こんにちは。
本シェルジュの夏原 馨です。

この時期、街はバレンタイン一色ですね。
すくすくと育った2人の息子たちは、ちょっと気の利いたチョコレートより
「駄菓子屋で1000円分好きに買っていいよ!」を喜ぶように。
ママからのチョコレートをニコニコ喜んでいた頃から、変わったなあ・・・

今日ご紹介するのは、子どもの成長よりも
マクロで身近な変化であるコロナ禍を分析した本です。
その名も「コロナ禍における個人と企業の変容:働き方・生活・格差と支援策」。

労働政策研究・研修機構という、厚労省のシンクタンク的な外郭団体が
連続的に調査した結果を大学の先生とともにまとめた一冊。
労働市場を中心に、コロナの影響をざっくり捉えたい方へおすすめ。

ちなみに私は、いつもはユルい・ほっこり系の本を紹介しておりますが
今回は専門ガチな本のご紹介です(しかもKindle版ないんですよね…)
個人で読むには高くてカタめなので、会社で書籍を買う参考にしていただけましたら。

1. 今日のオススメの一冊 


コロナ禍における個人と企業の変容:働き方・生活・格差と支援策
樋口 美雄(ひぐち・よしお)【編者】・労働政策研究・研修機構(JILPT)
出版社:慶應義塾大学出版会 (2021/11/19)
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4766427807/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_JCBJXAAFDTYNHJ1TA0PK     

2. 付箋

P49 持続化給付金によって主観的な事業継続見通しが19ポイント高まること…(後略)

p68 持続化給付金や都道府県における給付、資金繰り支援ともに統計的に優位なプラスとなっており、申請済みである場合ほど1ヶ月後や2ヶ月後の業績変化が良好であることが示されている。

P109 2021年1月から4月のテレワーク実施状況をみると、内部コミュニケーションが多い産業ほどテレワークを採用した企業が多く、また外部コミュニケーションやルーティンタスク、オンサイトでの仕事が多い産業ほどテレワークを採用した企業がすくないことがわかる。

3. 今日の気づき

日々、公的機関から依頼をいただいて事業者さんのご支援をしていても、「それからどうした?」を追える機会は本当に少なく。
この本はまさにその「それからどうした?」に答えてくれるものでした。

雇用調整助成金のおかげで、労働者の数は減らずに一人あたり収入が低下した、という結果などは納得感もあるし、なるほどと感じられました。

正直、持続化給付金や資金繰り支援は、現場でご支援している感覚では「焼け石に水」感や、いわゆる不採算事業者のゾンビ化・延命措置と揶揄される声を否定できずにいました。

一生懸命ご支援しているけど、この事業者さんたちはコロナ後も事業を継続されるのか・・・
徒労感に苛まれたのは一度や二度ではありません。

しかし、この本ではその懸念をデータをもとにバッサリと否定してくれました。

データ分析は分析の切り口を変えれば正直いくらでも結果は変わってくるし、公的機関に近いところの分析だから「成果がありました」としたいのかも、と穿った見方もあります。


それを踏まえても、ちゃんとご支援した成果が出ているのであろうエビデンスが示されて、ホッとしたのです。

4. 本書の目次

  • 序 章 本書の目的と「JILPT個人パネル調査・企業パネル調査」の概要(樋口美雄・中井雅之)
  • 第I部 企業行動と企業支援策の効果分析
    • 第1章 コロナ禍の市場変動と企業対応――マクロ・ミクロの視点から(井上裕介)
    • 第2章 コロナ禍の企業業績の変化と需要喚起策・雇用維持策の効果(小林徹)
    • 第3章 コロナ禍の政府による企業支援策と雇用維持・雇用削減への各効果(福田皓・山本勲)
  • 第II部 テレワークの実施企業の特徴と労働者への影響
    • 第4章 職業特性によるテレワークの可能性とコロナ以降の企業行動(荻島駿・権赫旭・児玉直美)
    • 第5章 コロナ禍のテレワーク勤務の持続性と一過性(神林龍)
    • 第6章 緊急事態宣言は誰の働き方を変えたか(大竹文雄・加藤大貴)
    • 第7章 コロナ禍の在宅勤務による生活時間の変化――「新しい日常生活」(高見具広・山本雄三)
  • 第III部 雇用形態別・性別労働者への影響と所得格差の拡大
    • 第8章 コロナ禍の非正規雇用者――仕事と生活への影響を中心に(高橋康二)
    • 第9章 コロナ禍の女性雇用(周燕飛)
    • 第10章 コロナ禍で女性の主観的ウェルビーイングが男性よりも低下している理由(打越文弥・ジェイムズ・レイモ・由里詩奈)
    • 第11章 コロナショック初期の失職や収入減少に関する個人属性間格差の国際比較(石井加代子・山本勲・吉田大喜)
    • 第12章 コロナショックの所得格差拡大への影響――社会階層の視点から(黒川すみれ)
  • 第IV部 フリーランスと所得支援策の効果分析
    • 第13章 コロナ禍に踏みとどまったフリーランスとは――テレワーク・オンラインの効用(玄田有史)
    • 第14章 コロナ禍のフリーランスの収入減少と家計悪化(長松奈美江)
    • 第15章 コロナ禍におけるフリーランスへの支援策とその効果(仲修平)

コロナ禍における個人と企業の変容:働き方・生活・格差と支援策
樋口 美雄(ひぐち・よしお)【編者】・労働政策研究・研修機構(JILPT)
出版社:慶應義塾大学出版会 (2021/11/19)
AmazonURL:https://www.amazon.co.jp/dp/4766427807/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_JCBJXAAFDTYNHJ1TA0PK