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□■本シェルジュがオススメする今日の一冊■□ Vol.343 2017年1月23日
~本シェルジュ達から、頑張るビジネスパーソンへの贈り物~
本シェルジュ=本のコンシェルジュのことです。
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みなさん、こんにちは。本シェルジュの岩永です。

1月のテーマは「昨年のこの1冊!」です。

「生産性向上」という言葉を、最近やたら目にしませんか。

以前から、政府・行政にて様々なシーンで言われていたものの、明らかに目立
つようになったのは、昨年6月の伊勢志摩サミット前後からだと思います。
安倍首相が、2020年までにGDP600兆円の実現を目指す!と宣言したのも、伊勢
志摩サミットですね。
では、ざっくりした我が国の現在のGDPはどれくらいかというと、500兆円くら
いなんですね。(恥ずかしながら、調べて知りました)
そして、なんと、日本のGDPは、バブル崩壊後20年以上にわたって、ほとんど
変わらずなんです!単純に考えても、それじゃ、給料あがりませんよねって話
です。

「人口ボーナス」なんて、言葉も数年前に流行りました。
これは、「労働力増加率が人口増加率よりも高くなることにより、経済成長が
後押しされること」とのことで、ざっくり言えば、日本が世界第二位の経済大
国になれたのは、戦後の急激な人口増加にあったということ。そして、バブル
崩壊を境目に、その成長が止まって、ほぼ現状維持が20年以上続いているって
ことです。

2020年までにGDPを600兆円に引き上げるということは、残り数年ですから、ど
れだけ、「結婚・子づくり・子育て」の施策を充実させたって、当然無理なわ
けで、それでも、GDPを引き上げるためには、『生産性向上』しかないという
ことになります。

伊勢志摩サミット後の、2016年7月から「中小企業等経営強化法」が施行され
ました。
生産性向上の計画(=経営力向上計画)を策定し、監督官庁が認定したら、そ
のための設備投資に対する固定資産税を3年間半減するというものです。
国は本気になっています。
また、今月末から募集開始になる予定の、新設の補助金「IT導入補助金」も、
まさしく、企業(特に、中小サービス事業者)に、IT利活用を積極的に行い、
生産性向上(インプットを少なく)とともに、付加価値向上(アウトプットを
より多く)も実現してねという趣旨のものです。

生産性向上に関する書籍も、出版が続いておりますが、本日ご紹介するのは、
来任26年のイギリス人(元金融アナリスト、現、日本の中小企業経営者)であ
ある、デービッド・アトキンソンの「新・所得倍増論」です。

客観的事実に基づく、かなり衝撃的な内容でした。
でも、「言われるうちが花」ではありませんが、著者も、日本に期待している
からこその苦言と提言を述べてくれています。

読みやすい文章で書かれつつも、ほぼ論文(いい意味で)といっていいほどの
データとロジックが示されています。

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 1)本日紹介する書籍
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新・所得倍増論
東洋経済新報社 (2016/12/9)305ページ
デービッド アトキンソン (著)
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4492396357

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 2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき?
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日本に住む人であれば、全員読んでもいいと思います。
特に読んで欲しいのは、本書にも書かれていますが、「経営者」でしょう。
そして、その経営者の支援をする立場の人。
社会性の強い方が読まれるのもおすすめです。やはり経済があってこその国の
発展と成長だからです。
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 3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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■P.2より
経営者と政府との間に、意識と方向性、モチベーションの大きな乖離が生まれ
ており、その認識がいまだに不十分だということです。安倍総理は日本が抱え
るさまざまな問題を解決しようと、「GDPを増やしてほしい、賃金を上げてほし
い、頑張ってほしい」と仰っています。しかし、現状では経営者にとって国の
借金問題や貧困率は他人事です。

■P.5より
生産性を上げるのは、労働者ではなく経営者の責任です。世界一有能な労働者
から先進国最低の生産性しか発揮させていないという日本の経営の現状は、い
かに現行の日本型資本主義が破綻しているかを意味しています。この経営者の
意識改革は、喫緊の課題です。

■P.137より
1995年以降の日本と海外の生産性の開きも、その大半はサービス業から発生し
ています。諸外国の生産性改善のかなりの部分はサービス業におけるもので、
それにはITの活用が関係しています。

■P.162より
「経済成長」のためということであれば、現実的に結婚率を上げる効果が見込
めるのは、やはり、「生産性」の向上です。それによって給料が上がり、結婚
率が上がって、子供の数が増えるはずです。

■P.219より
日本では、中小企業の数が多いこと、数が増えていることを好意的にとらえま
すが、実はそれは違います。企業が多いと、オーバーヘッドという固定費が増
えるだけで、そのしわ寄せは社員という労働者に向かいます。

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 4)今日の気づき
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引用では触れませんでしたが、本書では、何度も「GDP=人口×生産性」が出
てきます。
具体的な生産性向上の方法論については、実はあまり触れられていません。
・ITに合わせた変化を受け入れるべき!
・銀行は慣例にいつまでも慣例に従って15時で窓口を閉めるな!
くらいでしょうか。
ただし、何度も、経営者自らが気づくべきと説いており、そこには深く共感し
ました。
私の中小企業支援の経験でいえば、どれだけの中小企業が、納品書や請求書を
手書きやExcelで行っているか。これによって、どれだけのロスが生まれている
か。でも多くの経営者は、内側の生産性向上には、関心がないのが実情です。
個人のITスキルで考えてみても、Excelのちょっとした関数の使い方やショート
カットキーの使い方って、人から教えられて初めて、気づく、認識することっ
て多いですよね。企業単位で考えたときの生産性向上も同じことが言えると思
います。ですので、特に中小企業支援を生業としている我々、中小企業診断士
の果たす役割は重要と改めて認識いたしました。

一方、本書でも書かれていたとおり、政府・行政の施策は、中小企業が倒産し
ないための支援も手厚いですね。私も、その手の仕事もするので、悩んでしまい
ましたが、本来、自然淘汰されるべき中小企業(大企業も)を延命させることが、
マクロ的な視点で見たときに果たして正しいのかどうか。これもよくよく考え
なければなりません。

企業経営の観点では、少なくとも2020年の東京オリンピックという大きなマイ
ルストーンまでに、自社の足腰をどこまで強くできるかが勝負かなと思います。
アフター東京オリンピックには、生産性向上が実現できていない企業は、淘汰
の道が待っているかもしれません。
などいうことを考えました。

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 5)本書の目次
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はじめに
第1章 日本はほとんど「潜在能力」を発揮できていない
第2章 「追いつき追い越せ幻想」にとらわれてしまった日本経済
第3章 「失われた20年」の恐ろしさ
第4章 戦後の成長要因は「生産性」か「人口」か
第5章 日本の生産性が低いのはなぜか
第6章 日本人は「自信」をなくしたのか
第7章 日本型資本主義は人口激増時代の「副産物」に過ぎない
第8章 日本型資本主義の大転換期
第9章 日本の「潜在能力」をフルに活用するには
おわりに
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新・所得倍増論
東洋経済新報社 (2016/12/9)305ページ
デービッド アトキンソン (著)
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4492396357