こんにちは、本シェルジュの大橋功です。

夏本番。蒸し暑い毎日が続くと、ついつい冷房をつけることが多くなりますね。そんな時に「エアコンの使い過ぎはCO2排出につながるな。SDGsのことも考えたほうが良いかな。」などと多少後ろめたさも感じつつ、「でも我慢するのも体に悪いから」とスイッチを入れる。そんな経験はないでしょうか? 今回は「SDGs(=持続可能な開発目標)」をテーマにした、一風変わった本をご紹介しようと思います。

SDGsとは、人類が長く地球に住み続けられるように、環境・社会・経済に関して2030年までに達成することを国連が提唱している、17の目標です。日本でもカーボン・ニュートラルや、サステイナブルな社会などの用語がメディアで取り上げられ、社会的に善いこととしてSDGsの認知度が高まりました。しかしその反面、様々なルールに従ったり無理に欲求を抑えることに対して、「SDGs疲れ」や「もやもや感」を感じる人も増えているといわれます。

本書は、SDGsにはキレイごとや理想論の面があると認めた上で、その存在意義を科学者の観点から分かりやすく解説しています。気楽に読めて、普通のSDGsの本とは一味違う内容のユニークさがおすすめです。

1)本日紹介する書籍

「カオスなSDGs ~グルっと回せばうんこ色」
 集英社新書(2023/4/22)200ページ
 酒井敏(著)

2)どんな人が読むべき?

  • SDGsに対してこんな見方もある、という側面を知りたい人
  • SDGsの本質的な取組意義を考えてみたい人

3)付箋 

『SDGsが目指す環境、経済、社会という三つの分野での持続可能性をどれも完璧に高めようとすれば、必ずどこかで優先順位をめぐるケンカが起こるでしょう。どの分野でも、完全に筋を通すことなどできません。どこかで「キレイゴト」を引っ込めて、「大人の事情」に基づく調整が必要になる。SDGsとはそういうものだからこそ、完璧をめざさずに「ぼちぼち」とやっていくしかないのです。』(P.45~46

『生態系という秩序は、生物や環境条件がごちゃごちゃと複雑に組み合わさることで、結果的に全体として辻褄が合うようになっています。・・・・(このような)スケールフリーネットワークには、私たち人間には許容しかねる特徴がある。それは、自己組織化の過程で必然的に「格差」を生み出してしまうことです。』(P.140~144

『スケールフリーな世界に生きている私たちにとって、SDGsがどんな意味を持つかということも見えてくるのではないでしょうか。・・・・みんなが好き勝手にバラバラな生き方をしていると、システム全体は長期的には持続するものの、短期的にみれば、どうしてもそこから「取り残される人々」が出てきてしまいます。その不平等な格差を少しでも和らげるようなセーフティネットを設けたい。SDGsはそのためのリミッターのようなものだと思えばいいでしょう。』(P.147~148

『これまで日本では、多くの人々がSDGsを環境問題への取組みとして認識してきました。しかしそうやってみんなが同じ方向へ進むこと自体が、実はサステイナブルではありません。・・・・レールから外れることの恐怖を感じさせるほど若い世代を追い込んでいる日本の社会は、自分たちの持続可能性をどんどん低下させているといえるのではないでしょうか。・・・・少子高齢化が進むばかりの日本社会で、未来を担う若い世代の自由度を奪うのは、ほとんど自殺行為みたいなものです。SDGsの精神に賛同し、社会の持続可能性を高めたいというのなら、真っ先に考えるべきはそこ。それがいま求められている大人のフンベツというものなのです。』P.185~188

『地球環境に「こうあらねばならぬ」という正解はありません。その時々で「うんこ」をためたり、それを再循環させたりしながら、生物にとっての現在のニーズを満たすように辻褄があっていくのが、地球環境というものです。』(P.199

4)今日の気づき

SDGsの重要性は理解しつつも、国や地域がおかれた環境を度外視し、一つのやり方を「正しい」ものとして押し付ける進め方にはやはり違和感を覚えます。例えば自動車の分野で、ハイブリッド車に対して欧州がEV車を推奨する動きですね。環境への負荷が問題になるなら、なぜ冷静にCO2排出量や燃費などを比較した議論ができないのかな、と感じてしまいます。その意味で、ローカルの事情に応じたやり方で「ボチボチ」進めていけば帳尻があう、という著者の主張には共感できるところがあります。

SDGsの取り組み方は人ぞれぞれ。方向性さえ間違っていなければ、多様性をみとめて、「いかにみんなで幸せになれるか」を考えていきたいですね。

5)本書の目次

プロローグ  「キレイ」なSDGs
第1章                 危ういSDGs
第2章                 プラゴミ問題で考える持続可能性
第3章                 地球温暖化とカオス理論
第4章                 無計画だからこそうまくいくスケールフリーな世界
第5章                 日本社会の自由度をいかに高めるか
終章                    うんこ色のSDGs