こんにちは、本シェルジュの松林です。
早くも日本各地で猛暑が始まったこの6月。本シェルジュは、「アツイ」(熱い、暑い、厚い…)をテーマにお送りします。
その1回目として、自分が失敗にめげずに困難に立ち向かう「熱い心」を持ち続けるにはどうすればよいか、また自分の子どもたちがそうなるにはどうすればよいかと思い、手に取った本をご紹介します。

本書の著者はスタンフォード大の心理学教授で、社会心理学・発達心理学の世界的研究者とのことです。
著者は、難しいパズルに「なかなかとけない問題ってぼくだいすき!」と目を輝かせて取り組む子を見て、何にでも果敢に挑戦し、失敗にめげずに努力する子どもに育てるにはどうすればよいのかと思い、それを20年間研究してきました。
親や教師など、子どもを育てる立場の方はもちろんですが、職場での部下・後輩指導、さらには夫婦関係など日々の生活にも役立つ1冊です。

<目次>
1)今日のオススメの一冊
2)付箋
3)今日の気づき
4)本書の目次

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〓 1)今日のオススメの一冊                   〓
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「やればできる!」の研究ー能力を開花させるマインドセットの力
キャロル S.ドゥエック (著) 今西 康子 (訳)
草思社 (2008/10) 270ページ

今回の登場人物紹介
■松林:すぐ「ムリ」「できないからやってもしょうがない」という子どもに悩む父
■りか:淡泊な現代っ子のJS。
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松林:あれ、元気ないね。どうした?

りか:今度のピアノの課題曲が難しくて全然弾けないの。どうせ練習してもできないから、先生にもっと簡単なやつに変えてもらおうかな。

松林:すぐできるような曲だったら、弾けてもうれしくないと思うよ。先生は今のあなたの力を見たうえで、「すぐには弾けないけど、努力すれば弾ける曲」を選んでくれたんじゃない?

りか:それはそうかもしれないけど…でもムリだから。

松林:なぜそう思うのか、冷静に考えてみたら? 速すぎるなら最初はゆっくり弾けばいいし、長すぎるならいくつかに分ければいいし。

りか:あ、そうだね。やってみるよ。難しいほうが、できた時にやった!って思えるかもしれないし。

松林:そうそう。(やれやれ、もっと頭が柔らかくなるといいけど…)

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〓 2)付箋 ~本書からの内容抽出です              〓
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■第1章 マインドセットとは何か より(P16)
自分の能力は石版に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人-「こちこちマインドセット」-の人は、自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない。
教室でも、職場でも、人づきあいの場でも、自分の有能さを示すことばかりに心を奪われている人を私はこれまでおおぜい見てきた。(中略)

それとは違った心の持ちようもある。(中略)初めに配られた手札を元にして、これからどんどん手札を強くしていけばよいと考えてみたらどうだろう。それこそが、しなやかな心の持ち方、つまり「しなやかマインドセット」なのである。その根底にあるのは、人間の基本的資質は努力次第で伸ばすことができるという信念だ。

■第2章 マインドセットが違うとこんなに違う より(P82)
自分の置かれている立場をありのままに認めたうえで、自分の知的能力や人間的資質がそれで決まってしまうわけではないことを理解しよう。肝心なのは次の点だ。その体験から何を学んだか、あるいは学べるか? どうすればそれを成長に結びつけることができるか? そう考える習慣を身につけよう。

■第4章 人間関係のマインドセット より(P162)
あなたの描く理想のパートナーはどんな人だろう。相性がぴったりの人-考え方がまったく一緒で、妥協も努力もしなくていい相手-だろうか。(中略)マインドセットをしなやかにして考えてみると、問題が起きたときこそ、理解と親密さを深めあう絶好のチャンスなのだ。パートナーに自分の考えや不満を率直に言ってもらい、それにじっくりと耳を傾け、辛抱強く親身になって話し合おう。

■第5章 親と教師:マインドセットを養う より(P171)
子どもに「あら、ずいぶんはやくできたのね!」「まあ、ひとつも間違えなかったじゃない!」と言うと、どのようなメッセージが伝わるだろうか。親はスピードや完璧さを高く評価している、というメッセージである。(中略)こういうほめ方をすると、「すばやく完璧にできれば賢いと思われるのなら、難しいことには手を出すまい」と思うようになる。(中略)
私ならこう言う。「あら、簡単すぎたようね。時間をむだにさせちゃったわ。今度はもっと実になるものをやりましょう」

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〓 3)今日の気づき                       〓
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最近は「ほめて伸ばす」がブームのようになっています。しかし、本書では具体例を挙げながら、単純に結果をほめるのではなく、よりハードルの高いことにチャレンジし続けるマインドを養うための働きかけを勧めています。
また、失敗した時は慰めるのではなく、努力を認めつつ、成功するためにはもっと努力することが必要だとわからせるよう勧めています。

人は完全に「こちこちマインドセット」と「しなやかマインドセット」のどちらかになるわけではなく、両者の間を行ったり来たりするのかもしれません。
自分の中には両方の要素があり、「こちこち」の方に傾いてしまった時に、そのことを教えてくれる人にいてもらい、自分をうまくコントロールしていきたいものです。
そして、子どもや部下などに対しても、「しなやか」の方へ導いていけるよう、働きかけていこうと思います。

なお、本書は原著(英語版)よりもコンパクトに編集し直されており、
原著では下記のようになっています。
第4章 “SPORTS: THE MINDSET OF A CHAMPIN”
第5章 “BUSINESS: MINDSET AND LEADERSHIP”

特に、組織はどうすれば成長するか、そのためにリーダーとしてどうあるべきかを知りたい方には、原著をお勧めします(さほど難解な文章ではありませんでした)。

Amazon URL(kindle版) http://www.amazon.co.jp/dp/B005RZB65Q

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〓 4)本書の目次                        〓
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第1章 マインドセットとは何か
第2章 マインドセットが違うとこんなに違う
第3章 能力と実績のウソホント
第4章 人間関係のマインドセット
第5章 親と教師-マインドセットを培う
第6章 マインドセットをしなやかにしよう

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「やればできる!」の研究ー能力を開花させるマインドセットの力
キャロル S.ドゥエック (著) 今西 康子 (訳)
草思社 (2008/10) 270ページ