4 負環のバグ
バグになる理由があるのに解決せずにいると、さらなるバグが生まれて悪循環に陥ることがあります。これが負環のバグです。
たとえば夏の都心部のヒートアイランド現象は負環のバグを引き起こしています。夏は暑いのでみんながクーラーをつけます。しかしクーラーをつけると室外機から熱風が出て、外気温はますます上昇します。

P117
5 退化のバグ
もともとあった機能がある条件で失われてしまうのが、退化のバグです。
買った当初の消しゴムは尖った角があり、そこで細かい文字を消すことができます。しかし使い続けていくうちに丸まって、当初と同じ機能が果たせなくなります。

P124
6 精神的圧迫のバグ
よかれと思ってしていることが実はユーザの気持ちを圧迫していることがあります。これを精神的圧迫のバグとしました。
代表的なバグに、スマートフォンやタブレットに表示される「通知」があります。それ自体はとても便利な機能です。しかし、その表示を見るたびに「返信しなければ」「チェックしなければ」という気持ちの負担が生まれているのなら、これは立派なバグです。

P129
7 記憶のバグ
人は、目的を持って意識して記憶するより、そのときに印象に残ることを無意識に記憶していく性質があります。
大きなショッピングモールの駐車場では、無意識に車を停めてしまって戻るときに車の場所がわからなくなるバグが発生します。これは、停めてから店に入るまでの記憶には「車→店」という向きの景色や情報しか残らず、反対に店から出る時の「店→車」という向きの情報が不足しているからです。

P135
8 手順のバグ
プロダクトやサービスが想定する順番と実際の動きが合っていないと、手順のバグが生まれます。
たとえば、ソフトクリームを2つ注文したとき、慣れない店員だと最初に商品をお客へ渡してしまうでしょう。しかし、お客はその後に支払いをしなければいけません。渡されたソフトクリームをどうするか迷って、誰かに持ってもらったり自分の片手でまとめたりして、財布を取りだして支払うことになります。

P145
広義のデザインとは、いわゆる狭義のデザインを内包するもっと大きな領域を指します。「設計思想を絞るプランニング、思想をカタチにする可視化、世間に存在を認知させる告知」の3プロセスをカバーします。

P153
デザインには美しさがなければいけません。美しさの要素は大きく分けて三つあります。
1つは「造形の美しさ」、2つ目は時間軸で流れる「行為の美しさ」。3つ目はプロダクトやサービスの底にある「考え方の美しさ」です。「行為のデザイン」で得た情報で2つのミニマライズを行い、必要なコンセプトが絞られたあと、美しい「可視化」を実現させるためにこの3要素を考えます。

P173
「行為を誘導する」アフォーダンスとは何でしょうか。たとえばペンがあったとして、おそらく大半の人が尖ったほうを紙につけて字を書こうとするでしょう。見ただけで役割がわかる、何か決まった扱いをしたくなる、それがアフォーダンスデザインの特徴です。

P188
これまでも繰り返し書いているとおり、「デザイン」はデザイナーだけで完結するものではありません。一つのデザインを完成させるためには、多くの視点から課題を見つけて解消する必要があります。それを一つの場でまとめられるのがワークショップです。ワークショップの目的は、関わる人たち全てが情報を共有し、生み出される形に納得することです。

P191
S・S・FB法(Stakeholder Scene Flow of Behavior)の流れ
ワークショップ事前準備
1.感性価値のヒアリング、2.目的の設定、3.ベースシートの「ステークホルダー」設定、4.ベースシートの「シーン」設定、5.ベースシートの「行為のタイムフロー」設定
ワークショップ期間
6.バグとエフェクトの抽出、7.バグの理由を探る、8.解決策を探る、9.解決策に優先順位をつける、10.解決策の図解、11.解決策の結合とミニマライズ、12.コンセプトメイキングと発表
ワークショップ以降
13.ビジュアルデザインへの導入

P224
どんなプロダクトやサービスでもステークホルダーを無視したものは受け入れられません。後戻りをしない組織や仕組みを構築するためにも、「行為のデザイン」を意識し、S・S・FB法ワークショップによるプレデザインを活用してほしいと思います。

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 4)今日の気づき
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プロダクトやサービスを、ユーザーに長く、便利に使ってもらえるようにするためには、デザイナーだけではなく、プロダクトやサービスに関わる人すべてが、一緒に考えて、発想して、デザインを進めていく必要があると、一貫して本著では主張されていました。

たしかに、身の回りをみてみると、使い勝手が悪かったり、利用法に迷ってしまうプロダクトやサービスもたくさん転がっているのではないか、と思います。そうした事例を、普段から見つけていくことで、自分の感性も高めていけるのではないでしょうか。

今後、商品開発や新規事業の検討、地域活性施策などに関わる機会があれば、多様なステークホルダーとともに、求められる感性価値を見出しながら、なるべくバグを出さないサービスづくりに、取り組んでいきたいと思います。

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 5)本書の目次
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はじめに
第1章 行為のデザインは開発力を加速させる
第2章 バグの種類とその解決法
第3章 デザイン化=「可視化」のプロセス
第4章 行為を誘導する「アフォーダンスデザイン」
第5章 行為のデザイン・ワークショップの開き方

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問題解決に効く「行為のデザイン」思考法
CCCメディアハウス (2015/9/17) 232 ページ
村田智明氏 (著)
https://amzn.asia/d/gZt0jEp