みなさん、こんにちは。本シェルジュの園田泰造です。

皆さまはプロ野球に関心はおありでしょうか?私は子どものころから阪神タイガースのファンで、1985年の日本一の胴上げを球場で目の前で観るほどでした。まあ、最近はもっぱら低空飛行が続いておりますので、一喜一憂に疲れた私は極力関心を持たないように心掛けてはおりますが。それでも世の中、マスコミの注目度含めてどうしてもセントラルリーグの球団に注目があたりがちです。パシフィックリーグでも、資金力の強いソフトバンクや楽天などの話題が多くなっているような気がします。

とはいっても、プロ野球の知識や関心は特に不要です。ビジネス書ですので。今回の著者の山室氏は、そんな日本のプロ野球界で、不人気球団と言われた千葉ロッテマリーンズで「球団創立以来最多観客数」「創業以来初の単体黒字」を実現した経営者(現在はJリーグ清水エスパルスの代表取締役)です。そのカギはやはり、「組織改革」。

別に山室氏が経営者になったからといって、毎年優勝争いをするような強球団を作り上げたわけではありません。チームは弱くても、組織本来の力をうまく引き出すことで、企業体としての「マリーンズ」が、親会社(ロッテ)依存から脱却し、しっかりと単体黒字を出せるようになったのです。

山室氏は、いったいどのような魔法を使ったのでしょうか?

今の組織がどうも自分とは合わない、リーダーになったが、メンバーとなにか上手くかみ合わない、などの悩みをお持ちの方、そんなあなたの背中をそっと押してくれる本です。

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 1)本日紹介する書籍
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経営の正解はすべて社員が知っている
ポプラ社 (2021/2/10) 254ページ
山室晋也 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/459116800X/

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 2)本書を選んだ理由    どんな人が読むべき?
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特に、新しい組織のリーダーになった方や、新しいリーダーを迎える組織のメンバーの方、仕事に限らず、なんらかの組織に所属して、より良い結果を生み出そうと努力しているすべての方へ。

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 3)付箋 ~本書からの内容抽出です
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P31  私のやったことといえば、一人ひとりの「生の声」を聞いたこと。そして彼らが働きやすくなるように、働いていて「楽しい」と思えるように調整していったこと。ただそれだけです。

P54  閉塞感を抱いていたり、不満を持ったりしていても、まだ辞めていない。それはまだ職場に期待をいだいているからです。(中略)どうしたら一人ひとりの「夢」を叶えられるかをリーダーが真摯に考え、実現できるようにお膳立てをすると、組織は大きく動き出します。

P61 表彰制度を整備するにあたって私とくに心がけたのは、「メンバー全員に公正に表彰が行き届くこと」です。(中略)縁の下の力持ちこそ、表彰で報いる。すると組織全体が一気に活性化します。

P83 だいたい新しいトップは皆必ず「改革」「変化」をお決まりのように口にします。そもそも改革される側に立ってみたら、完全に過去も仕事を否定されるわけですから、大きな迷惑です。喜んで受け入れる人は稀だと思ったほうがいいです。

P106 ほかの人が門前払いするような案件や、一見して「これはダメだろう」と感じる案件の中に、大きな宝が隠れています。却下するのは、かすかな夢を抱いて実現可能性を十分に検討してからでも遅くはありません。

P108 私が「リーダーとして」以前に、「ビジネスパーソンとして」大切にしている心構えは、仕事で関わる人すべてを全方位で「お客さま」と考えることです。

P171 組織全体として「この方向に進むのだ」という方針を打ち出したら、経営者はその方針に責任を持たなければなりません。責任の持ち方にはいろいろありますが、私は、「経営者自ら、方針に沿った行動を示す」ことが大切だと考えています。

P195 社長が目先の「面白さ」に溺れ、興味本位で職権を濫用し、口を出したい分野にだけ口を出すと、組織は瓦解するのです。私が「経営」以外には口を出さないのは、これが理由です。

P196 「チームが弱い」「予算も少ない」その中でできることは、「外部に頼まず、自分でやる」「今ある材料で、使えるものは使い倒す」の2点です。

P243 「勉強で培った知識」は、仕事においてはかえって足かせになることすらある。磨くべきは「勉強による知識」ではなく、「人間を見る力」だったと、このでき事から学びました。

P247 リーダーに必要なのは、「リーダーシップの知識」ではありません。「どうしたらメンバーが働きやすくなるのだろう」と、人としてメンバーの気持ちを汲む姿勢なのです。

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 4)今日の気づき
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読み終わってみると、山室氏は、何も奇をてらったような、特別なことはしていないように見えます。ひたすら無理をせず、人間のもつ力を信じ、解放してあげたにすぎません。

ただ、このような経営手法が特別な「魔法」に見えてしまうほど、現在の日本の組織が硬直化して、機能不全に陥ってしまっているということなんでしょう。

パワハラとまでいかなくても、経営者やリーダーが、その権威をカサに着て、一方的にごり押ししても、組織は人間の集合でできているのですから、そう簡単に思い通りに動くわけではありません。

メンバーの側から見ても、このリーダーの元で、本気を出しても大丈夫なのか、を計っているわけで、それぞれの思惑がうまく一致できる環境をいかに作れるかは、経営者を始めとしたリーダーとメンバーのコミュニケーション次第ということなのでしょう。

山室氏は、まさに、「口は易し行うは難し」な行動を愚直に実行しただけなのかもしれません。大局的な方向性(戦略)は経営者が示すが、具体的な方策(戦術)は、現場を知る人間が余計なしがらみに囚われずに、本質的な発想で、経営者とともに困難を乗り越えていき、目標を達成する。そんな組織が増えるといいですね。「経営の正解はすべて社員が知っている」のですから。

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 5)本書の目次
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P3  :はじめに
P18  :序章  ダメ銀行員がなぜ球団社長になったのか
P30  :第1章 組織の「内情」を知る1
P82  :第2章 組織を導く
P108 :第3章 全方位を「お客さま」と考える
P166 :第4章 「経営」の視点を持つ
P216 :第5章 数字を読み、利益を生み出す
P238 :第6章 「ビジネススキル」以前に「人間」を磨く
P248 :おわりに

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経営の正解はすべて社員が知っている
ポプラ社 (2021/2/10) 254ページ
山室晋也 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/459116800X/