本シェルジュの平鹿です。

本日紹介するのは「デジタルアイデンティティー」。
デジタルアイデンティティーというのは聞きなれない言葉かもしれません。しかし、現代のデジタル社会では極めて重要なものであることを、本書はデジタル社会の本質から説き起こしてくれています。

著者の崎村さんは、OpenID Foundationという国際標準化団体の理事長を長年務めており、日本が誇るべき国際的な貢献をしている方です。OpenID Foundationは、インターネット上のアイデンティティーやサービスのアクセス管理にかかわる技術の標準化を行っている組織で、GoogleやAppleなどほとんどのサービスがこの組織が策定した規格を利用しているのです。

本書には、少々専門的な内容も含まれていますが、それ自体、サイバー空間の舞台裏ではこんなやり取りが必要だという理解につながるでしょう。
インターネットでは、見たり触ったりできる実態が存在しません。だからこそ、アイデンティティーの概念理解と仕組みが必要なのですが、日本人は、民族的にアイデンティティーという考え方に疎いところがありそうです。未だに業務システムで共有のIDを使っていますし、近年のセキュリティ事故は記憶に新しいところです。

本書を通じて、GAFAなどの強さの源泉、そして日本の課題について新たな視点を得ることができるでしょう。

1)本日紹介する書籍

デジタルアイデンティティー 経営者が知らないサイバービジネスの核心

崎村夏彦(著)
255ページ、日経BP(2021/7/20)
https://amzn.to/3E664hM

2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき

実は、崎村さんと私は前職で机を並べていたことがあるのです。こんな活躍をされるようになって、本当に凄いです。
それはさておき、様々な立場の方に気づきのある本なので、是非、多くの方に読んでいただ
きたいと思っています。

3)付箋

GAFAMはなぜ覇者になれたのでしょうか。…GAFAMはデジタルアイデンティティーを中核にした「アイデンティティー中心アプローチ」を採用しました。

経営に関わる資源を「デジタルアイデンティティー」として表現することが必要なのです。デジタルアイデンティティーの管理なくして第4次産業革命以降の経営は成り立たなくなってしまったのです。

21世紀の企業経営では、「デジタルアイデンティティー」と「プライバシー」に関する論理的な理解が求められます。これらの正しい理解がなければ、サイパー空間上の顧客を認識することも、資源を認識することも、それらを配分することもできません。

GAFAとは、アイデンティティーを別だしの基盤として整えて、その上にアプリケーションを構築していく「アイデンティティー管理フレームワーク」をいち早く構築した、「アイデンティティー管理フレームワーク企業」なのです。

アイデンティティー管理を切り離して独立させ、それぞれの機能を疎結合でつなぐシステムにすることで、他の機能への影響を起こさずにシステム改変や増強ができるようになり、結果、収穫逓増が可能になったのです。

人々は生活する上で複数の「アイデンティティー」を使い分け、他社との関係性を築いていきます。これが「エンティティー・アイデンティティー・モデル」です。

デジタルの世界になると大きな問題が起きます。その灰色の髪の男と名乗る人間が、「私はこういうものです」と伝えてきても、目の前にいれば実際にその属性を観測して確かめることができるのですが、ネットの向こうにいる人については、そう簡単に確認できないので、にわけには信じられないということです。

4)今日の気づき

マイナンバー、どうなっていくでしょうね。日本の今後を左右するものだと思うのですが。

5)本書の目次

はじめに
第1章 GAFAの中心戦略「デジタルアイデンティティー」
第2章 アイデンティティー管理
第3章 アイデンティティー連携フレームワーク「OpenID Connect」
第4章 アイデンティティー管理によって可能になる「アクセス制御」
第5章 企業にとってのアイデンティティー管理
第6章 高度化するアイデンティティー管理
第7章 プライバシー保護とアイデンティティー管理
第8章 個人情報の取り扱いにおける「告知」と「同意」
第9章 信頼、ブランド、そしてトラストフレームワーク
おわりに デジタル存在の7つの原則

紹介する書籍

デジタルアイデンティティー 経営者が知らないサイバービジネスの核心

崎村夏彦(著)
255ページ、日経BP(2021/7/20)
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