こんにちは。本シェルジュの安藤準です。

暑い夏。いかがお過ごしでしょうか?先日、私が家電量販店へ行ったときのこと。
大型テレビを見ていてとあるテレビに目が留まりました。

「大型”有機EL”テレビ」

65インチの大型でも漆黒でコントラストの効いた画面はまさに実物以上の綺麗さ。

「こりゃすごい!」

確かに4K液晶でも綺麗と思っていたのですが、その差を見ると、差は歴然。数年後にすべて有機ELになる未来が見えたのです。
そしてメーカーはLG電子。韓国メーカーです。
大型有機ELパネルはLG電子が量産化に成功し、先行している状況なのです。

さて、数ある日本メーカーはといえば、一部で有機ELをだしているものの、
となりのコーナーでまだまだ液晶の綺麗さを競っているのです。
(そもそもパネルはLG電子から納入しているとか)

そんな時、ふとこの本のことを思い出して背筋に寒気が走りました。
日本の電機メーカーは沈みつつあると。
今回ご紹介する本は日本の電機メーカーの現在に至る経緯を構造的問題やマクロの目線で容赦なく鋭く解説しています。

実は私自身も大手電機メーカー出身ですが、中にいると日々の業績に追われることはよく分かります。
日々、短期的な経営を余儀なくされているのです。

しかし、この本を読んだら目が覚めるような思いでした。
30年単位で考えれば、今の日本の電機メーカーの状況はなるべくしてなったといえます。
例えば、「電気代」「電話代」という事実上の莫大な税金が電力会社やNTTを通じて電機メーカーに投入されていた構造に気づいていたでしょうか。
そして、これが崩れるとどうなるか。

過去に固執していくつか時代のポイントを外すのは、まるで航空戦になった太平洋戦争で巨大戦艦を作ったように。
いかに世の中をマクロの視点で見据えて時には思いきった決断が重要なことが分かります。

この本を読んで私は改めて時代の流れを考えることが重要かを痛感しました。
「日本の技術力にまだ海外は追いつけない」
なんてセリフはただの「おごり」と「幻想」です。
すぐに抜かれるか、既に抜かれています。
現実に目を向けなければなりません。

10年後を見据えるためには常に時代の流れを考えていきたいものです。
暑い夏。少し寒い話ですが、日本の電機業界はどこへ向かうのか。
一緒にこの本を題材に未来を考えていきませんか?

 

1)本日紹介する書籍

「東芝解体 電機メーカーが消える日 」
講談社 (2017/5/17) 272ページ
大西 康之 (著)
AmazonURL:http://amzn.to/2w9OkD0

 

2)本書を選んだ理由 どんな人が読むべき?

すべてのビジネスパーソンが対象になります。
特にITや電機業界に関係のある人は必須といえます。
間違いなく読んでおいた方が良いでしょう。

また、経済の流れを俯瞰的に見ることを意識している人も、電機業界を題材に色々なことに気づかされます。

なお、kindle版と書籍の両方があり、どちらでも良いと思います。

 

3)付箋 ~本書からの内容抽出です

■序章より

「電機敗戦の年」。2017年は日本の歴史にそう刻まれることになるだろう。(略)
2016年世界ベスト5のうち、中国メーカーが2社、欧州が2社、米国が1社となり
日本企業は姿を消す。(略)
美的集団が東芝の白物家電事業を、ホンハイがシャープを、ハイアールが三洋電機の
白物家電を買収した。日本では日本の名門企業が次々とアジアの新興企業の手に
落ちているかのように報じられるが、実際に起きていることは「弱肉強食」の
一言で説明できる。

■1東芝より

だがそれは序章にすぎなかった。2年後の2017年2月(略)同社にとって唯一の
成長分野だった半導体事業の売却が決まった。
142年の歴史を持つ名門企業、総合電機大手の東芝はこの時点で「消滅」した。
それは東京電力、NTTに依存した日本の電機産業の「終わり」を意味する。

■2NECより

17年間で売上高半減というのは企業にとって「緩やかな死」を意味する。更に言えば、
売上高が半分になっても破綻しないところに、日本の電機業界の異常さがある。
それをこれから説明していこう。

■3シャープより

経産省は追い詰められたシャープが苦し紛れに先端技術を海外に流出させる事態を恐れた。
たとえばシャープは低消費電力のIGZOパネルを得意としているが、
その開発には科学技術振興機構(JST)も深くかかわっている。つまりIGZOの開発には国費が
注がれているのだ。

■4ソニーより

「インターネットは産業界に落ちた隕石だ」とみていた出井は、ネットへの対応を急いだ。
これも正解だ。それが今日のリカーリングビジネスに繋がっている。(略)
経営者として出井に問題があったとすれば、それは描いたプランを完遂できない
実行力の弱さだろう。

■5パナソニックより

困ったのがキャッチアップ型の松下電器だ。
モルモットがいないのでは、さすがの「マネ下電器」もマネのしようがない。
(略)
会長の意を受けた森下は谷井社長時代の路線をことごとく否定する。
MCAが提案してきた日本でのテーマパーク建設を却下しただけでなく(略)
シーグラムに売却してしまう。(略)
売却した後のMCAが社名変更し、日本に建設したテーマパークが、あの
「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)]である。

 

 

4)今日の気づき

私はこの本を読んでから、「日本企業」「世の中の流れ」というものを冷静に見るようになりました。
もちろん、私自身も日本企業が発展することは応援しているつもりですが、一方で、今までよりも現的に未来をイメージするようになりました。
例えば「日本企業の技術力は高い」という神話はそろそろ捨てなければなりません。
日本経済において「自動車」と「電機」は2つの巨大産業だったはずですが、この2つがなくなった時どうなるのか。

・テレビや家電がすべて外国メーカーになる日
・パソコンスマホはすべて中国・台湾製になる日
・大手電機メーカーが次々中国企業に買収される日
・自動車がアメリカの技術で自動運転・電気自動車になる日

いずれもすぐそこまで来ているかもしれません。
次の産業は果たしてあるのでしょうか。

時代を読んで新しい時代を創っていきたいものです。

 

5)本書の目次

序章 日本の電機が負け続ける「本当の理由」
電機メーカーを長年支え続けた”本業”の正体
1  東芝 「電力ファミリーの正妻」は解体へ
待ちうける”廃炉会社”への道
2  NEC「電電ファミリーの長兄」も墜落寸前
通信自由化時代30年を無策で過ごしたツケ
3  シャープ 台湾・ホンハイ傘下で再浮上
知られざる経済産業省との「暗闘」
4  ソニー 平井改革の正念場
脱エレクトロニクスでかすかに見えてきた光明
5  パナソニック 立ちすくむ巨人
「車載電池」「住宅」の次に目指すもの
6  日立製作所 エリート野武士集団の死角
「技術の日立」を過信し、消費者を軽んじた
7  三菱電機 実は構造改革の優等生?
「逃げながら」「歩み続ける」経営力
8  富士通 コンピューターの優も今は昔
進取の気性を失い、既得権にしがみつく
おわりに

「東芝解体 電機メーカーが消える日 」
講談社 (2017/5/17) 272ページ
大西 康之 (著)