こんにちは、「本シェルジュ」の冬野です。
最近、食料品の値上げや、ウクライナ紛争下での小麦の輸出の確保のニュースをよく見かけます。日本の食料生産はどうなっているのか?どうしていくのか?
元農林水産事務次官の筆者が、日本の農業の実態と政策をわかりやすく整理された本書をご紹介します。特に、ここ数年、農業を取り巻く社会制度が大きく変わりつつあることが感じられます。
ご自身で農業を始められる方だけでなく、農業は6次化、或いは地方創生と言った流れで他産業や地域で関わられる方や支援される方も多いのではないかと思います。農業という産業の構造や農業に特化した政策を理解した上で関わることで、事業の成功確率はぐっとあがります。
生活になくてはならない食、その基礎となる農業が気になる方に読んでいただきたい一冊です。

1.本日紹介する書籍

ビジネスパーソンのための日本農業の基礎知識
株式会社 信山社(2022年8月22日)
奥原正明
Amazon URL  https://amzn.to/3AlJGkM

2.本書を選んだ理由 どんなひとが読むべき?

農業または農業に関連する事業(流通・加工・観光など)をお考えの方
農業または農業に関連する事業を行う方を支援される方
現在の農業に関心のある方

3.付箋 ~本書からの内容抽出です

はじめに
終戦後の食糧難を脱してからの日本は、食料の安定供給に不安を覚えることはあまりありませんでした。それは、日本に、食料を外国から輸入できるだけの十分な経済力があったからです。

第一章農業を成長産業にするために
経営面積別の農業経営体数の動向を見ると、北海道では100ヘクタール、都府県では10ヘクタールが分岐点で、これ以上の規模の経営体は増加していますが、これより小さい経営体は減少しています。(6P)
農業を基本に、それを活用した食品産業・観光業などの関連産業を振興していくのが、多くの地域において地域経済発展の方向でしょう。(13P)

第二章 農業政策の歴史
Ⅰ 終戦直後に形成された枠組み
自作農になっても、零細な経営規模を放置すれば、厳しい経済状況はそれほど改善されるわけではなく、農業者生活の安定も、農業経営の発展も望めないことになります(農地改革が作り出したのは一ヘクタール弱の自作農ですが、この面積で米を生産した場合の所得は40万円程度にしかなりません)
Ⅴ 新基本法を踏まえた改革
1999年(平成11年)の新基本法制定から10年経過した2009年(平成21年)にようやく「農地法」の抜本的改正が行われました農地制度の中心概念は、自作農主義から「農地の効率的利用」に変わったと言うことです。(62P)
一般企業も、リース方式であれば農業に参入できるようになりました。(63P)
農協関係者が自覚して、ビジネスモデルを大きく変えていくのが筋ですが、それを促進するために、2015年(平成27年)に「農協法」の改正が行われます。
これによって、それぞれの農協の役員が経営者としての自覚を持ち、創意工夫でビジネスモデルを変えていってもらうことが期待されています。(68P)

第三章 農業に関する法制度
Ⅱ 農業経営者
農業経営者が、自分の農業経営について、現状、改善目標、目標を達成するための措置などを記載した「農業経営改善計画」を作成して、市町村に提出して、市町村の基本構想に照らして適切であれば、市町村の認定を受けることができます。(99P)
認定農業者の最大のメリットは、日本政策金融公庫のスーパーL資金(農業経営基盤強化資金)の融資を受けられることです。(102P)
認定新規就農者という制度があります。新たに農業経営を始めようとする青年等或いは農業経営を始めてから5年経過していない青年等が青年等就農計画を作成して、市町村の認定を受けるという制度です。青年など就農資金という無利子資金が設けられています。(106P)
Ⅳ 農業競争力強化
米の小売価格を100%としたときに、流通経費32%を控除されて農業者の手元に残るのは68%、ここから生産資材19%、その他の生産コスト19%が控除されて、農業者の手取りは30%になります。(140P)

4.今日の気づき

近年の社会情勢の中、日本の農業の再構築は社会課題といえる
近年、担い手となる農業者を中心として農業の再構築に向けた制度変更が進んでいる
農業を事業として行うためにはこれら制度の活用も視野に入れる事が大切

5.本書の目次

第一章 農業を成長産業にするために
第二章 農業政策の歴史
Ⅰ 終戦直後に形成された仕組み
Ⅱ 高度経済成長下の農業政策の方向を定めた「農業基本法」
Ⅲ 農業をめぐる大きな状況の変化
Ⅳ 「食料・農業・農村基本法」の制定
Ⅴ 新基本法を踏まえた改革
第三章 農業に関する法制度
Ⅰ 農地
Ⅱ 農業経営者
Ⅲ 農協
Ⅳ 農業競争力強化
Ⅴ 食品安全
Ⅵ 植物防疫・家畜防疫
Ⅶ 米などの耕種作物に関する政策
Ⅷ 畜産政策
おわりに

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