本シェルジュの平鹿です。
本書は、実際にトヨタに入社し、人事担当になった若者が、業務への違和感、無力感から退職した後、様々な学びを経て至った一つの提案を古巣の人事部長に長文の手紙として送るという体裁をとっています。
最初は、個人的な独白の趣ですが、日本の戦後の歴史からの学び、他企業の人事の取り組みからの学び、そして、現在の勤務先であるサイボウズ社からの学びを経て、自身の認識を深めていく真摯な姿勢には、率直に感銘を受けました。
著者の髙木氏は、2016年新卒入社ということですので、今は30歳手前という年齢なのでしょう。一人事担当者が自身の思いから、これだけの調査と取材を行い、著作にまとめあげたことに拍手を送りたいと思います。
人事といっても、大手企業のそれに閉じてはいますが、「今後はジョブ型に移行すべし」という浅薄な議論にくらべ、私たちが認識しておくべき日本の問題の本質が丁寧に語られています。
では、どんな仮説に至ったのか。そこは、本書に関心を持った方に、是非、読んでいただきたいと思います。それに共感できるかどうかは、人により異なると思いますが、個人的には、その可能性を応援したい気持ちになったのでした。
本書を手にするきっかけは、丸善ジュンク堂書店が企画したオンラインイベントでした。本書の著者と小熊英二氏が対談するということで小熊氏見たさでイベントに申し込み、併せて本書を購入したのでした。書店の好企画にも拍手を送りたいと思います。
1)本日紹介する書籍
拝啓 人事部長殿
髙木一史(著)
519ページ、サイボウズ式ブックス(2022/6/17)
https://amzn.to/3GqfUiW
2)どんな人が読むべき
日本の停滞の一因は日本の人事制度にあると考えている人
3)付箋
会社で働いている人たちは、一人ひとり誠実に日々の仕事に取り組んでいるのに、なぜか晴れない閉塞感がある。しくみを変えれば、いまよりもっと一人ひとりが幸せに働ける方向に歯車が回りだすのではないか。そんな疑問が、すべてのはじまりでした。
そして最後の最後でようやく、ぼくは「一人でなにも変えられないという無力感」の正体に気がつきました。「一人では何も変えられない」のではなく「一人だから何も変えられなかった」
ぼくは今回、会社の歴史を学ぶ途中、日本は「企業のメンバーシップ」が、欧米は「職種のメンバーシップ」が強い傾向にあるということを知りました。しかし、ぼくは思うのです。共通の理想を持っていれば、その人たちは同じ「メンバー」と呼んでいいのではないでしょうか。会社でもなく仕事でもない、同じ理想を持った仲間たちと、メンバーシップを持ってチームワークを発揮することができたとき、ぼくたちが抱いている閉塞感は本当に消えてなくなるのではないか。そんな気がしています。
4)今日の気づき
トヨタの人事部長がこの本を読んだらどんな返信をするだろうか。
5)本書の目次
序章 ぼくはなぜ、トヨタの人事を3年で辞めたのか
第1章 会社を成り立たせている10のしくみ
第2章 なぜ「会社の平等」は重んじられるのか?
第3章 なぜ「会社の成長」は続いたのか?
第4章 なぜ「会社の変革」はむずかしいのか?
第5章 現地現物レポート あたらしい競争力の獲得を目指す12企業
第6章 サイボウズ人事制度の変遷レポート
第7章 会社を「インターネット的」にする
終章 ぼくはなぜ、この手紙を書いたのか
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