皆さま、おはようございます。本シェルジュの赤塚です。

最近空を見上げると、高く澄み渡ってきているように感じます。
まだまだ暑いとはいえ、秋の訪れはもう間もなくですね。

さて、今回ご紹介するのは、プロジェクトマネジメントに関する本です。

仕事には、ルーチン型の定常業務と、繰り返し性の少ないプロジェクト型の業務があります。
「工程表をきちんと作成したのに、課題管理を行っているのに、いつもスケジュールが遅れる。」
「やるべきことが多すぎて、マルチタスクにならざるを得ない。」
「うちの会社は他社とは違う事情があるから、一般的なプロジェクトマネジメント手法ではダメなんだ。」
・・・プロジェクト業務に携わる人から、そんな声を聞いたことはありませんか?

それに応えてくれるのが本書。
『ザ・ゴール』の著者エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した、
全体最適のマネジメントサイエンスであるTOC(制約理論)。
本書では、そのTOCの1つである「クリティカルチェーンプロジェクトマネジメント(CCPM)」に基づいた、
プロジェクトマネジメントに関する実践的な知識体系が紹介されています。
根底にあるのは「プロジェクトは人が行うもの」という考え方。
人間の心理を考慮しながら、どのように問題を拾い上げ、またやる気を引き出すか。
ゴールドラット博士の側近中の側近とよばれる著者が、そのノウハウを教えてくれます。

図解やコラムが随所に掲載されていて読みやすく、またその内容もわかりやすくておもしろい本です。

「きちんと管理しているハズなのに、プロジェクト型業務がうまく進まない・・・」
といった経験がある方は、ぜひ本書を手にとってみてください。
なにか、見落としていた観点に気づかされるかもしれません。

<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次

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〓 1)今日のオススメの一冊                   〓
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最短で達成する 全体最適のプロジェクトマネジメント
岸良 裕司 (著)
中経出版 (2011/2/24) 223ページ

今回の登場人物紹介
◆赤塚:本シェルジュ、会社ではPMOの業務を担当
◆K部長:赤塚が勤める会社の上司
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赤塚 :部長、最近部のプロジェクトがよくトラぶっているようなので、
    プロジェクトマネジメント方法を見直そうと思うんです。

K部長:うん。具体的には?

赤塚 :PMBOKをベースにして、プロジェクトの管理手法を改善します。
    要員やコスト、スケジュールの計画・管理でこういったフォーマットを使って、
    わたしのほうでチェックをしようかと思うんです。
    さらに・・・(以下細かいことを延々説明。)

K部長:・・・やりたいことはよくわかった。
    ただ、プロジェクトについて、タスクやコスト、体制などをキミが細かく管理するのもいいけど、
    1つ考えてみてくれ。
    実際にプロジェクトを動かすのは誰だ?

赤塚 :それは・・・それぞれのプロジェクトメンバーです。

K部長:そうだよな?どんなに周りの人間が細かく管理しようとしても、
    プロジェクトを動かす人たちが「やるぞ!」と思わなければ意味がないんだ。
    この本を読んで、そのあたりも考えてみてくれ。

赤塚 :なるほど・・・確かにプロジェクトを動かすのは人だ。
    そこを考慮しないと「管理のための管理」に陥ってしまう。よし、読んでみよう!

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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です              〓
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■P.34より
・私はサバをよむ人間である。
・私は与えられた期間と予算に合わせて仕事を調整する人間である。
・私はどうしても一夜漬けに頼ってしまう人間である。
・私は作業の遅れが心配でたまらないので、管理にせっせと精を出したくなる人間である。
・私は早く終わっても自分の損得を考えて報告せず、ていねいな仕上げをする人間である。
・私の仕事の環境は一つのタスクに集中することを許されない状況である。
ここまでで明らかになったことは、プロジェクトマネジメントの最大の課題は、
人の心に必ずあるであろう、これら人のサガの問題なのだ。

■P.75より
プロジェクトの目標をみんなですり合わせるために、とてもシンプルで、やさしく、
しかもパワフルな方法がある。それが、ODSCだ。OはObjectivesで目的、DはDeliverablesで成果物、
SCはSuccess Criteriaで成功基準、それぞれの略である。
(中略)「プロジェクトの大義名分を明らかにせよ」という言葉がよくいわれる。
「大義名分」を広辞苑で調べると、「行動の理由づけとなるはっきりした根拠」とある。
ODSCとはプロジェクトが行われる理由づけとなるはっきりした根拠、つまり大義名分を、
目的、成果物、成功基準として明確に示すものである。
そして、これを明確に示すことはプロジェクトの求心力を飛躍的に高めることになる。

■P.110より
タスクの表現について重要なコツがある。それはなるべくわかりやすい表現をすることだ。
プロジェクトの多くの悩みは、経営幹部、ほかの部署、お客様、協力業者などの外部の
助けを得られないことだ。逆にいうと、経営幹部、ほかの部署、お客様、協力業者などの
外部の助けを全面的に得られるようにすることは、プロジェクトの成功の確率を飛躍的に
高めることになる。
(中略)一般に、仕事ができる人はむずかしいことでも、わかりやすく説明できる。
わかりやすく説明することで、多くの人に支援を得て目覚ましい成果を出す。
だからこそ、わかりやすく表現する訓練をすることは人材育成にもつながるのだ。

■P.176より
「百里を行く者は九十を半ばとす」ということわざがあるが、そこには長年の経験に
支えられたすばらしい現場の知恵がある。岩波ことわざ辞典によると「物事を完遂する
には最後が肝心なので、気を緩めずに励めということ」と書かれているが、要するに
進捗率90%はイコール50%だと考え、これからが本番だと思って覚悟せよということ
なのかもしれない。これは経験的にプロジェクトの現場で語られている言葉、
「プロジェクトの90%が完了しても、それから期間が倍になることはザラ」ということと
一致している。

■P.200より
プロジェクトマネジメントは経営そのものであると考えることができる。
実際に、クリティカルチェーンを実施してみるとわかることだが、変わるのは「現場」
ではなくマネジメント、つまり「経営」のほうである。複数のプロジェクトの間で、
「全体最適の視点から」経営上の優先順位をつけ、それに合わせてリソースをマネジメント
していくというのは、まさに経営の仕事以外の何ものでもない。
(中略)もともとプロジェクトでもっとも重要なのは、ODSC(目的、成果物、成功基準)
に書いた目標の達成であり、また現実の環境と限られたリソースの中でどれを優先するか
という経営判断から始まる。そして、進捗中においても次々と起こる問題点や変化に対して、
会社として最大のアウトプットを達成するために優先順位とリソースを割り当てていくのは
経営者の仕事以外の何ものでもない。

■P.204より
プロジェクトは人が行なうものである。さらには同じものが二度とない。
チームワークのプロジェクト環境において、人と人との対話によるコミュニケーションの
重要性は計り知れない。突き詰めていえば、人と人が知恵を出し合い、議論することに
よってのみ、プロジェクトはより高い成果を出すことになるのである。

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〓 3)今日の気づき                       〓
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本書に書かれているとおり、プロジェクトを動かすのは人。
そして、プロジェクトは「管理するもの」ではなく「経営するもの」。

プロジェクトは、その目的や計画に対してメンバー全員が「やろう!」とコミットメントすることが必要で、
それは人と人とのコミュニケーションにより導き出される。
よく考えたら当たり前のことなのに、「管理の強化」にばかり意識をとられて
このことに目を向けていなかった、と気づかされた一冊。

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〓 4)本書の目次                        〓
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1 プロジェクトは人が行なうもの―人のサガ
2 マルチタスクをなくせ!―選択と集中
3 目標を共有せよ!―目標すり合わせ
4 成功へのシナリオをつくる!―段取り八分
5 工期短縮!―サバ取り
6 全体最適の先手管理!―ゆとりのマネジメント

最短で達成する 全体最適のプロジェクトマネジメント
岸良 裕司 (著)
中経出版 (2011/2/24) 223ページ