こんにちは、本シェルジュの堀江賢一です。
 
みなさんは「ソフトウェア」と聞くとどういうイメージを持ちますか?
NINTENDO SWITCHやプレイステーションなどゲームのソフトでしょうか?
FacebookやTwitterなどのSNSでしょうか?
それとも会社で使っている自社独自のシステムでしょうか?

答えを申し上げると、すべてソフトウェアです。

殆どのみなさんは、これらのソフトウェアを「使う」側にいらっしゃるかと思います。

しかし、 SNSを利用するようにソフトウェアが身近になるのと同時に、ソフトウェアを「創る」こともどんどん難易度が下がってきています。加えて、私達の伺い知らないところで、ソフトウェアの支配力が大きくなり、産業構造自体が変わっている業界もたくさんあるのです。

これからの企業やビジネスパーソンに求められるのは、ソフトウェアやIT技術に対するアレルギーを自ら取り払い、「手の内化」を行い、ソフトウェアを使いこなすことです。

本日紹介する書籍


「ソフトウェア・ファースト」
日経BP (2019/10/10) 409 ページ
及川 卓也 (著)

本書を選んだ理由〜どんな人が読むべき?〜

企業の経営層を始めとした組織のトップの方、特に情報技術をあまり得意としていない方にお読みいただきたいです。

なぜなら、今後あらゆる組織がソフトウェアを考慮して設計・運営されていく必要があり、そのためには組織トップのソフトウェアに対する理解が不可欠だからです。

付箋 本書からの内容抽出です

音楽産業ではまず、アナログからデジタルへのフォーマットの変化が起こりました。これはアナログレコードからカセットテープ、CDへの移行です、次に来たのがメディアの重要性の低下です。CDが不要となり、MP3として楽曲が流通するようになったため、メディアは不要になりました。そして最後の変化が、楽曲を購入して楽しむスタイルから利用権を取得して聴く形になっていった流れです。この音楽産業の変化は、産業がサービス産業化したことにほかなりません。この変化がすべての産業において起きつつあるのが今日なのです。

P.22

さて、このサービス化の流れを根幹で支え、一大分野にしたのがソフトウェアです。中でも、近年はSaaSと呼ばれるうクラウドサービスが広く普及しています。SaaSはSoftware as a Serviceの略で、ユーザーが使う完成形としてのソフトウェアをクラウドの形態で提供するものです。GmailやGoogleドライブのようなサービスが代表的ですが、今までパッケージソフトとして提供されていたような業務アプリケーションも、SaaSとして提供されるようになっています。

P.24

我々の生きている世界はアナログでできています。アナログ情報をデジタル化することで現在のソフトウェアの進化を享受できるのですが、全てがデジタルで処理できるわけではありません。(中略)そのような中、事業やプロダクト開発を成功させるには、ソフトウェアの流儀を知り、ソフトウェアの可能性を知りつつも、現状のソフトウェアが抱える限界も理解して開発に臨む姿勢が必要なのです

P.35

日本企業はソフトウェアを「設計パターンに従って複製可能な工業製品」とみなし、米国企業は「ビジネスであり商売の重要な武器」、欧州企業は「ソフトウェアの標準化に代表される美」を体現するものとして捉えていると分析しています。筆者はこの分析を、日本企業の多くが製造業の成功体験に引っ張られていることを端的に指摘したものだと感じました。

P.76

DXは日本のみならず、欧米でもその重要性が広く謳われています。そこには、ITをが持つ可能性に対する期待と、創業時からITを核としたサービス展開を行うことで産業界を大きく変えてきたデジタル・ネイティブ企業に対する危機意識が現れていると思います。デジタル・ネイティブ企業に本気で対抗していくには、DXを単なるブームとして終わらせてはなりませn。「第2の創業」に近い意識で臨まないと、何も変わらない可能性があります。蓋を開けて見れば新しいITツールを導入しただけ・・・とならないようにしなければなりません。

P.105

筆者はDXをすすめるためには、内製化が理想だと考えます。システム開発のノウハウが自社内に貯まるという理由だけではありません。DXのような新たな事業を興すときは、仮説検証を行うスピードと、企画から運用まで一気通貫のITを活用が必須になるからです。

P.109

また、テクノロジー以外の視点として、クリエイティブへの理解も必要です。経済産業省が2018年に開催した「産業競争力とデザインを考える研究会」の中で、研究会委員のタクラム(Takram)田川欣哉氏が「BTCモデル」という考えを示しています。BTCとはビジネス、テクノロジー、クリエイティブの頭文字を取った造語で、これらを三位一体で捉えて事業開発をすすめるべきという内容です。(中略)クリエイティブが必要な理由は、1章で説明したように多くの産業がサービス化し、体験が価値を持つ時代になったからです。

P.122

内製化するための体制を整えるには、事業サイドの人間もITシステムやソフトウェアに対する理解を深めなければなりません。一方で筆者は、ソフトウェアエンジニアも事業やプロダクトにもっと意識を向けるべきだと考えています。一般的なソフトウェア開発では、なぜ作るのか(Why)、何をなすべきか(What)を考えるのは事業サイドの企画職やプロダクトマネジャーの役割だとされています。その意向を受けてどう作るか(How)を考え、実装するのがソフトウェアエンジニアの役割です。これはこれで、役割分担を明確にしてスピーディに開発をすすめるやり方ですが、分業が進みすぎるとソフトウェアエンジニアがHowしか考えない存在になってしまいます。その行き着く先が、企業の情報システム部門が経営陣と外部委託会社との間で調整役にしかなっていないという状況を生んでいるように思います。

P.224

今日の気づき

私は、DXという言葉がどこでもかしこでも使われる昨今の状況を食傷気味に感じていました。

本書を読むことによって、DXを成し遂げるにはソフトウェア技術を自社の技術として取り込むだけでなく、経営陣のリーダーシップを鍵にしてソフトウェア開発を中心とした組織設計を行っていかなければならないということ、そしてそのための人材をどのように育成していくべきか、あるいは自分自身がどのようにキャリアを積んでいく必要があるかがよくわかりました。

本書の目次

第1章 ソフトウェア・ファースト
第2章 IT・ネットの”20年戦争”に負けた日本の課題と光明
第3章 ソフトウェア・ファーストの実践に必要な変革
第4章 これからの「強い開発組織」を考える
第5章 ソフトウェア・ファーストなキャリアを築くには

「ソフトウェア・ファースト」
日経BP (2019/10/10) 409 ページ
及川 卓也 (著)