本シェルジュの平鹿です。
本日とりあげるのは「世界のDXはどこまで進んでいるか」。
直球勝負のようなタイトルですね。某大型書店の2番目くらいに目立つところに並べられていたこともあり、タイトルに引かれて購入した本です。この1年、仕事柄日本のDXが進んでいかない実情を垣間見てきて、他国と日本の違いはどこから来るのだろうと思い悩んでいたことも本を手にした理由です。
読み進むうち、この本は私が求めていた情報を与えてくれるものとは少し違っていることが解りました。そして、読み終わってみて、求めていたことへの大きなヒントになりそうと気づいたのでした。
本書は、これからDXを学ぼうという学生などには良い本なのでしょう。DXについて従来語られていたことが、大変バランスよく整理されて説明されています。デジタル変革の原動力として3つのキーワード、企業が競争優位を獲得するための戦略的アプローチとして4つの戦略が整然と示されます。事例編では、Tesla、Uber、Walmart、Alibaba、Netflix、そしてMicrosoftが取り上げられます。DXとしてはこれまで何度も取り上げられた企業ですね。その戦略が丁寧に語られます。
日本ではDXが進まないと言われます。では、各企業は本書で語られる原動力や戦略を知らないのでしょうか。知識では知っているのに、それを実行できない。そこに日本の現状があるのではないでしょうか。そして、変革に踏み込めない理由は事例で取り上げられた企業を神棚にまつっていては見えてこない。そもそも変革を大仰な他人事のように見てしまうことに問題の根っこがあるのではなかろうか。少々大上段ですが、そんなことを思ったのでした。
本書は、「日本の企業や産業はこれからどうしたらよいかと」いう設問があったとして、その良き与件文になるのではないでしょうか。さて、回答を考えねば。
1)本日紹介する書籍
世界のDXはどこまで進んでいるか
雨宮寛二(著)
223ページ、新潮新書(2023/7/20)
https://amzn.to/3OT7UtC
2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき
タイトルに誘導されて
DXをおさらいしたい人、あるいは日本の現状にいらついている人
3)付箋
基礎編では、まず、これまでのデジタル化の動きをデジタル化1.0、2.0、3.0の3つのフェーズで捉え、デジタル変革の原動力をビッグデータ、プラットフォーム、ケイパビリティとしたうえで、 企業がデジタル化を進めるうえで何が必要なのか、人工知能やクラウドなどのキーテクノロジーに焦点を当て事例を踏まえながら詳細に解説しています。
戦略編では、企業や組織があるべき姿を明確にして、DXにより全体最適化を図ることで 持続的競争優位を確立するために採るべき戦略的アプローチとして、「エクスペリエンス 戦略」「データドリブン戦略」「ヒューマンスキル戦略」「アジャイル戦略」の4つを挙げ、 それぞれの戦略で注目されているキーテクノロジーや手法として、ローカル5G、エッジ AI、リスキリング、PoCに着目し、事例を示しながらその戦略的意義や価値の重要性を 明らかにしています。
第一義的に挙げられるのは、あるべき姿を明確にして常に羅針盤とすることです。DXは、 単に新しいテクノロジーを導入することではありません。企業が追求するあるべき姿に基づいて、どのような変革を行うべきかを明確にして、常時照らし合わせながら完遂を目指す ことが重要です。あるべき姿が定められないと、テクノロジーの導入が適正に事業活動に 結びつかず、全体最適化による効果的な結果をもたらすことができないことになります。
DXを推進するためには、既存の事業の進め方やビジネスモデルに囚われない柔軟な思考 やリスクを取る姿勢が求められます。新たなアイディアを試行するための環境を組織的に 整備し、必要に応じて企業文化を変えていくことが重要となります。
4)今日の気づき
事例の最後はMicrosoftですが、記述は生成型AI前夜で終わっています。しかし、前夜までの戦略を見ると生成型AIに至る一貫性が見えます。
5)本書の目次
第1章 デジタル化を進めるための方法論【基礎編】
1.デジタルによる企業変革の潮流
2.デジタル化3・0の時代
3.デジタル化の用途と効果
4.デジタル化の基盤となる3つの原動力
5.データイニシアティブの現状
6.DX推進に不可欠な「デジタルツイン」とは
7.DXを実現するために必要なデータ取得の重要性
8.データ統合の真意は全体最適化にある
9.データ解析の精度を左右する人工知能
10.クラウドはDX実現のためのキーテクノロジー
第2章 企業の「全体最適」を達成するための戦略論【戦略編】
1.企業をエージェントとして捉える
2.企業経営におけるDX推進のための課題
3.DXによる全体最適化を図るために必要な戦略
4.エクスペリエンス戦略として機能する「ローカル5G」
5.データドリブン戦略を加速化させる「エッジAI」
6.ヒューマンスキル戦略の中心となる「リスキリング」
7.アジャイル戦略と親和性の高い「PoC」
第3章 DXの現在地、未来社会への大変革
1.DXの本質とは何か
2.テスラ:自動運転を見据えたDX
3.ウーバー:「スケーラブルなAIシステム」の構築
4.ウォルマート:「インテリジェント・リテール」の確立
5.アリババ:「新小売」から「新産業」へのデジタルシフト
6.ネットフリックス:3度のDXでスケールアウト
7.マイクロソフト:人工知能で社会課題を解決
8.DXの進化と価値
9.DXを成功に導くためには
10.10年後の未来社会とは
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