本シェルジュの平鹿です。

本日紹介するのは「The DevOps勝利をつかめ!技術的負債を一掃せよ」。少々派手なタイトルは監修者である日本マイクロソフトCTOの榊原氏の日本に向けたメッセージでしょう。原題は「ユニコーン・プロジェクト~開発者、デジタル破壊、そしてデータ時代の繁栄についての小説~」。

本書は、フィクション、ビジネスエンターテインメント、そしてなにより最新ITの技術解説書と多様な側面を持っています。米国で事業を展開する架空の自動車部品製造販売会社を舞台に、主人公たちの活躍によって、同社が経営危機の淵からシステムの立て直しを契機に立ち直っていく過程が描かれています。

情報システムの在り方や開発方法は、この10年間で劇的な変化をとげたと言われますが、その実態、特にデジタルの先端の米国の状況は中々伺い知ることができません。本書は、小説という手段を使って、その背景、意義、必要な能力まで活き活きと記述した最善のテキストと言えます。

情報システムやソフトウェアは、ビジネス活動をしていく上でもはや他人任せにできるものではなくなっています。ITに直接関わる人、そうではない人、双方に新たな気づきを与えてくれることでしょう。

1)本日紹介する書籍

The DevOps 勝利をつかめ! 技術的負債を一掃せよ

ジーン・キム(著), 榊原 彰 (監修), 長尾 高弘(翻訳)
432ページ、日経BP (2020/10/24)
https://amzn.to/34pnW7Y

2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき

デジタルはわからんと思っている経営者

IT部門はなんでこんなに動きが悪いんだと思っている事業部門の人

自社の情報システムはいけてないと思っているIT担当者

3)付箋 本書からの内容抽出です

技術的負債は、納期と同じ日常のことだ。ビジネスの人々は、納期のことはわかっても、技術的負債もあるということをまったく知らないことが多い。技術的負債は、それ自体では いいことでも悪いことでもない。技術的負債が生まれるのは、日常の仕事のなかでいつも 決断を迫られるからだ。

ビジネスの方の人たちでも、機能やアプリは見える。だから、こういうもののための予算は 獲得しやすい。でも、そういったものの下には、機能やアプリを支え、システム、チーム、 データを結びつける広大なアーキテクチャーという基礎があることは、彼らには見えない。 そしてその部分には、プログラマーが日常の仕事を快調に進めるために使うシステムというきわめて重要なものがある。

これは小が大を打ち破る物語ではない。速いものが遅いものに勝つ物語だ。

ここでの勝負はプロトタイプ的なアイデアであり、市場リスク、技術リスク、ビジネスモデルリスクの3つの問いにできる限り早く答えることが大切になる。このアイデアは、顧客 の本物のニーズを解決するか、技術的に実現可能か、財務的に見込みのある成長力がある かってことだ。これらの問いに対する答えのなかにひとつでもノーが含まれていれば、アイデアの方向性を変えるか、完全に捨ててしまうかになる。

数十年分の技術的負債を帳消しにできる世界を想像してみよう。まずいビジネスプロセス の上に構築されたまずいオートメーションからは抜け出せる。捨てられるものは何で、代わりに時間と労力を割いてできることは何かを意識的に慎重に選ぶんだ。

4)今日の気づき

日本の大企業のシステムは、この会社ほど滅茶苦茶じゃないよねと思う人も多いかも。でも、巷で言われるようにCOBOLで一カ月に1度の更新頻度を守り続けているのが良かったのでしょうか。もしかしたら日本企業は周回か2周回遅れなのかもしれません。

5)本書の目次

第1部 どん底へ
第1章   島流し
第2章   スティーブの涙
第3章   システム開発のあるべき姿
第4章  ブリッジクルーのシュールな登場
第5章   反乱軍
第6章   大惨事
第7章   見えてきた課題

第2部 快進撃
第8章  反転プロジェクト
第9章  QAとのパーティー
第10章 官僚主義の牢獄
第11章 自分の力で
第12章 分離独立
第13章 新たな世界へ

第3部 結実のとき
第14章 ユニコーン・プロジェクト
第15章 テストランからブラックフライデー当日へ
第16章 2号館の会議
第17章 コスト削減計画
第18章 発表会と政変
第19章 新しい時代へ

エピローグ 1年後

紹介する書籍

The DevOps 勝利をつかめ! 技術的負債を一掃せよ

ジーン・キム(著), 榊原 彰 (監修), 長尾 高弘(翻訳)
432ページ、日経BP (2020/10/24)
https://amzn.to/34pnW7Y